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第一章

36  教育機関とリーフ

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( リーフ )

俺の私用でお仕事の邪魔をするのは忍びないため大きくうなずくと、カルパスはササッと俺の着替えを手伝い始める。


介護を連想させるその行為に少々恥ずかしさを感じたが、今は服の場所すら分からない為、グッと我慢しながら様々な質問をする。


まず、俺< リーフ・フォン・メルンブルク >は現在8才。

来月からこの街 <レガーノ>にある小学院に通う予定なのだそうだ。


ちなみにこの世界、前世の地球とは違い自分の生まれた日イコール誕生日ではなく、1月1日のイシュルの日が全員共通のお誕生日となっているため、全世界の人たちは一斉に歳を取る。

そしてその時8歳を迎えた子どもは、どんなに貧しくとも、それから3ヶ月後の4月から【 小学院 】と呼ばれる教育機関に通わなければならないのだ。

いわゆる義務教育というやつ。

これはイシュル教の ” 子供は神の遣いである ” という教えから決められている事で、その大事な子供たちに平等に教育する機会を与えてあげる事を目的としているらしい。


良き良き~。

ピンッ!と跳ねた寝癖を丁寧にクシで梳かされウットリとしながら、子供に優しい法律がある事を喜んだ。


そんな義務教育の期間は4年間。

4月に次の学年に上がるため卒業するときには12才を迎えているのだが、この12才から扱いは ” 子ども ” から ” 準成人 ” と呼ばれるものに変化する。


その ” 準成人 ” になった子供たち、つまり小学院の卒業後からは "  神の遣い "  ではなくなり、そのかわり  "    人    "  としての様々な権利を取得する事になるのだが……

その最たるものが ” 働くこと ” !


貧しい家庭の子や受け継ぐ家業などがある子達は卒業後から、すぐに社会人として働き始めるのだ。

これがなんと全生徒の8割を占めるのだから、恐れ入る。


この世界の子供たちはすごく逞しいなぁ……


前世でイタズラしては先生にゲンコツされていた子供時代の思い出しかない俺としては、ひたすら尊敬!

ジ~ン……と感動している俺を不思議そうに見つめながらも、カルパスはパッ!パッ!と服についている埃を毛ブラシの様なモノで丁寧に払ってくれる。


おっと!

これでは怪しまれてしまうぞ!


慌てて表情を引き締め、偉そうに見せるために胸を張った。


そんな逞し~い新社会人になった八割の ” 準成人 ” 達。

ではそれ以外、残りの2割はどうするかというと【 中学院 】と呼ばれる教育機関へ進学することになる。


貴族であればこの中学院までは出るのが一般的とされているため、小学院に比べ中学院は貴族の生徒の割合がぐんっと増えるが、成績優秀者には沢山の補助的な法律もあるため平民との差はまだ平民の方が多い。

ちなみに平民の身分でこの中学院に通う子供は、家が裕福である子か試験結果で優秀な成績を収めた特待生のみだが、ここを卒業できればかなり良い仕事につくことが出来るため、平民の中では多少無理してでも通わせる親も結構いるそうだ。


そしてその中から身分と実力の両方を兼ね備えた、いわば生まれながらのエリートである王族もしくは貴族のみが入れる【 高学院 】!


これが進学としては最終学歴となる。


ここは絶対的な身分至上主義を掲げた、まさにアルバード王国を象徴しているかのような教育機関であり、そこで3年間過ごすことで、卒業後は官僚や騎士団の上層部などエリート街道まっしぐらの輝かしい未来が待っている。


その名も────《 セントレイス高学院 》


そここそが、俺ことリーフが英雄レオンハルトにボコボコにされ失脚する大舞台だ!


俺はリーフとの勝負にすらならなかった決闘を思い出し、ブルブルと感動に打ち震えた。


つまりリーフになってしまった俺は、この小学院から高学院までの教育機関を物語の筋書き通りに進学していかねばならない。


そんな進学の第一歩となる手前で運良く記憶が蘇り大ラッキー!


ルンルンとご機嫌で鼻歌を歌いながら、更にカルパスから色々な話を聞くと、現在この屋敷は、この専属執事の< カルパス >を筆頭に────


先程の侍女さんの< ジェーン >


専属護衛、兼屋敷の守衛も務めてくれている< イザベル >


料理人の< アントン >


庭師の< グラン >


────の5人が働いてくれているそうだ。



この下手をしたら前世で働いていた孤児院< りんごの家 >が、10個くらいはゆうに入りそうな広いお屋敷に5人だけ。

とりあえず広すぎて絶対お掃除がすごく大変だろうから、出来るだけ汚さず家を使わせて頂こうと決意した。


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