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現代( 注意! )

68 いい思い出

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玲央はどこか人と違うーーーなんだか現実味のない存在というか・・とにかく不思議な魅力を持った男であった。


誰が言ったか ” 神の愛し子 ”


そう比喩されても誰もが納得する様な、人を惹きつける絶大な魅力と恐ろしく整った美しい顔を持っていた。

外人とのハーフであったらしい玲央は、日本人の平均身長を余裕で上回る高身長に、ほどよく引き締まったいわゆる細マッチョ体型。

透き通った蒼い目はまるで宝石の様で、プラチナブロンドの髪は玲央が顔を僅かに動かす度にキラキラと輝き、見る者全てを魅了していた。

その仕草にキャーキャー叫んでいた女子生徒いわく、” 玲央様はまるで漫画に出てくる王子様みたい! ” なんだそうだ。

山野はビールジョッキを一旦ダンッ!とテーブルに置き、苦笑いを見せる。


「 俺たちが高校の時に青春を謳歌出来なかったのって、10割あいつのせいだったよな。

学校の女子は全部・・それどころか先生も他校の女子生徒も、み~んなアイツに夢中だったもんな。 」


「 そうそう!

俺みたいな特に突出する特徴もない平凡男じゃ~一つも勝てない勝てな~い!

まぁ、俺はその当時杏花一筋だったから、関係なかったけどな。 」


俺がキリッ!と表情を引き締めカッコつけると、山野はハイハイと呆れた様に息を吐き出しながら、テーブルの上に置いてある枝豆を食べ始めた。


勿論そんな完璧王子様であった玲央のせいで、男子生徒達は全員苦々しい青春をおくることになり、どうにかして意地悪しようとする奴らもいたのだが・・

玲央は非常に頭も良く、また少々性格に難ありというか・・かなり意地悪な性格をしていたため再起不能レベルまでやり返す。

別にやり返すのは構わない。

ただ玲央は明らかにやり過ぎだった。


流石に見兼ねた俺が止めに入ると、今度は俺がターゲットになってしまい、壮絶なクラス内イジメへと発展してしまったのだ。

その当時の事を思い出し、ぷっと吹き出すと山野は呆れたようにため息をつく。


「 ・・いや、笑い事じゃないだろ~?

そもそもお前、恋愛以前によく普通に玲央の話できるよなぁ・・。

俺がお前と同じ立場だったら思い出したくもねぇよ。

当時クラスが違ったから詳しくは知らないけど・・キツかったんじゃないのか?

大樹が何も言わなかったからこっちも聞いた事なかったけど・・ 」


困った様に頭を掻く山野に、俺はおつまみの揚げ出し豆腐をハフハフしながら頬張り、はて・・??と記憶を探る。

俺にとって正直高校時代のイジメはーーーまぁ、何と言うか・・一言でいえば ” 熱血だったな "  という思い出カテゴリーに入ってたりする。

朝来て黒板に貧乏人だの平凡キモ男だの書かれた日には、その犯人の男の顔面に黒板消しをフルスイング。

そして机に落書きされたらそのまま犯人の机に同じモノを書いてギャーギャーと取っ組み合いの大喧嘩。

お弁当を台無しにされれば、俺のモットー ” 食べ物大事 ” を台無しにされた事から大激怒。

逃げ惑う同級生達を追いかけ回し、こんにゃろこんにゃろ!と揉み合った挙句、一緒にそのぐちゃぐちゃになったお弁当を食べるーーーなどなど。

全力で人生を駆け抜けた感が凄くある。


「 俺は楽しかったよ。

何かこう・・皆と全力でぶつかり合っている感じが凄く好きだった。 

最後は丸くおさまったし、学生の時のいい思い出かな。 」


しみじみしながらそう言えば、山野は複雑な表情を浮かべた。


「 そ、そうか・・。

まぁ、確かに良い思い出っちゃ~思い出か・・。

あの玲央とも大喧嘩したんだろ?

それ、未だに信じられないんだけど・・こわっ。 」


グピッとビールを飲みながら汗を掻く山野に、俺は当時の思い出を振り返り、楽しくなってハハッ!大声で笑う。


結局何が発端だったのかは忘れたが、ある日俺といじめっ子達はポカスカポカスカと大乱闘の末に泣く!泣く!泣く!と怒涛の展開へ。

するとそれが伝染した様に傍観していた同級生達も大泣きし始め、最後は先生までメソメソしだすという……

何だか某青春有名ドラマのなんちゃら先生の様な状況になってしまい、正直たまに思い出すと吹き出してしまうが、当時は誰もが真剣だった。

そこで結局豪快にめでたしめでたしで終わったのだがーーーー俺はその中で唯一泣かずにポカンとしたままこっちを見ている玲央に視線を移す。


そもそものイジメの原因は、実はこの玲央が原因。

その理由も ” 生意気だったから ” という訳わからん理由だった。

しかもそもそも玲央は当時定期的にターゲットを決めてイジメを誘発していて、それをするのも ” なんとなく "   で完全なる暇つぶしだったのだとか。


とりあえずその状況を楽しんでいたらしい。


どうしてこんな事をしたんだ?という質問に対し、何も悪びれもなく、それどころか非常~に面倒くさそうにそう答えてきた玲央に俺は大激怒!

皆がオロオロする中、机を端に寄せ教室の中心に大きな円を描く様なフィールドを作ると、玲央に向かって「 来い。 」と一言言った。


「 ーーはぁ?お前ホントバカじゃないのか?

調子に乗るなよ。貧乏人が。 」


座ったまま、余裕そうにフッと鼻で笑う玲央だったが、俺が首根っこをつかんで投げ飛ばしてやると、突然床に叩きつけられた玲央は非常に驚いた顔でこちらを見つめてくる。


「 大馬鹿野郎はお前だろう!

男のくせに後ろでこそこそ陰湿な事するな!弱虫王子!! 」


ビシッと指を指してそう言ってやると、初めて玲央は怒りの表情を浮かべた。


「 ・・なんだと?

お前如きが俺に何か言うなんてあり得ない。

訂正しろ。 」


「 本当の事だろ?

皆の後ろにいないと何もできない玲央如きこそ、俺に謝れ!! 」


すると玲央は、俺に殴りかかろうとかかってきたが、俺はそれを避けてそのまま取っ組み合いの喧嘩を始めた。


「 ムカつくんだよっ!!

何にも持ってないカスのくせに楽しそうにしやがってっ!!!

うっとおしい!!! 」


「 何だとーー!!

自分は関係ないってお澄まし顔している方がムカつくだろう!!

気に入らないなら大人しく読書でもしてろ!このもやし野郎!! 」


ギャーギャーと凄まじい言い合いが聞こえてきたため、他のクラスの生徒たちもわらわらと出てきて教室を覗き、ギョッ!と目を剥く。

他の先生たちも総出で来たが、凄い剣幕で「「 邪魔するなーーー!! 」」と叫ぶ俺たちにピタリと動きを止めた。


そしてそのままギャーギャーと罵りあって投げあって、ポカスカポカスカ。

最後は同時にバタン・・


固唾を飲んでオロオロと見守る教員や同級生達の中で、倒れ込んだ玲央は「 クソっ・・! 」と悪態をつく。

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