天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
上 下
30 / 1,521
プロローグ

14  因縁の再会

しおりを挟む
そうして4月を迎え、とうとう高学院の入学式を迎えたレオンハルト。


彼を待っていたのは、神が選びし英雄としての尊敬の眼差しや崇め讃える感情の数々ーーーー


・・ではなく、呪いに対する強い恐怖や嫌悪、そして異質な存在に対する排他的な感情のみだった。


そんな誰も彼もが遠巻きに彼を避ける、そんな状況の中、一人の人物が前に出る。



< リーフ・フォン・メルンブルク >



レオンハルトをいじめ抜き、右腕を失くすきっかけにもなった因縁の相手だ。



リーフはレオンハルトを死ぬほど憎んでいた。



メルンブルク家は神託の後、英雄に対しての不敬罪として一部の領地と多額の罰則金を支払わなければならなくなった。


更にはそのことで、他の派閥の貴族達に出し抜かれる良い機会を与えてしまい、社交界ではいい笑い草にまでなってしまったのだ。


罰則金を支払う際、レオンハルトに刻み込んだ奴隷陣に関しても解除する様命じられたが、リーフはそれだけは首を縦に振らなかった。


"    いつか復讐してやる   "


その "  いつか  "   が来た時、奴隷陣は絶好の道具になると思ったからだ。


流石の王も、公爵家という高い身分に加え、奴隷に関する法律まで出されてしまっては強く口を出すこともできず・・

更には騒ぎが大きくなれば、レオンハルトと直接関わらなければならないことに恐怖し、それ以上言及するのを止めた。


リーフは自身の完璧な人生に影を落としたレオンハルトを絶対に許しはしない。

だから手始めに以前と同様にレオンハルトを堂々といじめ始めた。


その様子を見ていた教員や他の生徒たちは、最初は顔を青ざめ遠巻きにしていたがーーー

リーフがレオンハルトに対しどんなにひどい扱いをしても、張本人であるリーフに神罰が下る事はない。


すると次第にレオンハルトが英雄であることに不信感が芽生え始める。


"   あんな恐ろしい姿をした彼は、本当に神の認めた "   英雄 "  なのだろうか? "


そしてそんな周囲の者達の不信感に止めを刺すようにリーフは言った。


” こいつは本当に ” 英雄レオンハルト ” なのか?
 
こんなみすぼらしくて呪われた醜い姿、右腕だって欠損している。
 
更にその首筋にはメルンブルク家の奴隷陣まであるのに? ”



” そもそもその容姿はこいつが英雄に相応しくないから呪われたのではないか? ”



こうしてリーフは持ち前のカリスマ性と人々の心を掴む話術を遺憾なく発揮し、徐々に周りを味方につけていった。


リーフの言い分を周囲は信じ、とうとう生徒達はもちろん教員までも喜んでそのいじめに加担するようになったが、レオンハルトにとってそんな事はどうでも良い事。


レオンハルトからすれば、今の現状はレガーノの街から学院に場所が移っただけだからだ。


むしろ雨風を防げる寝床と腹を満たす食事にありつける分、だいぶマシだとすら感じるほどであった。


リーフはそんな平然とした様子を見せるレオンハルトが気に入らず、とうとう彼を奴隷のように扱いだしたが、周囲の者たちにとってその光景は当たり前になっていく。


そしてそれが "   普通の日常  "   になる頃には、すでに学院で過ごすようになってから3ヶ月という月日が過ぎ、一年生としては初になる野外実習が始まった。



野外実習とは、三人一組となり学院の近くに存在する ” ポルクの森 ” で実践さながらのサバイバルをするというもので、期間は3日間。

もちろん低ランクではあるがモンスターも多数生息しているため、その相手もしながらの自給自足の生活を送ることになる。


モンスターを倒す実力、チームの協調性、サポート能力、危機に扮したときの行動力、決断力・・


生徒たちは真剣に考えながら自身のチームメイトを決めていったが、もちろんレオンハルトと組みたがる生徒などおらず、彼はいつものようにその輪から外れた隅に身を置いていた。


流石に一人で実習を受けさせるわけにも行かず、担当教員はわざとらしいため息を付きながらブチブチとレオンハルトの文句を呟いた、その時だった。


” よろしければ私のチームにいれますよ ” 


リーフがサッと手を挙げて、その教員に提案を申し出る。

既にリーフはいつもそばに控える取り巻き二人とチームを組んでいたが、そのありがたい申し出に教員は渡りに船とばかりに提案を了承した。

しおりを挟む
感想 265

あなたにおすすめの小説

僕の太客が義兄弟になるとか聞いてない

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26
BL
 没落名士の長男ノアゼットは日々困窮していく家族を支えるべく上級学校への進学を断念して仕送りのために王都で働き出す。しかし賢くても後見の無いノアゼットが仕送り出来るほど稼げはしなかった。  そんな時に声を掛けてきた高級娼家のマダムの引き抜きで、男娼のノアとして働き出したノアゼット。研究肌のノアはたちまち人気の男娼に躍り出る。懇意にしてくれる太客がついて仕送りは十分過ぎるほどだ。  そんな中、母親の再婚で仕送りの要らなくなったノアは、一念発起して自分の人生を始めようと決意する。順風満帆に滑り出した自分の生活に満ち足りていた頃、ノアは再婚相手の元に居る家族の元に二度目の帰省をする事になった。 そこで巻き起こる自分の過去との引き合わせに動揺するノア。ノアと太客の男との秘密の関係がまた動き出すのか?

それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。 まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。 転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。 ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。 「本当に可愛い。」 「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」 かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。 「お願いだから、僕にもう近づかないで」

もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《 根暗の根本君 》である地味男である< 根本 源 >には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染< 空野 翔 >がいる。 ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない?? イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】 世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。 これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。 無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。 不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

勘弁してください、僕はあなたの婚約者ではありません

りまり
BL
 公爵家の5人いる兄弟の末っ子に生まれた私は、優秀で見目麗しい兄弟がいるので自由だった。  自由とは名ばかりの放置子だ。  兄弟たちのように見目が良ければいいがこれまた普通以下で高位貴族とは思えないような容姿だったためさらに放置に繋がったのだが……両親は兎も角兄弟たちは口が悪いだけでなんだかんだとかまってくれる。  色々あったが学園に通うようになるとやった覚えのないことで悪役呼ばわりされ孤立してしまった。  それでも勉強できるからと学園に通っていたが、上級生の卒業パーティーでいきなり断罪され婚約破棄されてしまい挙句に学園を退学させられるが、後から知ったのだけど僕には弟がいたんだってそれも僕そっくりな、その子は両親からも兄弟からもかわいがられ甘やかされて育ったので色々な所でやらかしたので顔がそっくりな僕にすべての罪をきせ追放したって、優しいと思っていた兄たちが笑いながら言っていたっけ、国外追放なので二度と合わない僕に最後の追い打ちをかけて去っていった。  隣国でも噂を聞いたと言っていわれのないことで暴行を受けるが頑張って生き抜く話です

出戻り聖女はもう泣かない

たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。 男だけど元聖女。 一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。 「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」 出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。 ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。 表紙絵:CK2さま

勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。

イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。 力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。 だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。 イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる? 頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい? 俺、男と結婚するのか?

処理中です...