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35 国のしてきた事

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( レオンハルト )

現在この世界は巨大な大陸が一つ中心に存在していて、それがこの< フォードロンド王国 >

そしてそれを取り囲む様に小さな大陸が存在しているが、我が国を凌ぐレベルの国は現在、存在していない。


勿論国の戦力も技術力も到底我々の足元にも及ばないが、” 聖女召喚 ” の噂を聞いた小国の王たちの中には、

” フォードロンド王国の戦力は実は大したことはない ” 

────と考える愚か者共も現れるかもしれない。


だからこそ過去聖女召喚を行った際は、他国にその情報が漏れぬよう女性なら王族との婚姻を結ばせ完全に囲い込み、男性だった場合は全員始末してきたようだ。


勿論男性でも王女と婚姻を結ばせるという手も考えられた時もあった様だが────

フォードロンド王国の歴史の中で、身分の高いある男性が国の乗っ取りを考え、凄惨な事件を起こしたことがあったため警戒していたのだろうと思われる。


それに男性ならば沢山の子供を複数の女性に生ませる事も可能であったため、王族としては非常に厄介な存在となる。


その行動を制御しようとしても国を救った英雄に近づきたい女性は多かっただろうしな……。


私の脳裏には晩餐会の際、沢山の者達に話しかけられては触られていた大樹様の姿が思い浮かび、不快な気持ちがブワッと湧いた。


気安く触るなどなんと図々しい者達なのだろう!

大樹様も大樹様で嫌がる素振りは見せなかったし……そもそも大樹様は警戒心がなさ過ぎる!!

少し触っただけでボンヤリしてしまうし、身体の全てを直ぐに私に任せてしまうし!!


イライラ、イライラ!!


怒りの感情はどんどん大きく膨れていき、ありもしない妄想がモヤモヤと頭の中に浮かんでくる。


あんなに快感に弱くては、きっと王宮から一歩でも出たら沢山の者達に迫られて……



王宮を出た瞬間、複数の男たちに囲まれてしまった大樹様。

グイグイと迫られて、断りきれない大樹様は次第に体から力を抜き────



────────ダンッ!!!


耐えきれぬ憎悪が体から湧き出て、思わず階段横の石造りの壁を殴りつけた。

すると殴られた壁からパラパラと落ちる小さい砂石を、慌てて振り向いたザイラスと後ろに控えているアルベルトが無言で見つめた。


「 ど……どうかされましたかな?殿下……? 」


ザイラスが恐る恐るといった様子で尋ねてきたので、私は直ぐにハッ!と正気に戻す。


「 ……虫を潰した。 」


冷静にそう返すと、ザイラスはホッと胸を撫で下ろした。

しかしアルベルトは、ひたすらジッ……と私を見つめてくるので、その視線から逃れる様に前にいるザイラスに話題を振る。


「 これで世界中のモンスター達は全滅か。

歴史に残る大偉業だな、ザイラス。 」


「 ────はっ!有難き幸せでございます。

殿下のお役に立てて私は大変嬉しく思います。

そしてこれでめでたく、あの憎たらしい聖女の出番はなくなりますな!

直ぐにでも自分の世界へ帰って貰いましょう! 」


意気揚々と鼻息を吹くザイラスだったが、私はピクッ……と眉を僅かに動かした。


「 いや、大樹様はこのまま王宮に置いておく。 」


「 はぁぁぁっ??!何を仰っておるのですか!!

モンスターが全滅すればあの様な力は必要ありません! 

寧ろ非常に厄介な力となるでしょう。

本当は亡き者にしてやりたい所ですが、勝手に帰ると申しておりましたので、用済みにはこのまま帰って頂きましょう。 」


「 そ……それは……。

────いっ、いくら何でも酷いのではないかと思ってな。

国を救ってくれた英雄に対して、その様な非道な扱いをこの国の王子としてするわけには……。 」


「「 …………。 」」


ザイラスとアルベルトがジッ……と表情なく見つめる視線に耐えられなくなり、静かに視線を逸らすが、ザイラスはそれを追いかけてきて正面から私の顔を見つめた。


「 ……殿下?

あのニセ聖女を召喚してからどうにもご様子がおかしいですぞ?

最初はあの聖女もどきを容赦なく利用し、亡き者にしようとしていたではありませんか。 」


「 そ……それは……ま、まさかあそこまで役に立つ者とは思わなかったからで……。 」


痛い所を突かれてしまいしどろもどろになってそう答えると、ザイラスはふぅ~……と大きなため息をつく。


「 そうそう、何やら侍女たちから聞きましたが、暇さえあればあの聖女もどきの元に通っているというのは本当でしょうか?

あの離宮はそもそも殿下の正妃を迎えるために作られた場所で、あの様な蛮族聖女もどきが住んで良い場所ではございません。

しかも随分と楽しく遊んでいると、侍女たちの噂になっております。

夜も必ずそこで過ごしているとも……。 」


「 …………。 」


全て真実であるため何も言い返せずとりあえず口を閉ざすと、ザイラスは再び、はぁ~……と大きなため息をついた。


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