ここは会社なので求愛禁止です!

森本イチカ

文字の大きさ
上 下
69 / 70

やっぱりここは会社なので求愛禁止です

しおりを挟む
 帰りの車の中ではプレゼントはいつ渡そうかと私の頭の中はプレゼントでいっぱいだった。
 いつの間にか松田の家に着いていてウーンウーンと悩みながら歩いていたらあっという間に松田のアパートの中にいた。

「真紀」

「は、はいっ!」

 思わず力んで返事をしてしまった。クスクスと笑う松田に吊られて私も笑ってしまう。

「とりあえず入ってください、寒いでしょう」

 リビングに入り二人で気が抜けたようにソファーに座る。

「美味しいけどやっぱりかしこまった場所は疲れちゃいますね」

「そうね、美味しいけど私は松田君の作ったご飯の方が好きだわ」

 ギジリとソファーが軋み肩に重みを感じる。松田の頬が私の肩に重なり肩が熱い。ハァと溜息をつく松田。

「なんでそんなに嬉しいことばっかり言ってくれるのかなぁ……」

 顎を触られ、ゆっくりと顔を近づけ唇を重ねる。お互いの唇から最後のデザートで食べたケーキの味がした。

「真紀」

 松田は綺麗にラッピングされた小さな箱を差し出し「メリークリスマス」と渡され、びっくりしたが「ありがとう」と受け取り丁寧にラッピングをほどき箱を開けるとその中にはきらびやかに輝いている小さなダイヤモンドのネックレス。

「え……可愛い……」

「真紀に似合うと思ったんだ、付けてあげる」

 私の胸元に小さいのに一際光をきらびやかに放つネックレス。

「本当にありがとう、嬉しい……あの、私もプレゼント用意してあるの」

 鞄の中から箱を取り出し「メリークリスマス」と松田に差し出した。
 自分も貰えると思っていなかったのか一瞬驚いた顔をしたが、パァと明るい笑顔になり「ありがとうございます」とニコニコしながら箱を開けると目を潤ませ泣きそうな顔で「ピアス……嬉しいです」と微笑んだ。
 つけていた金のピアスを外し私のプレゼントしたダイヤのピアスを片耳につけた。

「似合います?」

「う、うん、似合ってる」

「ダイヤ被りになるなんて、奇跡ですね!」

「本当ね」

「……明日は会社休みだから泊れます?」

「ええ、大丈夫よ」

「意味分かってるよね?」

 ギュッと手を握り立ち上がる松田に、もちろん意味は分かっている。無言で松田に寄り添い寝室まで手を引かれ、二人でドサっとベットに倒れ込んだ。

「今日のワンピースすっごく似合ってます、でも汚れちゃうといけないから脱がしちゃいますよ?」

「い、いいわよ……」

 スルリとスカートの下から松田の熱い手のひらが太腿を撫でる。いつの間にか脱がされ肌が露わになり恥ずかしくて手で隠すが一瞬で手を剥がされた。

「真紀……この下着めっちゃ可愛い、似合ってます」

 誠と一緒に買い物をしたときに買った黒の下着を今日はつけていた。

「恥ずかしいからあんまり見ないでっ、んっ……ふっ……」

 松田の舌が容赦なく私の舌を捉えては絡みつく。ゆっくりと上顎をなぞられ身体がゾワゾワとする。
流れ入ってくる彼の唾液は媚薬のように私の身体に流れ込み身体を熱くさせ、無意識に私は膝を擦り合わせていた。

 熱い視線の松田と目が合い心臓が騒めきだす。
 シュッとネクタイを外す仕草が色っぽく目が逸らせない。

「なーに見てんの?」

「み、見てないわよっ! んぅ……あっ……」

 松田の柔らかい唇が唇から首、首から胸へと移動し私の身体は松田によって溶かされた。

「っつ……真紀ッ……好きだ」

 彼の気持ちが良くて苦しそうに出す声が好きだ。

「ああっ……んんっ……私もッ……すっ、ンァ……好きッ」

 気持ちはどんどん昂り何度も何度も松田に好きだと伝えた。


 心地の良い身体の疲れを堪能する。汗でしっとりした肌が吸い付くようにピッタリとくっつき松田の胸にスリスリと頬を寄せた。

「ん? 甘えん坊さん?」

「たまには私も甘えたいのよっ」

 松田に出会ってからまだ数ヶ月。
 恋には奥手で慎重な私。むしろ恋を知らなかった私。
 冷たい態度の私に何度もまっすぐに思いを伝えてくれ気づけば私の方がいつの間にか貴方に夢中になっていた。

 もっと素直になれたら、もっと自信を持てるようになったら、いつかクローゼットにしまってあるあの真っ赤な下着を着けられる時が来るのかもしれない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

なし崩しの夜

春密まつり
恋愛
朝起きると栞は見知らぬベッドの上にいた。 さらに、隣には嫌いな男、悠介が眠っていた。 彼は昨晩、栞と抱き合ったと告げる。 信じられない、嘘だと責める栞に彼は不敵に微笑み、オフィスにも関わらず身体を求めてくる。 つい流されそうになるが、栞は覚悟を決めて彼を試すことにした。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ 慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。    その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは 仕事上でしか接点のない上司だった。 思っていることを口にするのが苦手 地味で大人しい司書 木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)      × 真面目で優しい千紗子の上司 知的で容姿端麗な課長 雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29) 胸を締め付ける切ない想いを 抱えているのはいったいどちらなのか——— 「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」 「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」 「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」 真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。 ********** ►Attention ※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです) ※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。 ※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~ その後

菱沼あゆ
恋愛
その後のみんなの日記です。

一夜限りのお相手は

栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月

処理中です...