俺の妻は腐女子ですがなんら問題ありません。交際0日婚で腐女子の私は甘々に溺愛されています

森本イチカ

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 身支度を整えて一緒に会社に向かう。せっかくモヤモヤしてた心は晴れたのに六月の梅雨入り。シトシトと雨が降り空気がじめっとした嫌な天気だ。傘をさして歩く分隆ちゃんとの距離があく。未だに隆ちゃんと二人で歩いているとジロジロ女子社員から見られたりもするが最初の頃よりはかなり減った方だ。同僚の小畑佳穂が言っていた通り隆ちゃんはかなり会社では人気上位の男性だったらしく、二次元しか興味の無かった私は全くもって隆ちゃんの存在を知らなかった。(本当にごめんなさい)そんな素敵な人と巡り会えて、お父さんには感謝だなぁ、と思いながら会社に着きピッと社員証をかざして入る。


「じゃあ今日も定時で終わると思うから連絡入れるな」


「うん、頑張ってね」


 三階で私はエレベーターを降りた。私と隆ちゃんは働く会社は同じだがフロアは違うので滅多に社内で会うことはない。お昼の社食でさえ時間がずれているので会う事がないのだ。なので帰りは一階のロビーで待ち合わせして一緒に帰る。ちょっとした待ち合わせデートみたいで私は毎日ウキウキしながら退社時間が待ち遠しく何度も時計を確認してしまう癖がついた。


「なーに時計ばっか気にしちゃって、今日も高林さんと一緒に帰るの?」


「佳穂。まぁそうなんだけど、私そんなに時計見てた?」


「見てたわよ、そりゃもう愛おしげに時計に視線を送ってたわ。本当いつの間にか付き合ってたと思ったら結婚するなんて驚きを通り越して羨ましいわ!」


「本当ですよ、俺だって驚きましたよ」


 後ろからたまに聞く男性の声。営業部の池澤祐也(いけざわ ゆうや)が領収書をペラリと片手にデスクに座っている私を見下ろすように後ろに立っていた。


「池澤くん……領収書?」


「そうです、これお願いします」


 頬に息が当たりそうなほど顔が近い。
 池澤くんの距離感にはいつも困るほど近い。けれどそれが私だけなら勘違いしそうになるがこの人は皆んなに対しても距離感が近いのでそういう性格なのだろう。営業部でもかなり成績が良いらしいので性格が功をしているんだろうな、と思わせる。見た目も隆ちゃんとは真逆の明るい茶色の髪の毛にふんわりパーマが当ててあり、二重ではっきりとした瞳に、いつもニコニコと口角が上がりっぱなしの口元。一言で池澤くんを表せば子犬だ。明るく人懐っこい性格で彼も会社では人気があるらしい。(これも佳穂情報だ)


 速やかに領収書を手に取りグイッと身体を押して距離を空ける。


「はい、確かに受けとりました」


「美桜さん、噂で聞いたんすけど結婚するんすか?」


「あ、うん、そうだよ」


「そっか~噂って本当だったんすね、人事部の高林さんでしたっけ? 最近よく一緒にいる所見かけますよ」


「そりゃ当たり前よ。毎日一緒に出勤して、一緒に帰ってるんだから。さぁ池澤も戻って仕事しなさい」


 佳穂にシッシッと手払いされ「ちぇ」と何故か名残惜しそうに池澤くんは営業部に帰っていった。そんなに戻るのが嫌だったのだろうか、まぁ確かに営業部は激務だもんな……。暑い中車で色んな歯科医院に回って歯科材を届けて、本当大変な部署だと思う。
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