上 下
50 / 1,315
第一章

35  専属執事登場

しおりを挟む

( リーフ )

さっきのメイドさんかな?

そう思い「 はーい! 」と返事をすると、扉はゆっくりと開いていき外から執事の様な格好をした男性が中へ入ってきた。


歳は30代後半か40代前半くらいだろうか?

スラッとした体格に淡い栗色の髪。

顔はとても精悍な顔立ちをしていて、キリッとした眼差しに全体的にできる男オーラがプンプン漂うが、雰囲気は柔らかい。

前髪はしっかり後ろに撫で付けられていて、それがまた爽やかさが増し増しの……ちょっとそのへんでは見られないレベルの男前さんだ。


「 おはようございます、リーフ様。

先程、侍女のジェーンから話を伺いましたが、もしや体調が優れないのでしょうか?


そうでしたら本日のご予定はキャンセルいたしますが……。 」


気遣う様な言葉にニッコリ笑いながらも俺は内心焦っていた。


ど、どうしよう……

先程のメイド服の女性といい、この目の前の男性といい、恐らくこの2人、物語に登場していない人物たちだ。


オロオロしながら、本来リーフ邸で働くはずだった従業者達について思い出す。


確かリーフのお世話を任されていたのは、見た目がゴージャスでとにかく見た目麗しい女性の侍女さん達。

その全員がリーフを始めとするメ゙ルンブルク家の美の価値観に合致した女性達で、なんと厳正なる顔面審査に合格した選ばれしエリート美女達なのだ。

そんな彼女達はリーフの美しい顔と悪のカリスマにメロメロ!

そうしてリーフは男性共通の夢のようなハーレムを築き上げていたわけだが、その中に素朴で可愛らしいタイプの先程の女性や目の前のイケメン男性はいなかったはず。


多分俺の外見によって最初から物語にズレが生じてしまい、それに合わせて大幅な登場人物の変更があったに違いない。


つまり……俺の予備知識はこの時点で全く使えないということ!


頭を両手で挟み込み、あぅ~……と唸りながらリーフに生まれてからの記憶を探すも、頭に霧がかかっているように全く何も思い出せない。


まさに絶体絶命の状況!


前世では歳とともに頻繁に物忘れをしては、よく怒られてはいたが歳のせいにして誤魔化せた。

しかしこんな子供の姿では、その言い訳は使うことができない!


さあ!どうする?!


今までの人生の総知識をフル活動した俺は、つの名案を思いついた。


「 ふっふっふ~!体調は至って問題ないよ。

心配してくれてありがとう。


そこで君に1つ確認したいんだけど、俺はこの屋敷の当主の息子のリーフ……つまりは君の上司といえる立場である。


それに間違いはないかな~?  」


「 ……はい、そのとおりでございます。 」


ドキドキしながらそう質問するとその男性は一瞬黙った後、しっかりYESと答えてくれたので俺は満足げに頷く。


「 ────うむっ!では君の上司たる俺には、君がどれほど俺について知っているのか……

そしてどんな質問であろうがそれに答える忠誠心があるのかどうか……それを確かめる義務がある。


そうだね? 」


「 …………はい。 」


恐らく急に何を言い出すんだ?こいつは……と呆れているはずだが、流石はできるオーラがビンビンのお兄さんだ。

それをおくびにも出さない!


「 うむ!良き良き。ではまず手馴染めに君に一つ質問だ。


君のお名前は何かな~?


さぁ、自己紹介をしてごらん。 」


できるだけ怖がらせない様にニッコニッコと笑顔のまま、両手をクイクイとその男性に向かって動かした。


これは社会人になりたての新人さんが受ける洗礼の一つ。

職場の上司があえてわかりきったことを聞き、新人さんがそれをどれほど知っているかで、やる気と実力を測る、いわゆる抜き打ちテストみたいなモノだ。


これなら多少へんてこな質問をしても上手く誤魔化せる。


はい、俺は全て知っている上で聞いてますからね~?

知らないわけじゃないからね?


胡散臭い笑みを浮かべた俺を見て、執事らしき男性はスッと目を閉じ、一瞬何かを考えた後、すぐに目を開けて俺に視線を向けた。


「 かしこまりました。


私はリーフ様の専属執事────〈 カルパス 〉と申します。


体調に問題はないとのことですので、お支度をしながらお答えしてもよろしいですか? 」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

その男、有能につき……

大和撫子
BL
 俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか? 「君、どうかしたのかい?」  その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。  黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。  彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。  だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。  大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?  更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」 学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。

悪役令息に誘拐されるなんて聞いてない!

晴森 詩悠
BL
ハヴィことハヴィエスは若くして第二騎士団の副団長をしていた。 今日はこの国王太子と幼馴染である親友の婚約式。 従兄弟のオルトと共に警備をしていたが、どうやら婚約式での会場の様子がおかしい。 不穏な空気を感じつつ会場に入ると、そこにはアンセルが無理やり床に押し付けられていたーー。 物語は完結済みで、毎日10時更新で最後まで読めます。(全29話+閉話) (1話が大体3000字↑あります。なるべく2000文字で抑えたい所ではありますが、あんこたっぷりのあんぱんみたいな感じなので、短い章が好きな人には先に謝っておきます、ゴメンネ。) ここでは初投稿になりますので、気になったり苦手な部分がありましたら速やかにソッ閉じの方向で!(土下座 性的描写はありませんが、嗜好描写があります。その時は▷がついてそうな感じです。 好き勝手描きたいので、作品の内容の苦情や批判は受け付けておりませんので、ご了承下されば幸いです。

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

無愛想な彼に可愛い婚約者ができたようなので潔く身を引いたら逆に執着されるようになりました

かるぼん
BL
もうまさにタイトル通りな内容です。 ↓↓↓ 無愛想な彼。 でもそれは、ほんとは主人公のことが好きすぎるあまり手も出せない顔も見れないという不器用なやつ、というよくあるやつです。 それで誤解されてしまい、別れを告げられたら本性現し執着まっしぐら。 「私から離れるなんて許さないよ」 見切り発車で書いたものなので、いろいろ細かい設定すっ飛ばしてます。 需要あるのかこれ、と思いつつ、とりあえず書いたところまでは投稿供養しておきます。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生するにしても、これは無いだろ! ~死ぬ間際に読んでいた小説の悪役に転生しましたが、自分を殺すはずの最強主人公が逃がしてくれません~

槿 資紀
BL
駅のホームでネット小説を読んでいたところ、不慮の事故で電車に撥ねられ、死んでしまった平凡な男子高校生。しかし、二度と目覚めるはずのなかった彼は、死ぬ直前まで読んでいた小説に登場する悪役として再び目覚める。このままでは、自分のことを憎む最強主人公に殺されてしまうため、何とか逃げ出そうとするのだが、当の最強主人公の態度は、小説とはどこか違って――――。 最強スパダリ主人公×薄幸悪役転生者 R‐18展開は今のところ予定しておりません。ご了承ください。

白紙にする約束だった婚約を破棄されました

あお
恋愛
幼い頃に王族の婚約者となり、人生を捧げされていたアマーリエは、白紙にすると約束されていた婚約が、婚姻予定の半年前になっても白紙にならないことに焦りを覚えていた。 その矢先、学園の卒業パーティで婚約者である第一王子から婚約破棄を宣言される。 破棄だの解消だの白紙だのは後の話し合いでどうにでもなる。まずは婚約がなくなることが先だと婚約破棄を了承したら、王子の浮気相手を虐めた罪で捕まりそうになるところを華麗に躱すアマーリエ。 恩を仇で返した第一王子には、自分の立場をよおく分かって貰わないといけないわね。

処理中です...