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第一章

34  レーニャからの手紙

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( リーフ )

「 ¥%*=〒〆◎────!!!!?」

思わず声にならない叫び声をあげ、ササッとしゃがみ込んで一度水面から顔を遠ざけた。


────待って?

ちょっ、ちょっと待って??


なんか凄く見知った顔が見えた気がする!


俺はバグバクと激しく鼓動する心臓を抑え、もう一度ソロ~っと水面を覗く。

するとそこには金髪青眼の美少年が……




────やっぱり居なくて、先程見た通りの前世の俺と全く同じ外見をした顔がある!


それを更に2回繰り返し、最後は目をゴシゴシと擦って見直したが、何度見ようが全て同じ < 森田 大樹 >の顔が水面に映っていた。



「 なっ……?へっ??……ちょっ!!ちょっ────っ!!?!!

えっ?顔!おっ俺の顔!

すっごい見知った馴染みのある顔なんだけど!??


えぇ~……?どっ、どういうこと……?? 」


茶色の髪に平凡な顔立ち。

唯一の個性が鼻先のちょろっと存在するそばかすという、絶対前に出てこない通行人の顔!

唯一違うのは瞳の色くらいで、それだけは前世の黒ではなく緑色をしているが……?


訳がわからず混乱していると、突如ポポンっという音が頭上から聞こえ、何かがヒラヒラと落ちてきた。


何だ???


疑問に思いながらもそれをキャッチすると、どうやらそれは手紙の様で、封筒の表紙には可愛いお花のイラストと共に【 大樹さんへ、レーニャより 】と書かれている。


ハテナを頭の上にポンポンと飛ばしながら、俺は直ぐにその封筒を開け中の手紙を取り出すと、書かれている内容に眼を通していった。


『 大樹さんへ。

無事に転生が出来てよかったです。

この手紙は記憶が戻ったのと同時に着くように設定致しました。


なんと、まさかあの悪役リーフに転生してしまうなんて、夢にも思いませんでしたね~。


実はそのせいで少々困った事態になっています。

説明しなくても問題ないかと思い、あえて言いませんでしたが、現在生まれ変わった大樹さんは前世と全く同じ姿になってますよね?


それは大樹さんが前世の魂のまま転生したからです。


通常新しい "   生 "  を得る際、魂は一度   "  洗浄 "され、前世の記憶も姿形も全てリセットされてから新たな世界へと送られます。

しかし、大樹さんはその "  洗浄    "  をしていないため、前世のままの姿で生まれてきたという訳です。

ちなみに瞳の色はその世界に順応した色になりますので、この世界で最もスタンダードな色である緑色になりました。  』


茶色の髪に緑色の瞳はここアルバード王国では、最も多い平民の外見的な特徴だ。

確かに前世のままの姿で転生しても大した問題ではないのかもしれない。


だか────……

嫌な予感をバシバシと感じながら、手紙の続きに眼を通した。


『 その姿のまま一般平民家庭に生まれれば特に問題なかったのですが、大樹さんの生まれたメルンブルク家は、全員が ” 金色の髪に青い眼 ” という特徴をもっています。  

その為大樹さんは不義の子であると疑われてしまい、生まれて直ぐ一人でそのレガーノの街に残されてしまいました。
 
そしてメルンブルク家当主であり、リーフの父親である< カール >と母親の< マリナ >は、大樹さん以外の子供達と一緒に、現在は王都に住んでいます。
  
ちなみにリーフとして生まれるはずだった魂ですが、一度洗浄されたにも関わらず真っ黒で酷く歪な形をしていたので、もう一度しっかり洗浄して別の世界へ転生させておきました。

今度こそ真っ当な人生を歩んで頂きたいものです。


それでは、力を使い果たしてしまったのでこれが最後になります。

初めから前途多難になってしまいましたが、ハッピーエンドを目指して頑張って下さい。


レーニャより 』



手紙は読み終わると同時に、ふっ……と煙の様に消え、その直後俺の体はスーッと後ろに傾いていき────またしてもバターンと大きな音を立てて仰向けに倒れた。


「 ……って最初からお話ズレちゃってるじゃないか────!! 」


アルバード英雄記のリーフとのあんまりな違いに俺は思わず大声で叫ぶ。

そして襲ってくるのは焦りと不安だ。


こんな最初からブレブレで果たして大丈夫なのか?!


その場でバタバタと手足を動かして、どうしようどうしよう!と悩んでしまったが、とりあえずレオンハルトに関する事でなければ多少変わっていても問題はないはず……!


つまりこれは……レオンハルトと出会った後、俺の悪役としての演技力に全ての命運が掛かっている??


気合を入れて悪役頑張ろう!と決意し、1人でゴォーと燃えていると、そこであることに気づき、あっ!と声を漏らした。


俺のせいでリーフの母親は浮気を疑われてしまったのだ。

それで家族内に不和が生じてしまったなら申し訳なさすぎるぞ~?



わぁ~い、俺、初めての家族だ。うれし~な~!……なんてはしゃいでた自分が恥ずかしい!


うわぁぁぁあー!!と叫びながら、再度部屋の中をゴロゴロと転がりまくっていると、またしても上からポンっという音が鳴りヒラヒラと手紙が落ちてくる。


「 …………??? 」


それを仰向けに寝転んだままパシッ!と受け取り表紙を見ると、先程は花柄だった封筒が何故か今度は骸骨が沢山ついているおどろおどろしい封筒になっていた。

それに首を傾げながらも、カサカサと封筒を開けて中の手紙に目を通す。


『 そうそう、大樹さんが気にすると思いますので言っておきますが、あのメルンブルク家の人間達は流石あのリーフの家族と言えるクズ────

……いえ、個性的な方々で、随分と性に対し独創的で常人には到底理解できぬ開放的な考え方を持っている様です。

お互い沢山の愛人を堂々と連れて歩いているので、特にそれが原因で家庭内不和はないかと思われます。

どうかご安心下さい。                    


レーニャより 』



おおおおっ??

そっ、そうなのか~……


” 堂々と愛人を…… ” のところで少し驚いてしまったが、心の中にあった罪悪感は軽くなり、ホッと胸を撫で下ろす。


前世で結婚どころか童貞で終わってしまった俺には分かりかねるが、これはきっとあれだ。

パートナーに別の異性がいる事で興奮を感じるタイプの性癖……なんじゃないの~?


仏の様にニッコリと穏やかに笑いながら頷いた。


まぁ世の中には色々な愛の形があるからいいんじゃな~い?

でも子供達には絶対に見せない様にして~!────と会った事ないリーフ兄弟達の事を本気で心配した。


────その時……





────────コンコン。




部屋のドアを叩く控えめなノックの音が聞こえて、俺は視線をドアの方に向ける。
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