24 / 57
第二章、婚活パーティーは嫉妬の嵐
10、4146号室
しおりを挟む
「こ、ここだ……」
4146号室。今更なんで来てしまったんだろうと少し後悔してきた。
なんできたの? とか言われたらどうしよう。
躊躇してなかなかインターホンに指が伸ばせない。
(よしっ、勢いで来ちゃったもんは来ちゃったんだから!)
「お、押すぞ~……っうぇっ!?」
「日和、待ってた」
インターホンを押す前にドアが開きいつもはビシッと決めている髪の毛が今日はくたぁっと前髪が下がり、ゆるい部屋着の洸夜が現れた。頬が少し赤い、なんだかいつもより増して色気を放っている気がする。
「あ、あんた大丈夫なの?」
「あぁ、なかなか熱が下がらなくてな。とりあえず入れ」
「お、お邪魔します……」
洸夜の部屋は会社の社長室のようにシンプルな部屋だった。あまり見たことがない黒いフローリングの広いリビングには小さすぎる二人がけのグレイのソファーに大理石柄のダイニングテーブル、やたらデカいテレビ。それしかない。もしかして洸夜はミニマリストっていうやつなのだろうか。必要最低限の物しか置かない、そう考えると少しゾッとした。必要性がなくなったらゴミのように捨てられてしまいそうで。
「悪い、わざわざ日和から来てくれたのにもてなせなくて」
どさりと尻餅をつくように勢いよくソファーに腰を下ろした洸夜は高熱がやはり辛いのか息が荒い。見上げてくる瞳は潤んでいてこんな弱っている洸夜を初めて見た。
「病院は行ったの?」
「ん、行った。疲れが出て風邪が長引いてるって医者が言ってた」
「淫魔なのに病院なんかに行ってバレないの?」
「身体は普通の人間と同じだからな。歳もとるし、死ぬよ。ただちょっと生きるのに栄養とは別で精気が必要なだけ……悪い、ちょっと横になるわ。来てくれてありがとうな。日和の顔みたら少し良くなった気がする。うつるといけねぇから今日は帰れ」
帰れと言われてはいはい帰ります、なんて素直に帰るはずがない。こんなに辛そうな病人を一人にするほど日和は薄情ではない。
(心配できたんだから……心配させてよ……)
「帰らないわ。今日はあんたの看病しにきたんだから! さっ、こんなところじゃなくてベットで寝なさい」
力なくソファーに座っていた洸夜の腕の隙間に入り込み立ち上がるのをサポートする。いつも日和を容赦なく包み込む大きな身体は熱に犯されているせいか弱々しい。
相当つらいのだろう。触れた身体あつあつに熱された鉄板のように熱く、触れたところから火傷してしまいそうだ。
「寝室どこなのよ」
「ん、奥の……部屋」
話すのも辛くなってきたようだ。ずるずると引きずり歩いてやっとベットまで辿り着いた。
ベットの上に寝転んだ洸夜は小さな子猫のように背中を丸めて小さくなっている。
「ちゃんと布団かけて寝なさい」
「ん」
返事をするわりに動かない。「もう……」そう言いながらも布団を掛けてしまっている自分。もしかして母性本能というやつだろうか? だからこんなにも心配になるのだろうか。なんだか無性に洸夜のことが心配で何かしてあげたくなってしまう。
「なにか起きた時に食べれるよに作っておくから……」
(って、なんにも私買ってきてないじゃない!!!)
洸夜に会いたいと思う一心で急ぎすぎていた。風邪を引いてる人になにも買ってこないなんて有り得ない。いつもならこんな失敗しないのに。何かを買っていくことも頭から抜け落ちるくらい心配で急いでいた。
「え……」
布団の隙間から力無く伸びてきた腕は日和の手を握りしめた。握られている手は熱にうなされ弱々しいはずなのに指先にはぐっと力が入っており「逃さない」と指の先から伝わってくる。
「……行くな」
言葉使いはいつもと同じなのにいつものような自信満々の声ではない、小さな子どものようなか細い声。
「こっちに来て」
魔法のような言葉に誘い込まれる。握られた手から洸夜の熱が感染ってしまったのかもしれない。身体の内側からジワジワと熱く、心臓の動きもドクドクと早まって来た。
「日和、すこしの間でいいから一緒に寝て……一人じゃ寝れない……」
「すこし、なら……」
「ん、おいで」
持ち上げられた布団の間に潜り込むとまるで蒸されたサウナのような空間に体温が更に上がった気がする。
きっと自分は洸夜の熱が感染ってしまったんだ。だから身体が熱くてクラクラするから洸夜のベットで一緒に横になっているんだ。そう言い訳を頭の中でいいながら洸夜の熱に優しく包み込まれた。
4146号室。今更なんで来てしまったんだろうと少し後悔してきた。
なんできたの? とか言われたらどうしよう。
躊躇してなかなかインターホンに指が伸ばせない。
(よしっ、勢いで来ちゃったもんは来ちゃったんだから!)
「お、押すぞ~……っうぇっ!?」
「日和、待ってた」
インターホンを押す前にドアが開きいつもはビシッと決めている髪の毛が今日はくたぁっと前髪が下がり、ゆるい部屋着の洸夜が現れた。頬が少し赤い、なんだかいつもより増して色気を放っている気がする。
「あ、あんた大丈夫なの?」
「あぁ、なかなか熱が下がらなくてな。とりあえず入れ」
「お、お邪魔します……」
洸夜の部屋は会社の社長室のようにシンプルな部屋だった。あまり見たことがない黒いフローリングの広いリビングには小さすぎる二人がけのグレイのソファーに大理石柄のダイニングテーブル、やたらデカいテレビ。それしかない。もしかして洸夜はミニマリストっていうやつなのだろうか。必要最低限の物しか置かない、そう考えると少しゾッとした。必要性がなくなったらゴミのように捨てられてしまいそうで。
「悪い、わざわざ日和から来てくれたのにもてなせなくて」
どさりと尻餅をつくように勢いよくソファーに腰を下ろした洸夜は高熱がやはり辛いのか息が荒い。見上げてくる瞳は潤んでいてこんな弱っている洸夜を初めて見た。
「病院は行ったの?」
「ん、行った。疲れが出て風邪が長引いてるって医者が言ってた」
「淫魔なのに病院なんかに行ってバレないの?」
「身体は普通の人間と同じだからな。歳もとるし、死ぬよ。ただちょっと生きるのに栄養とは別で精気が必要なだけ……悪い、ちょっと横になるわ。来てくれてありがとうな。日和の顔みたら少し良くなった気がする。うつるといけねぇから今日は帰れ」
帰れと言われてはいはい帰ります、なんて素直に帰るはずがない。こんなに辛そうな病人を一人にするほど日和は薄情ではない。
(心配できたんだから……心配させてよ……)
「帰らないわ。今日はあんたの看病しにきたんだから! さっ、こんなところじゃなくてベットで寝なさい」
力なくソファーに座っていた洸夜の腕の隙間に入り込み立ち上がるのをサポートする。いつも日和を容赦なく包み込む大きな身体は熱に犯されているせいか弱々しい。
相当つらいのだろう。触れた身体あつあつに熱された鉄板のように熱く、触れたところから火傷してしまいそうだ。
「寝室どこなのよ」
「ん、奥の……部屋」
話すのも辛くなってきたようだ。ずるずると引きずり歩いてやっとベットまで辿り着いた。
ベットの上に寝転んだ洸夜は小さな子猫のように背中を丸めて小さくなっている。
「ちゃんと布団かけて寝なさい」
「ん」
返事をするわりに動かない。「もう……」そう言いながらも布団を掛けてしまっている自分。もしかして母性本能というやつだろうか? だからこんなにも心配になるのだろうか。なんだか無性に洸夜のことが心配で何かしてあげたくなってしまう。
「なにか起きた時に食べれるよに作っておくから……」
(って、なんにも私買ってきてないじゃない!!!)
洸夜に会いたいと思う一心で急ぎすぎていた。風邪を引いてる人になにも買ってこないなんて有り得ない。いつもならこんな失敗しないのに。何かを買っていくことも頭から抜け落ちるくらい心配で急いでいた。
「え……」
布団の隙間から力無く伸びてきた腕は日和の手を握りしめた。握られている手は熱にうなされ弱々しいはずなのに指先にはぐっと力が入っており「逃さない」と指の先から伝わってくる。
「……行くな」
言葉使いはいつもと同じなのにいつものような自信満々の声ではない、小さな子どものようなか細い声。
「こっちに来て」
魔法のような言葉に誘い込まれる。握られた手から洸夜の熱が感染ってしまったのかもしれない。身体の内側からジワジワと熱く、心臓の動きもドクドクと早まって来た。
「日和、すこしの間でいいから一緒に寝て……一人じゃ寝れない……」
「すこし、なら……」
「ん、おいで」
持ち上げられた布団の間に潜り込むとまるで蒸されたサウナのような空間に体温が更に上がった気がする。
きっと自分は洸夜の熱が感染ってしまったんだ。だから身体が熱くてクラクラするから洸夜のベットで一緒に横になっているんだ。そう言い訳を頭の中でいいながら洸夜の熱に優しく包み込まれた。
0
お気に入りに追加
196
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる