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ハッキリさせたほうがいいんです
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自分の鞄の中から聞こえるバイブ音に気がつきスマホを取り出すと誠からのメールだった。
"真紀さんの負け決定~! 私今日たまたま仕事休みだから真紀さんの仕事終わりに会社の近くで待ってるよ。仕事終わるの何時頃?"
負けて潰れた奴のためにこっちの会社まで来てもらうなんて駄目駄目駄目!
"いえ! 私がそちらに行きます! 仕事終わりに誠さんのアパートに寄ってもいいですか?"
"了解、じゃあお言葉に甘えて来てもらおうかな"
"では、仕事終わり次第連絡しますね"
今日も早く仕事を終わらせようと気合が入る。頭痛も薬を飲んだお陰で痛みが引いた。
今日は特に急ぎの仕事がなかったのでマーケティング部の殆どの社員が定時で仕事を終えた。もちろん松田もだ。
「松田君、お願いがあるんだけど良い?」
松田は座っていた椅子をクルッと私の方へ向ける。
「良いですよ、どうしました?」
「これから一緒に誠さんの所に行かない? あ、用事とかあるなら別にいいんだけど……」
「昨日一緒に行くって言ったでしょ? 今帰る支度しまさから待っててください」
そういうと松田は素早く自身の鞄に必要なものを入れ「お待たせしました」と一分も経たずに帰る支度を済ませた。
少し距離をとりながら会社を出る。まだ何となく周りに付き合っている事がバレるのが恥ずかしい私への松田の配慮だ。
電車に乗り誠の家は松田と同じ駅なので一緒に降りそこからは松田と距離なく隣を歩いた。車で行った方が早いから、と松田の好意に甘えて、一度松田のアパートに寄り車で送ってもらった。
事前に誠には連絡済みだったので部屋の呼び鈴を鳴らし誠が出てくるのを待つ。
少し緊張しているのかやけに喉が渇き、手にじんわりと汗をかき始めていた。
「お待たせ~」と玄関越しに聞こえてくる声はいつもの誠の高い声ではなくごく普通の男の人の低い声だった。
松田も不思議に思ったのかお互い顔を見合わせ「え、ここって誠の部屋だよな?」「え? 誠さんの部屋でしょ!?」と聞こえない程度の小さい声でお互い驚きが隠せないでいた。
ガチャッと鍵の開く音。現れたのはいつもの可愛らしい誠ではなかった。髪の色は同じだが明らかに長さが短くなっている、と言うよりも男の人の髪型になっている誠がヒョコッと顔を出し「驚いた?」と少し照れながら笑っている。
「えっ!? 誠さん!?」
「おまっ、え、急にどうした!?」
私も松田も驚きを隠せない中、誠が玄関から出てきて更に驚いた。いつも可愛い服装だった誠とは打って変わって男物のデニムにVネックの黒いセーターを着ていた。
「もう女装やめた、する意味もなくなったし、イメチェンしてみたんだけど、どう?」
女装を止めたと言う誠の発言にハッとした。
昨日の様子の変だった松田と女装を止めた誠が綺麗に線で繋がったように納得ができた。
「凄く良いと思うわ! 女装している時も凄く可愛かったけど、男の姿も凄くカッコいいわね! 声もこれが誠さんの本来の声なの?」
「そうだよ、あの声出すの結構大変だったんだよね~喉痛めたら終わりだし」
「そうだったのね! あービックリした! ね、松田君、ま、松田君?」
反応がない松田を見ると明らかにムスッとした顔で怒っている。
「え……ど、どうしたの?」
聞いてもムスッとしている松田を見て、誠がお腹を抱えて「あー分かりやすすぎ!」とケラケラ笑い出した。
「あのね、真紀さん、大雅は多分俺の事を真紀さんかカッコいいって言ったことに対して焼き餅を焼いてるだけだと思うよ、だろ? 大雅」
ま、まさかそんな事で? と思ったがその通りだったらしく、「そうだよ、俺だってカッコいいって言われたことないのに……」と口を尖らせていた。
いや、今の状況はカッコいいと言うより可愛い……、でも可愛いと言ったら地雷を踏みそうなので言わずに心の中で可愛いー!と私は叫んだ。
「あ、そうそう、昨日の支払いなんだけど金額いくらだったのかしら?」
「あ~来てもらっといてあれだけど、昨日のはいいよ、俺からの二人へのお祝いって事で」
「えっ、それは駄目よ! そもそも私が誘ったんだから、じゃあこれ」
はい、と無理矢理誠の手の中に一万円札をねじ込んだが「要らない」と返された。
拗ねていた松田が「じゃあ遠慮なくカッコいい誠くんにお祝いされよう」と嫌味たっぷりに返事を返した。
「なっ、何言ってんのよ!」
「あ~本当大雅面白すぎ、俺が誰かと付き合ったらその時は大雅も祝えよ?」
「当たり前だろ? 俺と真紀で盛大に祝ってやるから」
笑いながらサンキューと言う誠の目が少し潤んでいたことに私は気づかないふりをした。多分同じように松田も気づかないフリをしていたと思う。
「じゃあお言葉に甘えて……、誠さん、また飲みに行きましょうね」
「もちろん、次は潰れんなよ?」
「いや、二人で行かせないから! 俺も行くからな?」
心の底から三人で笑い合えた気がした。
結局誠に昨日の分はご馳走になり誠のアパートを後にした。何となくだが松田と誠の雰囲気も良い方に変わった気がしたのはそっと胸の中にしまっておく。
"真紀さんの負け決定~! 私今日たまたま仕事休みだから真紀さんの仕事終わりに会社の近くで待ってるよ。仕事終わるの何時頃?"
負けて潰れた奴のためにこっちの会社まで来てもらうなんて駄目駄目駄目!
"いえ! 私がそちらに行きます! 仕事終わりに誠さんのアパートに寄ってもいいですか?"
"了解、じゃあお言葉に甘えて来てもらおうかな"
"では、仕事終わり次第連絡しますね"
今日も早く仕事を終わらせようと気合が入る。頭痛も薬を飲んだお陰で痛みが引いた。
今日は特に急ぎの仕事がなかったのでマーケティング部の殆どの社員が定時で仕事を終えた。もちろん松田もだ。
「松田君、お願いがあるんだけど良い?」
松田は座っていた椅子をクルッと私の方へ向ける。
「良いですよ、どうしました?」
「これから一緒に誠さんの所に行かない? あ、用事とかあるなら別にいいんだけど……」
「昨日一緒に行くって言ったでしょ? 今帰る支度しまさから待っててください」
そういうと松田は素早く自身の鞄に必要なものを入れ「お待たせしました」と一分も経たずに帰る支度を済ませた。
少し距離をとりながら会社を出る。まだ何となく周りに付き合っている事がバレるのが恥ずかしい私への松田の配慮だ。
電車に乗り誠の家は松田と同じ駅なので一緒に降りそこからは松田と距離なく隣を歩いた。車で行った方が早いから、と松田の好意に甘えて、一度松田のアパートに寄り車で送ってもらった。
事前に誠には連絡済みだったので部屋の呼び鈴を鳴らし誠が出てくるのを待つ。
少し緊張しているのかやけに喉が渇き、手にじんわりと汗をかき始めていた。
「お待たせ~」と玄関越しに聞こえてくる声はいつもの誠の高い声ではなくごく普通の男の人の低い声だった。
松田も不思議に思ったのかお互い顔を見合わせ「え、ここって誠の部屋だよな?」「え? 誠さんの部屋でしょ!?」と聞こえない程度の小さい声でお互い驚きが隠せないでいた。
ガチャッと鍵の開く音。現れたのはいつもの可愛らしい誠ではなかった。髪の色は同じだが明らかに長さが短くなっている、と言うよりも男の人の髪型になっている誠がヒョコッと顔を出し「驚いた?」と少し照れながら笑っている。
「えっ!? 誠さん!?」
「おまっ、え、急にどうした!?」
私も松田も驚きを隠せない中、誠が玄関から出てきて更に驚いた。いつも可愛い服装だった誠とは打って変わって男物のデニムにVネックの黒いセーターを着ていた。
「もう女装やめた、する意味もなくなったし、イメチェンしてみたんだけど、どう?」
女装を止めたと言う誠の発言にハッとした。
昨日の様子の変だった松田と女装を止めた誠が綺麗に線で繋がったように納得ができた。
「凄く良いと思うわ! 女装している時も凄く可愛かったけど、男の姿も凄くカッコいいわね! 声もこれが誠さんの本来の声なの?」
「そうだよ、あの声出すの結構大変だったんだよね~喉痛めたら終わりだし」
「そうだったのね! あービックリした! ね、松田君、ま、松田君?」
反応がない松田を見ると明らかにムスッとした顔で怒っている。
「え……ど、どうしたの?」
聞いてもムスッとしている松田を見て、誠がお腹を抱えて「あー分かりやすすぎ!」とケラケラ笑い出した。
「あのね、真紀さん、大雅は多分俺の事を真紀さんかカッコいいって言ったことに対して焼き餅を焼いてるだけだと思うよ、だろ? 大雅」
ま、まさかそんな事で? と思ったがその通りだったらしく、「そうだよ、俺だってカッコいいって言われたことないのに……」と口を尖らせていた。
いや、今の状況はカッコいいと言うより可愛い……、でも可愛いと言ったら地雷を踏みそうなので言わずに心の中で可愛いー!と私は叫んだ。
「あ、そうそう、昨日の支払いなんだけど金額いくらだったのかしら?」
「あ~来てもらっといてあれだけど、昨日のはいいよ、俺からの二人へのお祝いって事で」
「えっ、それは駄目よ! そもそも私が誘ったんだから、じゃあこれ」
はい、と無理矢理誠の手の中に一万円札をねじ込んだが「要らない」と返された。
拗ねていた松田が「じゃあ遠慮なくカッコいい誠くんにお祝いされよう」と嫌味たっぷりに返事を返した。
「なっ、何言ってんのよ!」
「あ~本当大雅面白すぎ、俺が誰かと付き合ったらその時は大雅も祝えよ?」
「当たり前だろ? 俺と真紀で盛大に祝ってやるから」
笑いながらサンキューと言う誠の目が少し潤んでいたことに私は気づかないふりをした。多分同じように松田も気づかないフリをしていたと思う。
「じゃあお言葉に甘えて……、誠さん、また飲みに行きましょうね」
「もちろん、次は潰れんなよ?」
「いや、二人で行かせないから! 俺も行くからな?」
心の底から三人で笑い合えた気がした。
結局誠に昨日の分はご馳走になり誠のアパートを後にした。何となくだが松田と誠の雰囲気も良い方に変わった気がしたのはそっと胸の中にしまっておく。
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