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第二章

56 リーフと料理人アントン

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( リーフ )

ラジオ体操第一ぃ~!

チャンチャララララン♬


そんな独創的な音楽と共に、俺は前世での日課であったラジオ体操を元気よく踊り出す。



現在時刻は朝日が昇る前。

若かりし頃は、とにかく一分一秒でも多く睡眠を貪りたかったが、歳を取るごとにそれは短くなっていき────50歳になる頃には日の出と共にばっちり目が覚めその後はもう眠れない。


そしてその習慣は、現在の8歳の体にも染み付いていて、鶏さんが起きるよりも早くに俺の目はばっちりと開いてしまった。

なぜ歳をとると無駄に早起きになってしまうのか……。

本当に不思議~と一人心の中で苦笑いしながら、ラジオ体操に続いて軽い走り込みと筋肉トレーニングもついでに終わらせた俺は目的の場所へと向かった。


5時を少し超えたくらいの時間、俺が向かったのは調理場。

そこに着いて早々、中をヒョイっと覗くと、朝早いにも関わらず料理人の< アントン >が沢山の食材を並べ、ウンウンとその食材の状態を確認しているところであった。


< アントン >は我がリーフ邸の食事を、全て一人で担当してくれている凄腕の料理人さんだ。


一般的に多く見られる俺同様の茶色の短髪の髪に緑の瞳────と一般的な外見の……と続きそうな特徴だが、それが当てはまらないほど料理人としては規格外と言える立派な体格をしている。

二メートルくらいありそうな高身長としっかりとした筋肉。

それが結構な威圧感を漂わせるが顔はとても優しげで、俺のイメージ的には "  森のクマさん "  を思い出してしまうような人物である。


年齢はカルパスより少し下くらいでまだまだお兄さんで問題ないお年頃。

内面的な性格は、食べる人の事をよく考えて作られたお料理の数々からもその誠実さと真面目さが伺える。


そんな彼が一生懸命に作ってくれたご飯を、今まで泣き喚いてハンストしていたのはなんと俺だ。


これはキチンと謝りたいと思ったのと、もう一つ、アントンにちょっとした頼み事をしたいと考えていたため、真っ先にここへ足を運んだのだった。


今なら話しかけて大丈夫だろうと判断した俺は、ドアの方から、「 アントン!おはよう! 」と大声で声をかける。

するとアントンは驚いた様子でこちらに視線を向けると、直ぐにこちらに駆け寄ってきてくれて、その後はしゃがみ込んで俺と視線を合わせてきた。


「 おはようございます。リーフ坊ちゃん。

こんな朝早くからどうしたんですかい? 」


そう言って俺の目を覗き込んできたアントンに俺は深々と頭を下げる。


「 アントン、今までせっかく作ってくれた料理を食べないでごめん! 」


「 ────へっ?? 」


そしてそのまま、昨日食べた料理が美味しかった事、それに対しての感謝の言葉を伝えると、アントンは照れくさそうにポリポリと頭を掻いた。


「 いいって事でさぁ。朝ご飯も期待しててくだせぇ。 」


アントンはご機嫌で笑いながら作業に戻ろうとしたので、俺はムッキムキの足に縋りつき「 実は…… 」と、もう一つのお願い事を言う。


「 あのね、今日から俺のご飯を可能なら2人前用意して欲しいんだけど……やっぱり大変かな? 」


レオンに食べさせるご飯、「 残飯 」はそれなりに量がなければ実行できない。

そのため最初から一人では食べきれない量を用意しておく必要があると考えた俺は、料理を担当するアントンにそれを頼みにきたのだ。


しかしそれで仕事の多大な負担になってしまうなら申しわけないので、あくまで軽~い感じで頼んでみたのだが、果たしてアントンは……?

どうかなどうかな~?と考えながら、チラ~っとアントンの様子を伺うと戸惑うような雰囲気が漂ってきたので、やっぱり俺が作るかと決心を固めた。


俺の料理は基本は全てザ・男飯ではあるが、これでも一人暮らし歴は長く、毎日自炊してたので作ることに負担は全くない。


だからその際はとっても美味しいアントンの料理をレオンに食べさせてあげて、俺は変わり映えしない男飯を食べようと考えていたのだが、アントンは顎に手を当て考え込む様な仕草を見せながら俺に質問を投げかけてきた。


「 え~と……??2人前ですかい?

もしかして食事の量が少な過ぎましたかね? 」


「 いやいや、違うんだよ。

ちょっと今日から俺の下僕にね、残飯を食べさせる計画があるんだ。

健康状態によっては今後増えていく可能性もある。 」



「 ???( 下僕?残飯??何かの遊びか??)

よく分かりやせんが、一人どころか100人くらいに増えたってへっちゃらでさぁ。

食事に関してはこのアントンにお任せくだせぇ。 」


不思議そうな顔をしながらも快く引き受けてくれたアントンに、俺はありがとう!とお礼を告げ、更にもう一つの目的を遂げるため、タタっと庭の方へと走って行った。

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