ここは会社なので求愛禁止です!

森本イチカ

文字の大きさ
上 下
64 / 70

ハッキリさせたほうがいいんです

しおりを挟む
 ハッと目を覚ますと松田のベットの上に私はいた。
 おかしい……、誠と居酒屋に居たはずなのに、まさか夢か? と思うが自分からお酒の匂いがしてやはり現実だと思い知らされる。

(まさか私潰れちゃった!?)

 バッとベットから降り、急いでリビングに向かうとソファーに一人座っている松田がいた。

「あ、あのっ、松田君っ! もしかして私……」

「あ、気がつきました? 真紀って一回寝ちゃうとなかなか起きないですよね」

 ハハハと笑いながらこちらに向かって歩いてきた松田はギュッと私を抱きしめて「好きだよ」と呟いた。なんだかいつもより元気のない松田に違和感を感じた。

「ごめんなさいっ、私誠さんと、その、飲んでて、まさか寝ちゃうなんてっ、あ! お金は!? 支払いはどうなってる!? まさか誠さんが払ってくれた……?」

「誠が払ってくれましたよ」

「あーやっちゃった……明日にでも直ぐに返さないとな」

「真紀なら会計の事凄く気にすると思うって誠と話してましたよ、明日俺と一緒に返しに行きましょう」

 更にグッと私を抱きしめる松田の腕の力が強くなる。もしかして、いや勘違いかも知れないが誠と何かあったのかも知れない。
 私は松田の背中に手を回し優しく何度も撫でた。



「あー頭痛い」

 今までの何十倍も辛い二日酔いで目が覚めた。ズキンズキンと割れるように頭が痛いのと、何か食べたら吐きそうなほどの気持ちの悪さが自分がどれだけお酒を飲んだのか思い知らされる。

 結局昨日はあのまま松田に何があったのか聞く事も出来ず次の日も仕事だったので家まで送ってもらったが明らかにいつもの松田ではない事は分かった。

「あ! 誠さんに連絡しないと!」

 誠宛にメールを送信する。

"昨日はいつの間にか潰れちゃってたみたいで本当にご迷惑をおかけしました。私の負けですよね……
支払いも誠さんが払ってくれたと松田君から聞きました。今日仕事が終わってから昨日の支払い分をお返ししたいんですけど、時間ありますか? なければポストとかに入れておきます!"

 返事が来ますように……と祈り鞄にスマホをしまった。
 ズキンズキンと頭が割れそうなほど痛く、耐えられないので痛み止めを飲み会社に向かう。
 いつも通り会社のドアを開けると松田が……居ない。

「え……」

 時間を確認してもいつもならもう来ているはずの松田が居ないので、もしかしてまた風邪!? と思い急いで松田のスマホに電話をかけると着信音が真後ろから聞こえて来る。
 まさか? と思い後ろに振り返るとそこには松田が立っており、「今日はほんの少し寝坊しちゃいました」とニコニコ笑っていた。
 彼の目の下に少し隈ができているのを私は見逃さなかった。

「……寝てないの?」

「ん? 寝ましたよ。ちょっと寝付けなくて、そしたら寝坊しちゃいましたよ」

「なら良いけど……、何か相談とかあったら言いなさいよ?」

「前にもそう言ってましたね、強いて言うなら真紀が一緒に寝てくれれば毎日ぐっすり寝れるかも」

 私を抱き寄せる松田につい自身も抱きつこうとしてしまった所でここは会社だと思い出し、グイッと松田を押し離した。

「ちょ! ここ会社だから禁止!!!」

 くくく、と笑いながらデスクに荷物を降ろす松田につられて私も笑えてくる。その後直ぐに出社してきた涼子に「あんたらなにそんなに笑ってんの?」と突っ込まれるほどだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

なし崩しの夜

春密まつり
恋愛
朝起きると栞は見知らぬベッドの上にいた。 さらに、隣には嫌いな男、悠介が眠っていた。 彼は昨晩、栞と抱き合ったと告げる。 信じられない、嘘だと責める栞に彼は不敵に微笑み、オフィスにも関わらず身体を求めてくる。 つい流されそうになるが、栞は覚悟を決めて彼を試すことにした。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ 慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。    その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは 仕事上でしか接点のない上司だった。 思っていることを口にするのが苦手 地味で大人しい司書 木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)      × 真面目で優しい千紗子の上司 知的で容姿端麗な課長 雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29) 胸を締め付ける切ない想いを 抱えているのはいったいどちらなのか——— 「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」 「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」 「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」 真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。 ********** ►Attention ※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです) ※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。 ※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~ その後

菱沼あゆ
恋愛
その後のみんなの日記です。

一夜限りのお相手は

栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月

処理中です...