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聖なる翼に愛を捧げる
2、こちらになります
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夜中の零時すぎまでクリスマスケーキの仕込みをし、一旦家に帰って仮眠程度の睡眠をとり、また暗い中を歩いて店まで向かう。時刻は午前四時。はっきりいって寝た気がしない。毎年のことなので慣れてはいるが段々歳をとったことを感じさせられる。やっぱり二十代前半のときのは身体が違うと嫌でも思い知らせれるのがクリスマスだ。
「シンドイ……」
「それは俺も同じだ……」
健も家にシャワーだけ浴びに帰ってすぐに戻ってきたらしい。自分より二歳年上の健もひぃひぃ言いながら作業を進めていた。
「お肌ボロボロよ」
綾乃もプレートにチョコペンで文字を書いたり、クリームを泡立てるのを手伝ってくれている。三人でぶつぶつ独り言を言いながら進めていく作業場は傍からみれば恐ろしい現場に見えるかもしれない。そのくらい今年はケーキの量が多い。
「お、終わったぁぁぁ~」
ぷしゅ~っと空気の抜けた風船のように日和はスタッフルームのテーブルに突っ伏した。もちろん横を見れば健も綾乃も脱力している。時刻は既に午前九時をまわっていた。開店まで一時間切っている。
「片付けやらなきゃ、掃除もしなくちゃ……」
ケーキが作り終わったから終わりではない。ここから開店準備をし、どさっと訪れるお客さんのケーキ受け渡しが待っている。
日和たちは重い腰をあげ「やるぞーっ!」と最後の気合を入れた。
店売りのケーキを並べ、十時開店。いつもの倍以上のお客さんがゾロゾロと店に入ってきた。
「はい、中村様ですね。ご予約のケーキはこちらになります」
「はい、松田様ですね、ご予約のケーキはこちらになります」
「はい、髙林様ですね。ご予約のケーキはこちらになります」
同じフレーズを何度も何度も繰り返す。たまに店売りのケーキが売れてと大忙し。洸夜のことを考える暇もなく午前中が終わろうとしていた。
お昼になるとお客さんの足も少し途絶えてきたのでホッと一息、今のうちに交代でお昼を食べることにし、先に年配序列ということで健がスタッフルームにふらりと消えていく。
「やっと落ち着いてきたわね」
いつも完璧メイクの綾乃のアイメイクが少しよれている。それほど今日は忙しいのだ。
「だね。あとは夕方のピークと夜の路上販売だけか……」
「路上販売……」
綾乃と二人で体内の臓器が出てきそうなほど深い溜め息をついた。口に出しただけで身が震える。夜の極寒の寒さの中なんで路上販売なんか……と愚痴りたくなるが、これまた効果は絶大で、店の中には入ってこないけれど、外でふとケーキをみると買いたくなってしまうという人間の心理なのだろうか。店内で売れなくても外で販売するとたちまち売れてしまうというクリスマスマジックが起こるのだ。
「嫌だけど、売れるのよねぇ……」
「そうなんだよね。なんなのかな、本当。クリスマス怖い!」
「とか言って、今日の夜はやっと会えるんでしょう、社長に」
「ま、まぁそうなんだけど……」
やっと会える。しっかりと洸夜に会うのはいつぶりだろう。向こうも仕事が忙しいらしい。やはり恋人たちの一番盛り上がるイベントのクリスマスだ。婚活会社も大忙しなんだろうなぁと。だって夢にもまるっきり出てこないんだから!!!
(なんだか私だけが会いたいみたいで悔しいじゃない……)
年甲斐もなくむぅっと頬を膨らませたくなった。
「シンドイ……」
「それは俺も同じだ……」
健も家にシャワーだけ浴びに帰ってすぐに戻ってきたらしい。自分より二歳年上の健もひぃひぃ言いながら作業を進めていた。
「お肌ボロボロよ」
綾乃もプレートにチョコペンで文字を書いたり、クリームを泡立てるのを手伝ってくれている。三人でぶつぶつ独り言を言いながら進めていく作業場は傍からみれば恐ろしい現場に見えるかもしれない。そのくらい今年はケーキの量が多い。
「お、終わったぁぁぁ~」
ぷしゅ~っと空気の抜けた風船のように日和はスタッフルームのテーブルに突っ伏した。もちろん横を見れば健も綾乃も脱力している。時刻は既に午前九時をまわっていた。開店まで一時間切っている。
「片付けやらなきゃ、掃除もしなくちゃ……」
ケーキが作り終わったから終わりではない。ここから開店準備をし、どさっと訪れるお客さんのケーキ受け渡しが待っている。
日和たちは重い腰をあげ「やるぞーっ!」と最後の気合を入れた。
店売りのケーキを並べ、十時開店。いつもの倍以上のお客さんがゾロゾロと店に入ってきた。
「はい、中村様ですね。ご予約のケーキはこちらになります」
「はい、松田様ですね、ご予約のケーキはこちらになります」
「はい、髙林様ですね。ご予約のケーキはこちらになります」
同じフレーズを何度も何度も繰り返す。たまに店売りのケーキが売れてと大忙し。洸夜のことを考える暇もなく午前中が終わろうとしていた。
お昼になるとお客さんの足も少し途絶えてきたのでホッと一息、今のうちに交代でお昼を食べることにし、先に年配序列ということで健がスタッフルームにふらりと消えていく。
「やっと落ち着いてきたわね」
いつも完璧メイクの綾乃のアイメイクが少しよれている。それほど今日は忙しいのだ。
「だね。あとは夕方のピークと夜の路上販売だけか……」
「路上販売……」
綾乃と二人で体内の臓器が出てきそうなほど深い溜め息をついた。口に出しただけで身が震える。夜の極寒の寒さの中なんで路上販売なんか……と愚痴りたくなるが、これまた効果は絶大で、店の中には入ってこないけれど、外でふとケーキをみると買いたくなってしまうという人間の心理なのだろうか。店内で売れなくても外で販売するとたちまち売れてしまうというクリスマスマジックが起こるのだ。
「嫌だけど、売れるのよねぇ……」
「そうなんだよね。なんなのかな、本当。クリスマス怖い!」
「とか言って、今日の夜はやっと会えるんでしょう、社長に」
「ま、まぁそうなんだけど……」
やっと会える。しっかりと洸夜に会うのはいつぶりだろう。向こうも仕事が忙しいらしい。やはり恋人たちの一番盛り上がるイベントのクリスマスだ。婚活会社も大忙しなんだろうなぁと。だって夢にもまるっきり出てこないんだから!!!
(なんだか私だけが会いたいみたいで悔しいじゃない……)
年甲斐もなくむぅっと頬を膨らませたくなった。
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