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甘い卵焼き3
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「まさにチンチクリンじゃないっ……きゃあっ! ご、ごめんなさい!」
廊下の曲がり角でドスンと派手に反対方向から来た人と凛子はぶつかった。尻もちをついた衝撃で鞄を落としてしまい、中のお弁当はぐちゃぐちゃだろう。
凛子が顔を上げるとぶつかった相手は眉間に皺を寄せ、明らかに機嫌の悪い麗奈だった。不機嫌な顔をしているにも関わらず、美人という言葉が本当によく似合う。
「ったく、痛いゃないのよ。このチンチクリン」
麗奈は床に尻をつけたままの凛子を見下ろし悪態をついた。いつもなら悪口を言われても軽く聞き流せる凛子だが、今は無理だったようだ。溜まっていた涙がボロボロと頬を伝う。
「……リンなんて、分かってるもん」
泣きながら凛子はボソリと言った。
「はぁ? 何? 聞こえなかったけど」
麗奈はまだ凛子を見下ろしている。
凛子はガッと勢いよく立ち上がった。麗奈の顔の目の前まで凛子は背伸びをして顔を近づけ、睨み合った。
「チンチクリンなんて私が一番わかってるわよ! この美人!!!」
「はっ?」
麗奈は目を見開いて驚いている。凛子は大きな声で叫ぶと、また全力疾走で走り出した。
――悔しい、悔しい、悔しい!
何も知らないでヘラヘラ喜んでお弁当を作ってきた自分が馬鹿みたいだ。もらった防犯ブザーだって、子供扱いされて落ち込んでおきながらも結局嬉しくて鞄に付けている。自分だけが幼いまま取り残され、年を重ねるにつれどんどん格好良くなる優はいつか凛子の側から離れていってしまうのかもしれない。やっと大人になって、社会人になって、少し優に近づけたと思ったのに。
「そんなの……やだよぉ……」
ゆっくりと走るスピードが失速していく。たまたまたどり着いたリラクゼーションスペース。お昼時なのに誰もいない。渋谷食品には大きな食堂がある。多分社員たちはお昼は食堂で食べているのだろう。凛子は誰もいなくて好都合だと思い、リラクゼーションスペースにあるベンチに腰掛けた。
「うぅっ……ふっ……うっ……」
走ったせいで涙が顔中に巻き散ってしまい、顔のどこを触っても濡れている。
涙を拭こう。凛子はタオルを取り出そうと鞄を開けた。中にはランチクロスに包まれたお弁当が横たわっている。
(お弁当……)
凛子はそっと一つだけお弁当を取り出した。優に渡すための自分のお弁当箱より一回り大きいもの。ランチクロスを解き、蓋を開けた。
「ぐちゃぐちゃだ。こんなのあげられるわけないよ」
ミニトマトは最初の場所とは全く反対方向に飛んでいるし、たこさんウインナーにした黒胡麻の目もどこかにいってしまい顔なしのたこさんウインナーになっている。
凛子は大きくため息をつき、タオルで顔を拭った。
「桜庭さん?」
聞き覚えのない、男性の声。頭上から名前を呼ばれ凛子は恐る恐るタオルで隠れていた顔を目元だけひょこりと出した。
廊下の曲がり角でドスンと派手に反対方向から来た人と凛子はぶつかった。尻もちをついた衝撃で鞄を落としてしまい、中のお弁当はぐちゃぐちゃだろう。
凛子が顔を上げるとぶつかった相手は眉間に皺を寄せ、明らかに機嫌の悪い麗奈だった。不機嫌な顔をしているにも関わらず、美人という言葉が本当によく似合う。
「ったく、痛いゃないのよ。このチンチクリン」
麗奈は床に尻をつけたままの凛子を見下ろし悪態をついた。いつもなら悪口を言われても軽く聞き流せる凛子だが、今は無理だったようだ。溜まっていた涙がボロボロと頬を伝う。
「……リンなんて、分かってるもん」
泣きながら凛子はボソリと言った。
「はぁ? 何? 聞こえなかったけど」
麗奈はまだ凛子を見下ろしている。
凛子はガッと勢いよく立ち上がった。麗奈の顔の目の前まで凛子は背伸びをして顔を近づけ、睨み合った。
「チンチクリンなんて私が一番わかってるわよ! この美人!!!」
「はっ?」
麗奈は目を見開いて驚いている。凛子は大きな声で叫ぶと、また全力疾走で走り出した。
――悔しい、悔しい、悔しい!
何も知らないでヘラヘラ喜んでお弁当を作ってきた自分が馬鹿みたいだ。もらった防犯ブザーだって、子供扱いされて落ち込んでおきながらも結局嬉しくて鞄に付けている。自分だけが幼いまま取り残され、年を重ねるにつれどんどん格好良くなる優はいつか凛子の側から離れていってしまうのかもしれない。やっと大人になって、社会人になって、少し優に近づけたと思ったのに。
「そんなの……やだよぉ……」
ゆっくりと走るスピードが失速していく。たまたまたどり着いたリラクゼーションスペース。お昼時なのに誰もいない。渋谷食品には大きな食堂がある。多分社員たちはお昼は食堂で食べているのだろう。凛子は誰もいなくて好都合だと思い、リラクゼーションスペースにあるベンチに腰掛けた。
「うぅっ……ふっ……うっ……」
走ったせいで涙が顔中に巻き散ってしまい、顔のどこを触っても濡れている。
涙を拭こう。凛子はタオルを取り出そうと鞄を開けた。中にはランチクロスに包まれたお弁当が横たわっている。
(お弁当……)
凛子はそっと一つだけお弁当を取り出した。優に渡すための自分のお弁当箱より一回り大きいもの。ランチクロスを解き、蓋を開けた。
「ぐちゃぐちゃだ。こんなのあげられるわけないよ」
ミニトマトは最初の場所とは全く反対方向に飛んでいるし、たこさんウインナーにした黒胡麻の目もどこかにいってしまい顔なしのたこさんウインナーになっている。
凛子は大きくため息をつき、タオルで顔を拭った。
「桜庭さん?」
聞き覚えのない、男性の声。頭上から名前を呼ばれ凛子は恐る恐るタオルで隠れていた顔を目元だけひょこりと出した。
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