上 下
41 / 84

41 最後の言葉

しおりを挟む
( 大樹 )

「 どけぇぇ────────!!! 」


俺が叫びながら間一髪、その間に割って入ると、振り下ろされる巨大なクリーチャーの腕を両手で受け止める・・────が!


────ミシミシミシ……っ!!!


低ランクモンスター如きでは到底出せない強大な力に、徐々にその腕は俺の顔に近づいてくる。


こいつは紛れもない!

クリーチャーに完全に変化している!!


「 ぐ……ぐぐ……。 」


その圧倒的な力に思わずうめき声を上げながらなんとか耐えていると、やっと目の前にクリーチャーと俺がいる事に気づいたらしく、レオンハルトとアルベルト、魔法騎士団員達の息を飲む声が背後から聞こえた。


クリーチャーと同じ構造なはずだ。

元はモンスターと呼ばれる生物が『 始祖の女王 』を元にした装置で変化したものだったんだから。


納得しながら、受け止めきれない重い攻撃を横に弾いてやると、そのまま恐ろしいスピードで連続攻撃してくるクリーチャー化したモンスターの攻撃を全ていなす。

すると驚いた様子のレオンハルトが必死の形相で「 大樹様!! 」と叫ぶ姿が視界の端に写り、更にアルベルトや周りの魔法騎士達が一斉に加勢しようと近づいて来ようとしたが────


「 駄目だっ!!下がれっ!!! 」


怒鳴りつける様にそう言うと、全員がピタリと動きを止める。


クリーチャーには新型人類の俺しか相手できない。

それは目の前で繰り広げられる俺たちの戦いで全員が理解した様で、それ以上手を出さずに邪魔にならない距離まで下がった。

それを確認しながら、次にザイラスは────っと視線を一瞬で回し探すと、何と腰を抜かした様で、あばばばば・・と呟きながら魔法騎士団に引きづられ同じく後ろに下げられている。


ザイラスぅぅ~……。


全く役に立ちそうにないザイラスはとりあえず放っておいて、俺はなんとか攻撃を躱しながら、隙をつきクリーチャー化したモンスターを羽交い締めに。

そうして動きを止めると、剣を構えたままのレオンハルトに向かって叫んだ。


「 その赤い玉を破壊しろ!!

多分ここが最悪な未来への分岐点だ。

それを使えばここは俺のいた世界と同じになっちまうぞ!! 」


「 ど……どういう事ですか……? 」


訳が分からないといった様子のレオンハルトに俺はニヤッと笑って見せた。


「 ここは異世界なんかじゃない。過去の世界だったんだ。

それを使ったから、この国どころか世界中の人類はほとんど死んじまったんだよ。 」


咆哮を上げながら凄まじい勢いで暴れるクリーチャー化したモンスターを見て、全員の顔色が更に青くなる。


「 まさか……大樹様の世界を地獄に変えたのは…… 」


「 あぁ、こいつらだ。

その赤い玉コロはモンスターを殺す装置じゃなくて、根本から構造を変えてパワーアップさせちまうもんだったらしいな。 」


羽交い締めしていたそいつは、腕をがむしゃらに回し俺の拘束を解くと「 ガァァァァ────!!!!! 」と叫び、そのまま周りにいる奴らに攻撃しようとしたが────

俺はそいつの足を蹴り上げ転倒させると、そのままもう一度羽交い締めにした。


恐怖で引きつり棒立ちしている魔法騎士団員達の中、レオンハルトは即座に「 アルベルトっ!!! 」と叫ぶ。


するとアルベルトが即座に動いた。


大きく振りかぶり赤い玉を剣で叩き切ると、まるで血のような液体がその中から溢れだし部屋全体を赤く染める。


それを見てホッ……とした俺はレオンハルトに向かって言った。


「 じゃあ、俺帰るわ。

こいつは一緒に持っていく。

あっちの世界の方が仲間達もいるから倒しやすいからさ。

クソみたいに頑丈だから倒すのに時間は掛かるが、この程度なら問題なく倒せる。 」


「 な、何を言っているのですか……? 」


顔を歪ませ俺に駆け寄ろうとするレオンハルトをアルベルトが後ろから羽交い締めにして止める。

それを見てニコッと笑った俺は最後にレオンハルトに言ってやった。



「 夢が叶って良かったな。

お前の復讐、俺はやっぱり優しいと思うぜ。

じゃあな! 」



お別れを口にして直ぐに俺は聖女の召喚で使っていた魔法を作動させた。

俺を中心に展開していく魔法陣が俺とクリーチャー化したモンスターを包みこんでいく。


「 大樹様────!!!! 」


レオンハルトはアルベルトの拘束を振り解き手を伸ばしてきたが、それより先に俺の体は消えてしまったため……











「 ────っ行かないで……。 」



最後に俺に向かって言ったレオンハルトの小さな声は、俺の耳には聞こえなかった。

しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

マリオネットが、糸を断つ時。

せんぷう
BL
 異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。  オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。  第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。  そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。 『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』  金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。 『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!  許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』  そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。  王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。 『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』 『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』 『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』  しかし、オレは彼に拾われた。  どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。  気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!  しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?  スラム出身、第十一王子の守護魔導師。  これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。 ※BL作品 恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。 .

前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果

はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

聖女の兄で、すみません!

たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。 三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。 そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。 BL。ラブコメ異世界ファンタジー。

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

処理中です...