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聖なる翼に愛を捧げる

14、宝物

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 トサリと洸夜は日和の横に寝転びぎゅうっと抱きしめてきた。汗で冷えた身体がひんやりと冷たくて、燃えたぎっていた身体を徐々に冷やしていく。
 身体を捻らせ洸夜の方を向くとあの大きな漆黒の羽はいつのまにか無くなっていた。


「羽、しまったの?」
「ん、ああ、なに? 気に入った?」


 ニヤリと口角を上げ満足げに聞いてくる。気に入ったと聞かれれば、それは気に入った。だから「まぁね」と答えた。だってそれも洸夜の身体の一部なのだから。
 穏やかに、嬉しそうに微笑む洸夜にぽわんと胸が暖 温かくなった。
 二人で肌と肌をぴったりと合わせドクドクと相手の心音が身体に響いてくる。ゆっくりと穏やかな時間が過ぎていき、何分抱きしめ合って静かにしていたかは分からない。分からないけれどなんとなく一分一秒が長く感じた。
 このまま眠ってしまいそうなくらい目が微睡んでくる。よいしょっと寝返りを打ち、壁側を向くとなんだか物凄く視線を感じた。
 薄暗い月明かりの中、その視線を感じる方を見る。


「は、はぁ!? なにこれ!?」


 驚いてガバッと身体を起こした。


「んん、なんだよ急に……」


 身体を重ねている最中は夢中で気づかなかったが冷静になった今、自分の視界に入ったものが信じられなくて、何度も目を擦ったが何度見ても変わらない。


「な、なんで私の写真っ!」


 大きな額縁に巨大印刷された高校生の日和の姿。今と変わらず黒髪ストレートだが肌のハリが写真で分かるくらい若々しい、高校の制服を着てキラキラした笑顔だ。洸夜が熱を出した時に来た時はこんな写真無かったはずなのに!


「あ、しまうの忘れてた」
「いや、だからなんで!?」
「なんでって、そりゃずっと日和に会えなくて、やっと写真ゲットしたんだから宝物にするだろ? 拡大コピーして飾るだろ?」


 ベットに横たわり頬杖をつきながらフンッ、と鼻を鳴らしバレてしまったのなら仕方ないと、ドヤ顔で自慢してくる。


「そんな事を聞いてるんじゃないっ!」
「いいだろ、ずっと会えなかったんだから写真ぐらい大切にしたって。俺はずっと日和だけが好きなんだから」


 スッと片腕が伸びてきて日和の頬をそっと包み込んだ。
 愛おしそうに、優しく、大切な宝物を包み込むように優しく。


(ほら、また……)


 そうやって熱い真剣な瞳で洸夜は日和を見つめるのだ。
 やっと、三十年間解けなかった問題が解けた気がする。セックス=気持ちいいになるには足りなかったものがあったのだと。セックス+洸夜になる事で=気持ちいいになるのだとやっと分かった。日和が今までずっと男の人に抱かれても気持ちがいいと感じず不感症だったのはきっと洸夜じゃなかったから。この男の熱く、淫らな手によって日和は洸夜しか感じられない身体にされてしまう運命だったのかもしれない。でも、それはそれでいい。
 磁石のように引き寄せ合う唇をそっと重ねた。
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