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プロローグ

8  悪役登場

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ここアルバード王国で、王族に次ぐ権力を持つ公爵家


< メルンブルク家 >


この< メルンブルク家 >は当主とその妻、そして二人の子供である長男、長女、次男と続く5人家族で、その次男にあたる────


〈 リーフ・フォン・メルンブルク 〉


────は名前がない彼と同じ歳の少年であった。



” 美しさ ” と ” 身分 ” に絶対的な価値観を持っていたメルンブルク家。


その全員が王族の色と言われている輝くような金色の髪、透き通った青い目を持ち、10人中10人が思わず振り返るような非常に美しい外見をしていて、その中でもリーフは飛び抜けた美しさと年相応ではない賢さも持って生まれてきた。


” 美しさ ”

” 身分 ” 

” 賢さ ”


そのすべてを兼ね備えて生まれてきた自分は神に選ばれた人間である。 


そんな盲信とともに、それ以外の存在は自分に一時の楽しみを与えるただの玩具。

それこそがリーフにとっての ” あるがままの世界 ” であり、それを存分に楽しみながら彼はその世界をゆっくり、ゆっくりと受け入れていった。


リーフは最強とも言えるその武器全てを使い、天使のような外見を持つ悪魔のような悪逆非道の暴君へと成長していく過程の中、8歳を迎えた時に最高の玩具を見つけた。



それが ” 名前のない彼 ” であった。



それから名前のない彼は12歳になるまでの4年間、残酷で許されざる虐めをリーフから受けることになる。

しかしそんな辛い辛い地獄のような日々すらも、すぐに彼にとっての当たり前の世界になっていった。


そこにはリーフに対しての怒りや憎しみなどは存在しない。

それが彼にとっての ” 当たり前 ” の世界だから。


その世界にしか自分という人間は存在することが出来ないから、彼は辛くても苦しくても、その世界にしがみつくしかない。

そう考えた彼は、ひたすらリーフから受ける行為を全て受け入れていく。


しかし────……何故彼はそんな酷い世界でもしがみつこうとしたのか?


その理由はたったひとつだけ彼の心の中に存在するあるもののためであった。



 "   母親 " 



その存在と繋がり続けるために、彼はその世界に存在し続ける。

例えその繋がりが蜘蛛の糸よりも細い絆であっても、それだけが彼にとっての大事なモノなのだと、そう思っていたからだ。


それをなんと呼ぶか彼には分からなかったが、ただそれだけが彼という存在を成り立たせるための唯一のものな気がして……

だから彼はたった一人しか存在しないその世界にずっと立ち続けた。


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