上 下
75 / 84
現代( 注意! )

76 嬉しそうな・・

しおりを挟む
” お酒大好き、何でも飲みます! ”

そんな俺にとって飲み放題プランがついているかついていないかは非常に重要で、あれば必ずつける。


そして一杯飲む。

誰よりも飲む。


仕方がない酔っ払いになった経験値なら多分誰にも負けない。

それからは踊る!歌う!のオンパレード。

それが大好き。


流石に玲央の前では一杯にしておくか~・・などという慎ましさは派手に吹っ飛び、沢山飲もう!と決意した。


「 じゃあ、早速~!

玲央に久しぶりに会えて俺は嬉しいぞ~。

これからよろしくお願いしま~す! 」


ササッ!とグラスを持って玲央に向けると、玲央もグラスを優雅な仕草で持ち、軽く俺のグラスにチンッ・・と当てる。


「 うん、俺も嬉しいよ。

やっとあるべき姿になれるね、俺たち。 」


「 そうだな~。

高校の時は喧嘩しちゃったけど、これからは仲良くしてくれよ。 」


” 喧嘩しちゃったけど、改めて仲良くしようね! ”


そう言われて気分は舞い上がり、美味しいワインをグイッと飲む。


口から鼻に抜けるアルコール臭がなんとも控えめ・・

しかし舌にはたしかな刺激、口全体から鼻に漂う果実の香り!


これは飲んだことないくらい美味しいワイン!!


美味しすぎてグイグイと飲んでしまい、その美味しさに舌鼓を打っていると、ナイスタイミングで運ばれてくる芸術品の様な料理の数々!

俺の貧困な脳みそでは枝豆か芋の煮物くらいしか思い浮かばない中、正体不明の色とりどりの料理が目の前に次々と運ばれてくる。


「 おおおおお???! 」


キラキラ輝く料理を前にフルフルと震えていると、玲央がニッコリ笑いながら「 どうぞ? 」と言って自分の分のワインに口をつける。

「 い・・いただきま~す! 」

両手をパンッ!と合わせ、俺はその料理の数々を有り難く頂戴していった。



それから美味しい料理と酒を堪能しながら、玲央の仕事についてや自分の仕事についてなど楽しく会話していたのだが・・・突然俺の体に変化が現れる。


「 ・・??あ・・あれ・・??

なんか・・眠いな・・まだ酔ってないと思うんだけど・・ 」


ボヤッと目が霞み掛かってきたなと思ったら、身体から力が抜けてきた感覚があり、思わず乗り出していた身をソファーに沈めた。


「 そっか。やっと効いてきたみたいだね。

大樹は薬物の耐性が高いな。本当はもっと少量で効く薬のはずなんだけど・・ 」


「 ・・えっ?く、薬・・?? 」


急激に遠のく意識を必死に保っていると、とんでもない言葉が聞こえて身体を固くする。

それに気づいたのか、玲央は俺の身体を横から引き寄せ固まった身体を優しく擦ってきた。


「 変な薬じゃないから安心してよ。

ただちょっと準備が大変だから眠っててもらおうかなって。

初めてで痛いのは可哀想だからさ。 」


「 い・・痛い・・??そ・・そう・・か・・。 」


ゆらゆら動く頭を必死にまっすぐにしようとしたが、逆にぐにゃりと首から力が抜けてしまい、玲央の身体に頭を支えてもらう。

そんな俺を満足そうに見下ろす玲央の顔を見て、ズズ~ン・・と気持ちは沈んでいった。


玲央は俺に復讐するつもりだったのだ。

高校の時の事が許せなくてこうして薬まで使って、この後ボコボコにするつもりらしい。


仲良くしたいとなんて思っていなかった・・


その事実が悲しくて悲しくて、グスンッと鼻を鳴らした。

そしてとうとう涙が溢れてしまい、う~う~と唸りだすと、玲央は益々嬉しそうな顔を見せる。


「 泣く顔もいいな。

感情が表にこれって程ないほど出てて・・ホント最高。

あの時は、初めて感じる気持ちになって凄く戸惑ったけど、ずっと見ているうちに分かったんだ。

これがなんなのか。 」


「 うぅ~・・う~・・玲央のアホ~・・意地悪男~・・おたんこなす~・・・ 」


精一杯の悪口を言って恨みをぶつけたが、玲央は俺の顔を鷲掴み汚く泣く俺の顔をジロジロと眺め、顔を歪めた。


「 ・・あーーー・・我慢できない。ーーークソっ。

なんでこんな生き物が世の中にいるんだろう?

全然綺麗な顔もしてないし、虫と大して変わらない様な能力しかないのに・・。

ホント、不思議・・うざっ・・ 」


面と向かって吐き捨てられた悪口にガガーーン!とショックを受けると、そこが限界だった様で、そのまま俺の意識は闇の中。




それからは所々に意識を少しだけ取り戻しては、身体を襲う初めての痛み・・?いや熱いのかな?

とにかく凄い衝撃の連続と、自分の口から出ているらしい悲鳴混じりの声とか呻き声みたいな声とか……絶えず聞こえる ” はぁはぁ・・ ” といううるさくて荒い息使いとか?


何だろう?コレ????


不思議に思いながら視界に所々見えたのはーーー


玲央の初めて見る幸せそうな顔だった。




◇◇◇◇



「 なんか別世界の生き物って感じだよな~玲央ってさ 」


「 わかるわ~。なんかハッキリ引かれた線を感じるよな。

嫉妬すらおこんねぇもん 」



高校の時の教室内で窓際に座る玲央を見て友達二人が言う。


俺はそれを聞いて玲央の方へ視線を向けると、陽の光を浴びた玲央の横顔はとても綺麗でーーー

でもなんか寂しそうだと思った。


だから、突然話してみたくなって席を立とうとした瞬間、沢山の人達が玲央を囲み嬉しそうに喋りだし、玲央は笑顔を見せる。



ーーーーーあ、そっか・・

俺が話しかけなくても玲央には沢山の友達がいるもんな・・


なんか寂しそうと思ってしまった自分が恥ずかしくて頭をポリポリと掻くと、そのままその光景から目を逸らした。


しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

マリオネットが、糸を断つ時。

せんぷう
BL
 異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。  オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。  第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。  そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。 『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』  金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。 『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!  許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』  そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。  王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。 『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』 『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』 『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』  しかし、オレは彼に拾われた。  どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。  気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!  しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?  スラム出身、第十一王子の守護魔導師。  これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。 ※BL作品 恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。 .

前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果

はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

聖女の兄で、すみません!

たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。 三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。 そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。 BL。ラブコメ異世界ファンタジー。

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

処理中です...