19 / 1,315
プロローグ
4【 アルバード英雄記 】
しおりを挟む
「 その本を読んだ俺は、孤独で誰よりも純粋な主人公の男の子に強い憧れを持ったんだ。
それと同時に、今の自分がすごく恥ずかしくなった。
家族を見て感じていた気持ちは嫉妬で、きっとこの本の主人公に出会っていなかったら、俺は自分にないものを持つ人全員を恨むようになっていたかもしれないね。
現実を直視できず、受け入れず、ただただ人を恨み続ける……そうならない様に努力することができたのは、主人公の彼のお陰なんだよ。 」
「 ……ふむっ。あのよく大樹さんが手にしていた本ですね。
【 アルバード英雄記 】ですか……。
私も読んでみたいです。
────ちょっと失礼しますね。 」
そう言ってレーニャちゃんは、俺の額に人差し指を当てるとポンッという音とともに一冊の本が出現する。
黒一色の表紙に【 アルバード英雄記 】とだけ書かれたシンプルな見た目の本。
まさしく俺の人生の全てを変えてくれた相棒とも言える本そのものであった。
レーニャちゃんはその本の表紙に手を添え、突然目を閉じる。
そして時間にして5秒くらい経った頃だろうか、すぐにハッとした様子で目を見開いた。
「 ……驚きました。
地球にアルバード王国の預言者がいたのですね。 」
「 ────へ?予言???
いやいや、違うよ~。これは空想の物語なんだ。
その作者さんが作ったありもしない世界の作り話なんだよ。」
それを聞いたレーニャちゃんは静かに首を振った。
「 いいえ、これは間違いなく予言書です。
これからこのアルバード王国で起こる現実の未来が書かれています。
この世界はたしか……イシュルという小神が担当していたはずです。 」
「 えっ?! ど、どういうことだい??
アルバード王国が実際に存在するなんて……!
そもそも預言者なんてすごいじゃないか!
そんなすごい人が地球にいるなんてびっくりだよ。 」
「 ────いえ、預言者自体はそんなに珍しいものではありません。
世界の絶対的ルール【 理 】に一瞬だけ同調してしまう人が稀にいまして……
予言とはその時覗いてしまった未来のビジョンなんです。
ただしそれは断片的で、かつ自身が暮らす世界の未来とは限りません。
この ” 数 ” という概念が成り立たないくらい無数に存在している世界の中で、自分が住むたった一つの世界の未来を偶然覗く……その確率はほぼゼロでしょう。
ですので大体の預言者は、変な夢を見たなくらいの感覚しか無いようです。
この本の作者もまさか予言書だとは思わず書いたみたいですね。 」
聞かされた衝撃の事実に俺は呆然としながらレーニャちゃんを見た。
8歳の頃に初めて出会ってからずっと俺を支え続けてくれた【 アルバード英雄記 】。
俺の人生そのものと言っても過言ではないこの本が現実の世界の話であったなど、驚くことしかできない。
これから起こる未来……
────では……主人公の彼は……
俺はサァ────……と青ざめた顔色のまま、震える声で前に座るレーニャちゃんに向かって言った。
「 ────じゃあこの本の主人公は……
レオンハルトは本当にこの本の通りの人生を歩むのかい? 」
それと同時に、今の自分がすごく恥ずかしくなった。
家族を見て感じていた気持ちは嫉妬で、きっとこの本の主人公に出会っていなかったら、俺は自分にないものを持つ人全員を恨むようになっていたかもしれないね。
現実を直視できず、受け入れず、ただただ人を恨み続ける……そうならない様に努力することができたのは、主人公の彼のお陰なんだよ。 」
「 ……ふむっ。あのよく大樹さんが手にしていた本ですね。
【 アルバード英雄記 】ですか……。
私も読んでみたいです。
────ちょっと失礼しますね。 」
そう言ってレーニャちゃんは、俺の額に人差し指を当てるとポンッという音とともに一冊の本が出現する。
黒一色の表紙に【 アルバード英雄記 】とだけ書かれたシンプルな見た目の本。
まさしく俺の人生の全てを変えてくれた相棒とも言える本そのものであった。
レーニャちゃんはその本の表紙に手を添え、突然目を閉じる。
そして時間にして5秒くらい経った頃だろうか、すぐにハッとした様子で目を見開いた。
「 ……驚きました。
地球にアルバード王国の預言者がいたのですね。 」
「 ────へ?予言???
いやいや、違うよ~。これは空想の物語なんだ。
その作者さんが作ったありもしない世界の作り話なんだよ。」
それを聞いたレーニャちゃんは静かに首を振った。
「 いいえ、これは間違いなく予言書です。
これからこのアルバード王国で起こる現実の未来が書かれています。
この世界はたしか……イシュルという小神が担当していたはずです。 」
「 えっ?! ど、どういうことだい??
アルバード王国が実際に存在するなんて……!
そもそも預言者なんてすごいじゃないか!
そんなすごい人が地球にいるなんてびっくりだよ。 」
「 ────いえ、預言者自体はそんなに珍しいものではありません。
世界の絶対的ルール【 理 】に一瞬だけ同調してしまう人が稀にいまして……
予言とはその時覗いてしまった未来のビジョンなんです。
ただしそれは断片的で、かつ自身が暮らす世界の未来とは限りません。
この ” 数 ” という概念が成り立たないくらい無数に存在している世界の中で、自分が住むたった一つの世界の未来を偶然覗く……その確率はほぼゼロでしょう。
ですので大体の預言者は、変な夢を見たなくらいの感覚しか無いようです。
この本の作者もまさか予言書だとは思わず書いたみたいですね。 」
聞かされた衝撃の事実に俺は呆然としながらレーニャちゃんを見た。
8歳の頃に初めて出会ってからずっと俺を支え続けてくれた【 アルバード英雄記 】。
俺の人生そのものと言っても過言ではないこの本が現実の世界の話であったなど、驚くことしかできない。
これから起こる未来……
────では……主人公の彼は……
俺はサァ────……と青ざめた顔色のまま、震える声で前に座るレーニャちゃんに向かって言った。
「 ────じゃあこの本の主人公は……
レオンハルトは本当にこの本の通りの人生を歩むのかい? 」
95
お気に入りに追加
1,993
あなたにおすすめの小説
聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど?
バナナ男さん
BL
主人公の現在暮らす世界は化け物に蹂躙された地獄の様な世界であった。
嘘か誠かむかしむかしのお話、世界中を黒い雲が覆い赤い雨が降って生物を化け物に変えたのだとか。
そんな世界で兵士として暮らす大樹は突然見知らぬ場所に召喚され「 世界を救って下さい、聖女様 」と言われるが、俺男〜しかも兵士なんだけど??
異世界の王子様( 最初結構なクズ、後に溺愛、執着 )✕ 強化された平凡兵士( ノンケ、チート )
途中少々無理やり的な表現ありなので注意して下さいませm(。≧Д≦。)m
名前はどうか気にしないで下さい・・
勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話
バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】
世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。
これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。
無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。
不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜
7ズ
BL
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。
攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。
そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。
しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。
彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。
どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。
ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。
異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。
果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──?
ーーーーーーーーーーーー
狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛
【 完結 】お嫁取りに行ったのにキラキラ幼馴染にお嫁に取られちゃった俺のお話
バナナ男さん
BL
剣や魔法、モンスターが存在する《 女神様の箱庭 》と呼ばれる世界の中、主人公の< チリル >は、最弱と呼べる男だった。 そんな力なき者には厳しいこの世界では【 嫁取り 】という儀式がある。 そこで男たちはお嫁さんを貰う事ができるのだが……その儀式は非常に過酷なモノ。死人だって出ることもある。 しかし、どうしてもお嫁が欲しいチリルは参加を決めるが、同時にキラキラ幼馴染も参加して……? 完全無欠の美形幼馴染 ✕ 最弱主人公 世界観が独特で、男性にかなり厳しい世界、一夫多妻、卵で人類が産まれるなどなどのぶっ飛び設定がありますのでご注意してくださいm(__)m
奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。
拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ
親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。
え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか
※独自の世界線
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる