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第二章

68 虐めは計画的に・・

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( リーフ )



悶々と今後について考えているうちにあっという間に食堂に到着。

な、なんと!レオンは最後まで一度も止まるどころか、平然とした様子のまま俺をおぶってここまでの道のりを超えてしまったのだった。


ただわずかに耳が赤いところを見れば多少の無理はしていそうだが、それでも8歳の子供がするには十分過ぎる重労働。


「 ??う、うむ・・レオンご苦労だったね・・?


・・えっと、ここが食堂だから一回おろしてくれるかい? 」


するとレオンは俺の足を持つ手に一瞬ぎゅっと力を入れた後、恐る恐る俺をおろしてくれた。

その顔は、この屈辱的行為による悲しみで満ち溢れている様に見える。



そりゃー悲しいに決まっている。


こんな朝早くからカユジ虫をくっつけるぞと脅され強制マラソン

更には恥ずかしがり屋のイザベルに剣を突きつけられて怖い思いまで・・


それからやっと解放されたかと思えば "   人  "  としての尊厳を折る ” 馬 ” にされ、こ~んな遠いところまで重たい俺を乗せて歩かされたりとまさに踏んだり蹴ったり。


憧れの英雄様に、子供に対してこの仕打ち・・


痛む頭を労わるように目元をモミこんだが、この後もがっつり虐めようと考えているので痛みは和らぐことなく更に増す。


しかし辞めるわけには絶対にいかないので、ここはグッと堪えて次の虐めに取り掛かる。


「 さぁさぁ!これから楽しい楽しい残飯の時間だよ~。 」


炎上待ったなし、そんな酷い暴言を吐きながら俺は食堂のドアをババーンと開けた。


そして目に入るのは、涼しい顔で部屋の中に佇むカルパスと、その後ろに隠れガタガタ震えているジェーン、

そしてテーブルの上にズラリと並ぶ二人分の豪華な食事の数々。


昨日に引き続き凄く美味しそうなアントンの料理に、うわぁ~と目を輝かせ思わず駆け寄りそうになったが慌てて、違う違う!と首を横に振って思いとどまった。

 
食事の前に1虐め!


実はこの部屋の中に、昨日俺が考えたちょっとした虐めポイントが存在していて、それが俺の座る席の近くに設置されている。


俺の視線はこれから座る予定の席の方へと移り、ちゃんとそれがそこにある事を確認すると思わずニンマリと笑みを浮かべた。


俺の座る予定の椅子ーー

この部屋のゴージャスな内装に相応しい、椅子の存在定義を思わず見失うほどの派手派手しいご立派なお椅子なのだが、

その隣に置かれたレオン用の椅子はその正反対と言えるボロボロの破棄予定であった木の椅子である。


ーーと言っても?前世の俺なら・・

 "  捨てるなんて勿体な~い、俺使っていい?  "   

と聞いちゃう程度の汚れしか無いのだが、明らかにお高いキラキラの椅子の横に置かれては、レオンは嫌な思いをする筈。



ズバリ、虐めの定番!〈 格差を見せつける 〉


これも漫画で見た知識!



ある少女漫画にて、貧乏な主人公の女の子がやっとの思いで買ったドレス。

それをお金持ちの女の子達が馬鹿にするシーン。


その詳しい虐め内容としては、お金持ちの女の子達が物凄いお高いキラキラドレスを身に纏い、それより遥かに安いドレスを来た主人公に対し・・

「 あら~、貴方にはお似合いのドレスね」

などと嫌味を言うもので、主人公はそれに打ちのめされ泣きながらその場を去るーーというものだ。


正直男の俺には、この虐め内容は全く心に突き刺さらない。


ドレスよりもおっぱいの方が重要。

高いドレスだろうが安いドレスだろうがいかに乳がむっちりしてるか、ようは人間は中身、もとい肉体が主役!ドレスはモブ!

どうせなら乳比べで戦うべきだよ、うん。


・・とまあ、ちょっとセクハラ発言になってしまったが、要は虐められ方も刺さるものはそれぞれってこと。


それが分からない内は手探りでレオンに最も効果的な虐め方法を探す他ない!


その試行錯誤の内の一つが、コレ。


椅子で格差をつけてみようと、それを実行してみたのだ。


勿論ちゃんと座る部分は念入りに拭いた。


しかしうっかり側面を触れば手に汚れが付くという格下椅子にレオンはどんな反応を示すのか・・


ここはそれを観察しながら嫌味でトドメを刺す!


俺はササっと先に俺が座る予定のキラキラ椅子へと移動し大袈裟に驚いた振りをした。



「 おや?おやや~??

これはなんと素晴らしい椅子なんだろう!

キラキラで、横には沢山の宝石まで付いているよ~?


まさに俺のためにある様な椅子だ!

そうは思わないかい?  」



レオンにそう問いただせば、レオンは真剣な顔でコクリと頷く。


俺は次に隣にある木の椅子を、たった今気づいたと言わんばかりの驚きの表情で見ながら続けて言った。



「 あれ?あれれ~?

この薄汚れた木の塊は一体何かな~?

こんな汚れた塊に相応しいのは一体誰かな~?


んん~???   」



そして手をおでこに付け、さも何か探して居ますというジェスチャーをするとカルパスは目をスッとつぶり、ジェーンは手に持っていた丸いお盆で顔を隠す。



主人が下僕を虐める醜悪な姿、きっと親の様に育ててくれた彼らにとってそれはとても悲しい姿に違いない。


こんな姿を見せてごめん。

でもコレは絶対に必要な事なんだ。


レオンはそんな俺の姿をやはりジーッと見つめている為、一応この虐めに興味は惹かれている様子。


ニマッと笑い俺は最後の仕上げにかかる。


俺はレオンの左手をギュッと握りビクッ!!!と震えた彼に構わずそのままポイっと木の椅子の上に座らせると、

思考が停止したように呆けているレオンに俺はビシッと指を差し、偉そうな物言いで言った。



「 これに似合う人み~つけた!

今日からコレはレオン専用椅子にし~よおっと!

君は毎日この貧相な椅子に座って俺の残飯を食べるんだ。


分かったかな? 」



「 ・・俺の・・・毎日・・・」



レオンは下を向きフルフルと震えながら俺の言葉に必死にコクコクと何度も頷き、そしてどうやら涙も出てしまったらしくグイグイと目元を乱暴に拭いている姿を見せてくる。


子供のそんな姿をみてしまったおじさんの罪悪感はMAX。



お胸痛い・・

もう、ごめーん!!って泣きながら飛びつきたい。


痛むお胸を押さえつけやたらゴテゴテしている椅子にそろりと座ると、痛みを振り払う様に「 いただきまーす!!」と大声で叫び、むしゃむしゃとご飯を食べ始めた。


そして、一口齧っては残飯と称して隣のレオンに食べさせ、自分が食べて、レオンに食べさせて・・


そうして交互にご飯を食べ進めていくと、レオンはそのガリガリな見た目からは想像もできない様な食べっぷりで朝ごはんを平らげていったのだった。


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