ここは会社なので求愛禁止です!

森本イチカ

文字の大きさ
上 下
55 / 70

彼女の知らない俺の八年間の片想い 松田side

しおりを挟む
 そうと決めてからはもう勉強の日々だった。
 九月から大学受験なんて普通だったら遅すぎる。それでも担任の先生に頼み込んでやれるだけやってみようと応援してもらえた。
 アルバイトはすぐに辞めさせてもらい受験の為にもう勉強。お金がないので国立一本で受験に挑んだ。
 正直高校三年間の思い出は特にない。
毎日五時間と、最低限の睡眠時間。それ以外は勉強に明け暮れたおかげで奇跡的に国立大学への合格が決まった。ちなみに誠もだ。
 自分でもかなり驚いている。あとは同じ会社に入社するだけだ! と意気込み大学四年間を過ごした。
 大学に入学してからはまた同じ文房具屋で働かせてもらっていたが営業の人がちょこちょこ変わるくらいでやはり彼女が店に現れる事は無かった。

 とうとう就活シーズンになり、我一番にと彼女の働いている会社の求人は出ていないか隈なく探した。それでも求人は出ておらず、もう暫くしたら出るかも、と思い暫く待ってみたが結局求人が出る事はなく、俺の作戦は儚く終わった。

 それでもやっぱり諦められなくていつか中途採用とかで求人募集するかもしれない! と思いそれならキャリアアップしておいた方が都合が良いと考えマーケティングコンサル会社に入社した。

 そして社会人になって四年目でやっと彼女との再会を果たしたのだ。


「ね、本当に些細な出来事で俺は真紀に恋をして、今まで頑張ってこれたんだ」

 ベット横のサイドテーブルの引き出しから小さな箱を取り出して彼女に見せた。

「これ、見てくれますか?」

 あの時彼女からサンプルでもらった消しゴムを俺はお守りのように大事に大事にしまっておいたのだ。

「これ……、あぁ! 思い出した! 営業の人が休みでたまたま商品を持って行ったお店にいたバイト君にあげた気がする! それが松田君だったなんて……」

「随分時間が掛かっちゃったけど俺の初恋を叶えてくれてありがとう、真紀」

 彼女は瞳に涙を溜め鼻を真っ赤にして涙が溢れないように耐えている。

「っつ……、こちらこそちゃんと話してくれてありがとう」

「これで俺が真紀に一筋って事分かってくれました?」

 優しく抱き寄せそのままベットに彼女を押し倒した。溜まっていた涙がツーっと流れた。上から見る彼女もまた色っぽくでグッとくる。
 流れた彼女の涙を優しく親指で拭い、そのまま彼女の頭を描き抱いた。

「わかっ、んっ……ちょっ、ンンッ……」

 何度も何度も彼女の唇にキスを落とす。

「真紀、好きだよ」

「わ、私も……スキ」

「え……」

 ブワッと全身が身震いするほどの衝撃的破壊力。
初めて彼女の口からスキと言う言葉が聞けて嬉しさのあまり目の奥がジンと熱くなり涙が出そうになる。

「……恥ずかしいからあんまり見ないでよ」

 綺麗な白い肌を耳まで真っ赤に染め上げ、恥ずかしさのあまりか目まで潤んでいる。もうこんなの可愛すぎて耐えられるはずがない。俺の理性はブチッと切れて彼女に覆い被さり額に、頬に、耳に、鼻にそして唇にキスをした。

「可愛いからもっと見せてください」

 バッと両手で顔を隠す彼女の手をどかしジッと見つめる。

「もぉ、やだぁ……見ないでよ」

 あぁ、自分で俺を煽っている事に気づいていないんだろう。俺は彼女の恥じらっている姿を目に焼き付けるように抱いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

なし崩しの夜

春密まつり
恋愛
朝起きると栞は見知らぬベッドの上にいた。 さらに、隣には嫌いな男、悠介が眠っていた。 彼は昨晩、栞と抱き合ったと告げる。 信じられない、嘘だと責める栞に彼は不敵に微笑み、オフィスにも関わらず身体を求めてくる。 つい流されそうになるが、栞は覚悟を決めて彼を試すことにした。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ 慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。    その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは 仕事上でしか接点のない上司だった。 思っていることを口にするのが苦手 地味で大人しい司書 木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)      × 真面目で優しい千紗子の上司 知的で容姿端麗な課長 雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29) 胸を締め付ける切ない想いを 抱えているのはいったいどちらなのか——— 「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」 「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」 「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」 真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。 ********** ►Attention ※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです) ※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。 ※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~ その後

菱沼あゆ
恋愛
その後のみんなの日記です。

一夜限りのお相手は

栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月

処理中です...