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母親の病院にお見舞いに来るのは一か月ぶりだ。産後はしっかりと休みなさいと母親にも口うるさく言われていたのでようやくお見舞いに来ることが出来た。
「お母さん、開けるよ」
病室の扉を開けると鼻から管を通した母親がベッドに横になっていた。最近は呼吸が浅くなってきたらしく、常に酸素を管から送っているらしい。電話で聞いていたので実際の姿を目にするのは今日が初めてだった。
「あ……菜那、蒼司さん、来てくれたんだね」
久しぶりに聞く母親の声はとても弱弱しく、明らかに弱っていることが分かってしまうほど。
「お母さん、和香那を連れてきたよ。今は寝ちゃってるんだけど」
「いいよ、いいよ。顔さえ見れれば満足だから。寝てるところを起こさないようにしないとね」
菜那が病室にある椅子をベッドの近くに置き、その上にそっとクーファンを置いた。
「お義母さん、和香那は菜那さんに似てると思いませんか? この鼻とか口とか。目を開けたらもっと菜那さんに似てますよ」
母親は少し苦しそうにしながら身体を起こし、カゴの中を覗き込んだ。
「あぁ、本当だ。赤ちゃんの頃の菜那にそっくりね。凄く可愛い。ずっと見てても飽きないわね」
三人でクーファンの中にいる和香那を覗き込んでいると視線を感じ取ったのか、「んんっ……う゛ぅ゛~」と泣き始めた。
「あらま、起こしちゃったかしら」
ぐずる和香那を菜那が抱き上げると母親の匂いを感知するのか、温もりを感知するのか、ふにゃっと嬉しそうに笑った。
「ふふっ、もう泣き止んだ。お母さん、抱っこしてあげて」
菜那がベッドに浅く腰かける。
「……いいの?」
「当たり前じゃない。この子のおばあちゃんなんだから。はい」
菜那はそっと母親の腕の中に和香那を降ろした。
「ちっちゃい。まだまだ軽いわね……本当に可愛いわ……少しでも長生き出来ててよかったわ……」
小さく震えている声。母親の瞳からは一粒の涙が綺麗に流れた。ぬぐう素振りもなく、じぃっと嬉しそうに和香那を見つめる母親を見て、自分も涙が流れそうになった。
ずっと菜那の結婚を望んでいた母親、きっと孫なんて見せることは出来ないと思っていたあの頃から百八十度と言えるほど変わった自分の人生だ。
少しは親孝行できたのかな?
ツンと痛む鼻の奥を我慢して、キュッと口元を引き締めた。
「なーに言ってるの。もっともっと長生きして和香那の成長を見てもらわないとね!」
「そうですよお義母さん、次は妹かな、弟かな、双子も可愛いですよね。二倍の幸せを味わえそうです」
上品に凄いことを言う蒼司に菜那と母親は顔を合わせて笑った。
「ははっ、私もまだまだ病気に負けちゃいられないわね。菜那、和香ちゃんなんだか眠そうだからもうそろそろ帰りなさい」
母親の腕の中でうとうとしている菜那を受け取り、そっとクーファンの中に降ろした。
「じゃあ、また来るね」
「うん、手伝えなくてごめんね」
眉を下げる母親に菜那は蒼司の隣に立ち満面の笑みを見せた。
「私にはとっても頼りになる旦那様がいるから大丈夫だよ」
「ははっ、そうね。蒼司さん、菜那の事どうぞよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる母親に蒼司はそれ以上に深く頭を下げた。
病室を出て、寄り道せずに家に帰る。
「お母さん、開けるよ」
病室の扉を開けると鼻から管を通した母親がベッドに横になっていた。最近は呼吸が浅くなってきたらしく、常に酸素を管から送っているらしい。電話で聞いていたので実際の姿を目にするのは今日が初めてだった。
「あ……菜那、蒼司さん、来てくれたんだね」
久しぶりに聞く母親の声はとても弱弱しく、明らかに弱っていることが分かってしまうほど。
「お母さん、和香那を連れてきたよ。今は寝ちゃってるんだけど」
「いいよ、いいよ。顔さえ見れれば満足だから。寝てるところを起こさないようにしないとね」
菜那が病室にある椅子をベッドの近くに置き、その上にそっとクーファンを置いた。
「お義母さん、和香那は菜那さんに似てると思いませんか? この鼻とか口とか。目を開けたらもっと菜那さんに似てますよ」
母親は少し苦しそうにしながら身体を起こし、カゴの中を覗き込んだ。
「あぁ、本当だ。赤ちゃんの頃の菜那にそっくりね。凄く可愛い。ずっと見てても飽きないわね」
三人でクーファンの中にいる和香那を覗き込んでいると視線を感じ取ったのか、「んんっ……う゛ぅ゛~」と泣き始めた。
「あらま、起こしちゃったかしら」
ぐずる和香那を菜那が抱き上げると母親の匂いを感知するのか、温もりを感知するのか、ふにゃっと嬉しそうに笑った。
「ふふっ、もう泣き止んだ。お母さん、抱っこしてあげて」
菜那がベッドに浅く腰かける。
「……いいの?」
「当たり前じゃない。この子のおばあちゃんなんだから。はい」
菜那はそっと母親の腕の中に和香那を降ろした。
「ちっちゃい。まだまだ軽いわね……本当に可愛いわ……少しでも長生き出来ててよかったわ……」
小さく震えている声。母親の瞳からは一粒の涙が綺麗に流れた。ぬぐう素振りもなく、じぃっと嬉しそうに和香那を見つめる母親を見て、自分も涙が流れそうになった。
ずっと菜那の結婚を望んでいた母親、きっと孫なんて見せることは出来ないと思っていたあの頃から百八十度と言えるほど変わった自分の人生だ。
少しは親孝行できたのかな?
ツンと痛む鼻の奥を我慢して、キュッと口元を引き締めた。
「なーに言ってるの。もっともっと長生きして和香那の成長を見てもらわないとね!」
「そうですよお義母さん、次は妹かな、弟かな、双子も可愛いですよね。二倍の幸せを味わえそうです」
上品に凄いことを言う蒼司に菜那と母親は顔を合わせて笑った。
「ははっ、私もまだまだ病気に負けちゃいられないわね。菜那、和香ちゃんなんだか眠そうだからもうそろそろ帰りなさい」
母親の腕の中でうとうとしている菜那を受け取り、そっとクーファンの中に降ろした。
「じゃあ、また来るね」
「うん、手伝えなくてごめんね」
眉を下げる母親に菜那は蒼司の隣に立ち満面の笑みを見せた。
「私にはとっても頼りになる旦那様がいるから大丈夫だよ」
「ははっ、そうね。蒼司さん、菜那の事どうぞよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる母親に蒼司はそれ以上に深く頭を下げた。
病室を出て、寄り道せずに家に帰る。
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