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プロローグ
17 小さなきっかけ
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◇◇◇
アルバード王国は、過去何度も繰り返されてきた他国からの侵略行為を全て完璧に撃退しており、その事から畏怖を込めて ” 不落のアルバード王国 ” と呼ばれていた。
それには一つの魔道具の存在が深く関係している。
< 仮想幻石 >
これは特殊な魔法結界が張られた範囲内でのみ使える魔道具で、自身の仮想実体を作り出し、それで本体を覆うものである。
この仮想実体が息絶えるまで本体には傷一つつかない。
そして仮想実体が息絶えた瞬間に、全く無傷の状態の本体が出現するため、要はその本体を殺すためにはその者を2度殺さねばならないのだ。
更にその回数は制作レベルによって増やす事ができ、現在の創作レベルは1~10まで。
最大10回まで生還することが可能。
そんな反則級のチート魔道具だが、一つだけ大きな欠点があった。
それは仮想実体が受ける痛覚を遮断出来ない点である。
それにより切られれば本当に切られた時の痛みが。
火で焼かれれば焼かれた時と同じ痛みが。
そして仮想実体が死ぬ時は本当に死を迎える時と全く同じ苦痛がその体を襲う。
その強烈な感覚によって死ななくとも精神を壊してしまう者も多数いるため、国はそれを危険性の高い魔道具として厳重に管理していた。
学院生活が半年を超える頃になると、授業はより実践的なものになるため、この< 仮想幻石 >を使うようになる。
その日の授業もいつも通り、生徒達は全員それを装着して実戦の授業に臨んでいたが、いつもと違ったのは教員の他に特別指導員として現役の騎士達が参加していた事だ。
特別指導員として学院を訪れた現役騎士達は三人。
< シモン >
< レイ >
< カウズ >
そんな彼らが訪問して直ぐに目に飛び込んできたものは、まるで呪いの化身の様なレオンハルトの姿で、三人はそれに心底震え上がったが・・
次に目にした光景は、更にその上をいく恐怖だった。
三人の目の前で、突然リーフがレオンハルトに< 仮想幻石 >を装着させると、更に手を後ろに組みその場で立てと命じる。
そして周りの教員と生徒達は、自身の実技をそっちのけで笑いながらそちらに注目し始めたので、三人はその異質な雰囲気に首を傾げながらそれを見守った。
するとーーーーー……
ーーードンッ!!!!
なんとリーフは、そのまま抵抗を一切しないレオンハルトに対し、なんの躊躇もなく全力の攻撃を繰り返し打ち込んだのだ!
驚愕に目を見開く騎士たちに反して、周りにいる生徒たちはおろか教員までもがそれを見てクスクスと楽しそうに笑う。
周囲の者たちは知っていた。
この行為を止めずにいれば自分たちは安全で楽しい学院生活を送れるということを。
レオンハルト一人が犠牲になっていればーーー
どんなに容姿が悪くても、
どんなに身分が低くても、
どんなに実力が低くて周りの足を引っ張ろうとも
・・
自分はココから弾かれる事がなくなる。
レオンハルトに向ける悪口は、自身の粗を隠す最高の隠れ蓑。
更にレオンハルトを笑う事で、互いの連帯感は強まり、本来は癖が強くいがみ合うはずだった彼らは一つになった。
そこはまさに争いのない平和で幸せな世界。
そんな異様な空間の中で無抵抗に攻撃を受けていたレオンハルトがやがて倒れると、リーフはまた新たな< 仮想幻石 >をレオンハルトに持たせて同じ行為を繰り返した。
三人の騎士たちは、目の前に広がる " 当たり前の世界 " に恐怖を感じながらも、誰一人その場で口を出すことはしない・・いや、できない。
なぜなら三人とも平民出の騎士であったため、現公爵家の子息であるリーフはもちろんのこと、その他の者達も全員貴族のその場で口を出せば、ただでは済まないと知っていたからだ。
三人は必死に目を瞑り、保身に走る。
そして授業が終了するまでの間、その異様な世界はまるでこれこそが誰にとっても正しい世界であるかのように、その場に存在し続けていた。
アルバード王国は、過去何度も繰り返されてきた他国からの侵略行為を全て完璧に撃退しており、その事から畏怖を込めて ” 不落のアルバード王国 ” と呼ばれていた。
それには一つの魔道具の存在が深く関係している。
< 仮想幻石 >
これは特殊な魔法結界が張られた範囲内でのみ使える魔道具で、自身の仮想実体を作り出し、それで本体を覆うものである。
この仮想実体が息絶えるまで本体には傷一つつかない。
そして仮想実体が息絶えた瞬間に、全く無傷の状態の本体が出現するため、要はその本体を殺すためにはその者を2度殺さねばならないのだ。
更にその回数は制作レベルによって増やす事ができ、現在の創作レベルは1~10まで。
最大10回まで生還することが可能。
そんな反則級のチート魔道具だが、一つだけ大きな欠点があった。
それは仮想実体が受ける痛覚を遮断出来ない点である。
それにより切られれば本当に切られた時の痛みが。
火で焼かれれば焼かれた時と同じ痛みが。
そして仮想実体が死ぬ時は本当に死を迎える時と全く同じ苦痛がその体を襲う。
その強烈な感覚によって死ななくとも精神を壊してしまう者も多数いるため、国はそれを危険性の高い魔道具として厳重に管理していた。
学院生活が半年を超える頃になると、授業はより実践的なものになるため、この< 仮想幻石 >を使うようになる。
その日の授業もいつも通り、生徒達は全員それを装着して実戦の授業に臨んでいたが、いつもと違ったのは教員の他に特別指導員として現役の騎士達が参加していた事だ。
特別指導員として学院を訪れた現役騎士達は三人。
< シモン >
< レイ >
< カウズ >
そんな彼らが訪問して直ぐに目に飛び込んできたものは、まるで呪いの化身の様なレオンハルトの姿で、三人はそれに心底震え上がったが・・
次に目にした光景は、更にその上をいく恐怖だった。
三人の目の前で、突然リーフがレオンハルトに< 仮想幻石 >を装着させると、更に手を後ろに組みその場で立てと命じる。
そして周りの教員と生徒達は、自身の実技をそっちのけで笑いながらそちらに注目し始めたので、三人はその異質な雰囲気に首を傾げながらそれを見守った。
するとーーーーー……
ーーードンッ!!!!
なんとリーフは、そのまま抵抗を一切しないレオンハルトに対し、なんの躊躇もなく全力の攻撃を繰り返し打ち込んだのだ!
驚愕に目を見開く騎士たちに反して、周りにいる生徒たちはおろか教員までもがそれを見てクスクスと楽しそうに笑う。
周囲の者たちは知っていた。
この行為を止めずにいれば自分たちは安全で楽しい学院生活を送れるということを。
レオンハルト一人が犠牲になっていればーーー
どんなに容姿が悪くても、
どんなに身分が低くても、
どんなに実力が低くて周りの足を引っ張ろうとも
・・
自分はココから弾かれる事がなくなる。
レオンハルトに向ける悪口は、自身の粗を隠す最高の隠れ蓑。
更にレオンハルトを笑う事で、互いの連帯感は強まり、本来は癖が強くいがみ合うはずだった彼らは一つになった。
そこはまさに争いのない平和で幸せな世界。
そんな異様な空間の中で無抵抗に攻撃を受けていたレオンハルトがやがて倒れると、リーフはまた新たな< 仮想幻石 >をレオンハルトに持たせて同じ行為を繰り返した。
三人の騎士たちは、目の前に広がる " 当たり前の世界 " に恐怖を感じながらも、誰一人その場で口を出すことはしない・・いや、できない。
なぜなら三人とも平民出の騎士であったため、現公爵家の子息であるリーフはもちろんのこと、その他の者達も全員貴族のその場で口を出せば、ただでは済まないと知っていたからだ。
三人は必死に目を瞑り、保身に走る。
そして授業が終了するまでの間、その異様な世界はまるでこれこそが誰にとっても正しい世界であるかのように、その場に存在し続けていた。
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