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第一章
35 専属執事登場
しおりを挟む( リーフ )
さっきのメイドさんかな?
そう思い「 はーい! 」と返事をすると、扉はゆっくりと開いていき外から執事の様な格好をした男性が中へ入ってきた。
歳は30代後半か40代前半くらいだろうか?
スラッとした体格に淡い栗色の髪。
顔はとても精悍な顔立ちをしていて、キリッとした眼差しに全体的にできる男オーラがプンプン漂うが、雰囲気は柔らかい。
前髪はしっかり後ろに撫で付けられていて、それがまた爽やかさが増し増しの……ちょっとそのへんでは見られないレベルの男前さんだ。
「 おはようございます、リーフ様。
先程、侍女のジェーンから話を伺いましたが、もしや体調が優れないのでしょうか?
そうでしたら本日のご予定はキャンセルいたしますが……。 」
気遣う様な言葉にニッコリ笑いながらも俺は内心焦っていた。
ど、どうしよう……
先程のメイド服の女性といい、この目の前の男性といい、恐らくこの2人、物語に登場していない人物たちだ。
オロオロしながら、本来リーフ邸で働くはずだった従業者達について思い出す。
確かリーフのお世話を任されていたのは、見た目がゴージャスでとにかく見た目麗しい女性の侍女さん達。
その全員がリーフを始めとするメ゙ルンブルク家の美の価値観に合致した女性達で、なんと厳正なる顔面審査に合格した選ばれしエリート美女達なのだ。
そんな彼女達はリーフの美しい顔と悪のカリスマにメロメロ!
そうしてリーフは男性共通の夢のようなハーレムを築き上げていたわけだが、その中に素朴で可愛らしいタイプの先程の女性や目の前のイケメン男性はいなかったはず。
多分俺の外見によって最初から物語にズレが生じてしまい、それに合わせて大幅な登場人物の変更があったに違いない。
つまり……俺の予備知識はこの時点で全く使えないということ!
頭を両手で挟み込み、あぅ~……と唸りながらリーフに生まれてからの記憶を探すも、頭に霧がかかっているように全く何も思い出せない。
まさに絶体絶命の状況!
前世では歳とともに頻繁に物忘れをしては、よく怒られてはいたが歳のせいにして誤魔化せた。
しかしこんな子供の姿では、その言い訳は使うことができない!
さあ!どうする?!
今までの人生の総知識をフル活動した俺は、つの名案を思いついた。
「 ふっふっふ~!体調は至って問題ないよ。
心配してくれてありがとう。
そこで君に1つ確認したいんだけど、俺はこの屋敷の当主の息子のリーフ……つまりは君の上司といえる立場である。
それに間違いはないかな~? 」
「 ……はい、そのとおりでございます。 」
ドキドキしながらそう質問するとその男性は一瞬黙った後、しっかりYESと答えてくれたので俺は満足げに頷く。
「 ────うむっ!では君の上司たる俺には、君がどれほど俺について知っているのか……
そしてどんな質問であろうがそれに答える忠誠心があるのかどうか……それを確かめる義務がある。
そうだね? 」
「 …………はい。 」
恐らく急に何を言い出すんだ?こいつは……と呆れているはずだが、流石はできるオーラがビンビンのお兄さんだ。
それをおくびにも出さない!
「 うむ!良き良き。ではまず手馴染めに君に一つ質問だ。
君のお名前は何かな~?
さぁ、自己紹介をしてごらん。 」
できるだけ怖がらせない様にニッコニッコと笑顔のまま、両手をクイクイとその男性に向かって動かした。
これは社会人になりたての新人さんが受ける洗礼の一つ。
職場の上司があえてわかりきったことを聞き、新人さんがそれをどれほど知っているかで、やる気と実力を測る、いわゆる抜き打ちテストみたいなモノだ。
これなら多少へんてこな質問をしても上手く誤魔化せる。
はい、俺は全て知っている上で聞いてますからね~?
知らないわけじゃないからね?
胡散臭い笑みを浮かべた俺を見て、執事らしき男性はスッと目を閉じ、一瞬何かを考えた後、すぐに目を開けて俺に視線を向けた。
「 かしこまりました。
私はリーフ様の専属執事────〈 カルパス 〉と申します。
体調に問題はないとのことですので、お支度をしながらお答えしてもよろしいですか? 」
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