46 / 57
聖なる翼に愛を捧げる
4、未来のお姉さん
しおりを挟む
穏やかな夜の風が身体に纏わりついて本当に寒い。身体を小さく丸めて両手で自分の身体を擦っていると「日和さんっ!」と、イルミネーションにも負けないくらいのキラキラ笑顔の悠夜が手を振りながら近づいてくる。条件反射か、日和の身体はほんの少しだけビクリと強張ってしまった。あの日以来悠夜には初めて会う。
「あ、爽やかイケメンじゃない」
あの日の出来事を綾乃は知らない。言えるわけがなかった。でも何かを察してくれたのか何日経っても綾乃はいつものように何があったのよ~、とは聞いてこなかった。
「日和さん、サンタの格好凄い似合ってますね!」
「あ、ありがとう」
何もなかったかのように普通に話しかけてくる悠夜にどうしても警戒心が抜けず、寒いはずなのにギュッと握る手のひらにじわりと汗が浮き出てきた。
「あの、僕凄い反省してます。あのあと別の日に兄貴に呼び出されてこっぴどく怒られちゃいました、そりゃそうなんですけどね。でも、もうあんな事はしませんから! 今日はケーキ買いに来ちゃいました。やっぱり日和さんのケーキが一番美味しいから……ダメですかね?」
キュ~ンと鳴く子犬のような眼差し。悠夜はやっぱり根はケーキの大好きないい人なのかも知れない。日和は「もちろん、買いに来てくれて嬉しいよ」とホールケーキを一つ持ち帰り用の袋に入れた。
それにしても、一つ悠夜の発言で気になったことがある。別の日に洸夜と会った? そんなことは一切日和の耳には入っていない。まさかボコボコに殴られたとかじゃ……なさそうだ。悠夜の顔は腫れ一つ無い綺麗な顔だ。
「あのさ、あの男に会って、その、どうなったの?」
悠夜は「あ~」と日和は何も知らないことを察したようで「大丈夫ですよ」と優しく言った。
「こっちが拍子抜けしちゃうくらい優しい言葉をかけてもらいました。残された兄弟なんだから仲よくやっていこうって。僕泣いちゃいましたよ。でも最後に物凄い怖いこと言われましたけどね」
「怖いこと?」
「日和に手を出したら殺すだけじゃ済まねぇぞって。あれは震えましたね。怖すぎて」
「そ、そうなのね……」
あんだけやりあっても根は兄弟なんだなぁと思った。洸夜はなんだかんだ怖いことを言うかも知れないけど、態度も大きいかもしれないれど、とても優しい人だと日和は知っている。
「じゃあ、帰りますね、未来のお姉さん」
「へっ!?」
ケーキを嬉しそうに持った悠夜はからかうように笑って去っていった。
(み、未来のお姉さんって。っそりゃ、あいつと結婚したら……って、何考えてるのよ!)
「日和、ひーよーりー」
「は、はいっ!?」
一体なんの話だ、と不服そうな綾乃に事情を説明した。説明と言っても彼ら二人が淫魔とか、襲われかけたいうことは除いて。
「なにそれっ、めっちゃロマンチック~~~」
ろ、ロマンチックなのだろうか? むしろ複雑すぎないかと思っていたのだが、あまりにも綾乃がキャアキャア喜ぶのでなんだが二人が兄弟だったことなど全てが運命のようなロマンチックなものに思えてきた。
「運命かぁ……」
ボソリと呟いた。運命なんてこの世に存在するのだろうか。
「あ、爽やかイケメンじゃない」
あの日の出来事を綾乃は知らない。言えるわけがなかった。でも何かを察してくれたのか何日経っても綾乃はいつものように何があったのよ~、とは聞いてこなかった。
「日和さん、サンタの格好凄い似合ってますね!」
「あ、ありがとう」
何もなかったかのように普通に話しかけてくる悠夜にどうしても警戒心が抜けず、寒いはずなのにギュッと握る手のひらにじわりと汗が浮き出てきた。
「あの、僕凄い反省してます。あのあと別の日に兄貴に呼び出されてこっぴどく怒られちゃいました、そりゃそうなんですけどね。でも、もうあんな事はしませんから! 今日はケーキ買いに来ちゃいました。やっぱり日和さんのケーキが一番美味しいから……ダメですかね?」
キュ~ンと鳴く子犬のような眼差し。悠夜はやっぱり根はケーキの大好きないい人なのかも知れない。日和は「もちろん、買いに来てくれて嬉しいよ」とホールケーキを一つ持ち帰り用の袋に入れた。
それにしても、一つ悠夜の発言で気になったことがある。別の日に洸夜と会った? そんなことは一切日和の耳には入っていない。まさかボコボコに殴られたとかじゃ……なさそうだ。悠夜の顔は腫れ一つ無い綺麗な顔だ。
「あのさ、あの男に会って、その、どうなったの?」
悠夜は「あ~」と日和は何も知らないことを察したようで「大丈夫ですよ」と優しく言った。
「こっちが拍子抜けしちゃうくらい優しい言葉をかけてもらいました。残された兄弟なんだから仲よくやっていこうって。僕泣いちゃいましたよ。でも最後に物凄い怖いこと言われましたけどね」
「怖いこと?」
「日和に手を出したら殺すだけじゃ済まねぇぞって。あれは震えましたね。怖すぎて」
「そ、そうなのね……」
あんだけやりあっても根は兄弟なんだなぁと思った。洸夜はなんだかんだ怖いことを言うかも知れないけど、態度も大きいかもしれないれど、とても優しい人だと日和は知っている。
「じゃあ、帰りますね、未来のお姉さん」
「へっ!?」
ケーキを嬉しそうに持った悠夜はからかうように笑って去っていった。
(み、未来のお姉さんって。っそりゃ、あいつと結婚したら……って、何考えてるのよ!)
「日和、ひーよーりー」
「は、はいっ!?」
一体なんの話だ、と不服そうな綾乃に事情を説明した。説明と言っても彼ら二人が淫魔とか、襲われかけたいうことは除いて。
「なにそれっ、めっちゃロマンチック~~~」
ろ、ロマンチックなのだろうか? むしろ複雑すぎないかと思っていたのだが、あまりにも綾乃がキャアキャア喜ぶのでなんだが二人が兄弟だったことなど全てが運命のようなロマンチックなものに思えてきた。
「運命かぁ……」
ボソリと呟いた。運命なんてこの世に存在するのだろうか。
0
お気に入りに追加
194
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
独占欲強めな極上エリートに甘く抱き尽くされました
紡木さぼ
恋愛
旧題:婚約破棄されたワケアリ物件だと思っていた会社の先輩が、実は超優良物件でどろどろに溺愛されてしまう社畜の話
平凡な社畜OLの藤井由奈(ふじいゆな)が残業に勤しんでいると、5年付き合った婚約者と破談になったとの噂があるハイスペ先輩柚木紘人(ゆのきひろと)に声をかけられた。
サシ飲みを経て「会社の先輩後輩」から「飲み仲間」へと昇格し、飲み会中に甘い空気が漂い始める。
恋愛がご無沙汰だった由奈は次第に紘人に心惹かれていき、紘人もまた由奈を可愛がっているようで……
元カノとはどうして別れたの?社内恋愛は面倒?紘人は私のことどう思ってる?
社会人ならではのじれったい片思いの果てに晴れて恋人同士になった2人。
「俺、めちゃくちゃ独占欲強いし、ずっと由奈のこと抱き尽くしたいって思ってた」
ハイスペなのは仕事だけではなく、彼のお家で、オフィスで、旅行先で、どろどろに愛されてしまう。
仕事中はあんなに冷静なのに、由奈のことになると少し甘えん坊になってしまう、紘人とらぶらぶ、元カノの登場でハラハラ。
ざまぁ相手は紘人の元カノです。
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる