一途な淫魔の執着愛 〜俺はお前しか抱かない〜

森本イチカ

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第二章、婚活パーティーは嫉妬の嵐

10、4146号室

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「こ、ここだ……」


 4146号室。今更なんで来てしまったんだろうと少し後悔してきた。
 なんできたの? とか言われたらどうしよう。
 躊躇してなかなかインターホンに指が伸ばせない。


(よしっ、勢いで来ちゃったもんは来ちゃったんだから!)
「お、押すぞ~……っうぇっ!?」
「日和、待ってた」


 インターホンを押す前にドアが開きいつもはビシッと決めている髪の毛が今日はくたぁっと前髪が下がり、ゆるい部屋着の洸夜が現れた。頬が少し赤い、なんだかいつもより増して色気を放っている気がする。


「あ、あんた大丈夫なの?」
「あぁ、なかなか熱が下がらなくてな。とりあえず入れ」
「お、お邪魔します……」


 洸夜の部屋は会社の社長室のようにシンプルな部屋だった。あまり見たことがない黒いフローリングの広いリビングには小さすぎる二人がけのグレイのソファーに大理石柄のダイニングテーブル、やたらデカいテレビ。それしかない。もしかして洸夜はミニマリストっていうやつなのだろうか。必要最低限の物しか置かない、そう考えると少しゾッとした。必要性がなくなったらゴミのように捨てられてしまいそうで。


「悪い、わざわざ日和から来てくれたのにもてなせなくて」


 どさりと尻餅をつくように勢いよくソファーに腰を下ろした洸夜は高熱がやはり辛いのか息が荒い。見上げてくる瞳は潤んでいてこんな弱っている洸夜を初めて見た。


「病院は行ったの?」
「ん、行った。疲れが出て風邪が長引いてるって医者が言ってた」
「淫魔なのに病院なんかに行ってバレないの?」
「身体は普通の人間と同じだからな。歳もとるし、死ぬよ。ただちょっと生きるのに栄養とは別で精気が必要なだけ……悪い、ちょっと横になるわ。来てくれてありがとうな。日和の顔みたら少し良くなった気がする。うつるといけねぇから今日は帰れ」


 帰れと言われてはいはい帰ります、なんて素直に帰るはずがない。こんなに辛そうな病人を一人にするほど日和は薄情ではない。


(心配できたんだから……心配させてよ……)
「帰らないわ。今日はあんたの看病しにきたんだから! さっ、こんなところじゃなくてベットで寝なさい」


 力なくソファーに座っていた洸夜の腕の隙間に入り込み立ち上がるのをサポートする。いつも日和を容赦なく包み込む大きな身体は熱に犯されているせいか弱々しい。
相当つらいのだろう。触れた身体あつあつに熱された鉄板のように熱く、触れたところから火傷してしまいそうだ。


「寝室どこなのよ」
「ん、奥の……部屋」


 話すのも辛くなってきたようだ。ずるずると引きずり歩いてやっとベットまで辿り着いた。
 ベットの上に寝転んだ洸夜は小さな子猫のように背中を丸めて小さくなっている。


「ちゃんと布団かけて寝なさい」
「ん」


 返事をするわりに動かない。「もう……」そう言いながらも布団を掛けてしまっている自分。もしかして母性本能というやつだろうか? だからこんなにも心配になるのだろうか。なんだか無性に洸夜のことが心配で何かしてあげたくなってしまう。


「なにか起きた時に食べれるよに作っておくから……」
(って、なんにも私買ってきてないじゃない!!!)


 洸夜に会いたいと思う一心で急ぎすぎていた。風邪を引いてる人になにも買ってこないなんて有り得ない。いつもならこんな失敗しないのに。何かを買っていくことも頭から抜け落ちるくらい心配で急いでいた。


「え……」


 布団の隙間から力無く伸びてきた腕は日和の手を握りしめた。握られている手は熱にうなされ弱々しいはずなのに指先にはぐっと力が入っており「逃さない」と指の先から伝わってくる。


「……行くな」


 言葉使いはいつもと同じなのにいつものような自信満々の声ではない、小さな子どものようなか細い声。


「こっちに来て」


 魔法のような言葉に誘い込まれる。握られた手から洸夜の熱が感染ってしまったのかもしれない。身体の内側からジワジワと熱く、心臓の動きもドクドクと早まって来た。


「日和、すこしの間でいいから一緒に寝て……一人じゃ寝れない……」
「すこし、なら……」
「ん、おいで」


 持ち上げられた布団の間に潜り込むとまるで蒸されたサウナのような空間に体温が更に上がった気がする。
 きっと自分は洸夜の熱が感染ってしまったんだ。だから身体が熱くてクラクラするから洸夜のベットで一緒に横になっているんだ。そう言い訳を頭の中でいいながら洸夜の熱に優しく包み込まれた。
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