ここは会社なので求愛禁止です!

森本イチカ

文字の大きさ
上 下
32 / 70

やっと手に入れた 松田side

しおりを挟む
 俺も大分仕事を覚えてきたので彼女と仕事を共にする機会が少なくなってきた。自分の成長は嬉しいがずっと新人のままでもよかったなぁとか思ってしまう。

 データの入力を済ませ時刻を確認すると十八時。
定時時刻は過ぎているが大分早めに仕事を切り上げられそうだ。
 チラッと彼女の方を見ると眉間に皺を寄せながらパソコンと格闘している。

 静かに席を立ち休憩室でミルクティーとブラックコーヒーを買い、自分のデスクに戻るとまだ彼女はパソコンと格闘していたので、ソッとミルクティーを彼女のデスクの上に置いた。

「え、松田君買ってきてくれたの? ありがとう」

 たまに素直な彼女が凄く可愛い。

「いいえ、そろそろ終わりそうですか?」

「ええ、あと二十分くらいかな」

「じゃあ外のコンビニで待ってますね」

「……はい」

 周りに聞こえないよう小声で約束をし、先に鞄を持ち会社を出た。
 会社近くのコンビニに入り雑誌を立ち読みしながら彼女を待つ。そんな時間も全く苦じゃない。

「松田君! お待たせ!」

「水野さんお疲れ様です」

「ちょっとついでに飲み物とか買ってきても良い?」

「もちろんいいですよ」

 コンビニのカゴを持ち彼女がスタスタと歩いて向かった先はお酒コーナー。缶チューハイを四本入れレジでお会計をし、コンビニを出た。

「今日の晩酌用ですか? 持ちますよ」

 彼女の手からレジ袋を取り右手で鞄と一緒に持つ。左手は彼女と後で手を繋ぐ為に開けておきたいと言う下心。

「そう……あのさ……」

「なんですか?」

「うちでご飯食べていかない? 簡単な物しか作る時間無いけど」

 今すぐに抱きしめたい衝動に駆られる。
 耳まで真っ赤にして、彼女が勇気を出して俺を誘ってくれたことに嬉しさが隠せない。

「行きます! めっちゃ嬉しいです!」

 その為にこのチューハイも買ってくれたのかと思うと嬉しくて堪らない。

 電車で三駅、徒歩五分のところにある彼女のアパートにすぐ着いてしまった。
 もちろん手を繋ぐ為に開けていた左手は電車を降りてからの五分しっかりと彼女の右手を握りしめて来た。

「じゃあちょっと待っててね」

「俺手伝いましょうか?」

「いいのいいの、本当に簡単な物しか作らないから」

「分かりました、じゃあ真紀が料理してる所を見てくつろいでますね」

「なっ! 普通にしてて下さい!」

 まだ慣れていないのだろう、真紀って名前で呼ぶとビクッと身体を反応させて驚いている。
 いつか自分も彼女に大雅って呼ばれたら……嬉しくて昇天するかもしれないな……

 換気扇のゴォーと言う音に混じれてトントンと野菜を切る音、ジューッと肉の焼ける音といい匂いが漂ってくる。
 彼女の方に視線向けるとその視線に気づいたのかムッとした顔でこちらをキッと睨んでくる。
 普段スーツの彼女がラフな部屋着に着替えてエプロンをしている姿が無性にそそる。
 今すぐここで彼女を抱きたい、一枚一枚丁寧に脱がして露わになった肌を感じたい……と思ってしまう自分。
 でもきっと彼女はそんな事は考えずにただ一緒にご飯を食べるだけだと思っているに違いない。
 煩悩退散、煩悩退散……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

なし崩しの夜

春密まつり
恋愛
朝起きると栞は見知らぬベッドの上にいた。 さらに、隣には嫌いな男、悠介が眠っていた。 彼は昨晩、栞と抱き合ったと告げる。 信じられない、嘘だと責める栞に彼は不敵に微笑み、オフィスにも関わらず身体を求めてくる。 つい流されそうになるが、栞は覚悟を決めて彼を試すことにした。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ 慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。    その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは 仕事上でしか接点のない上司だった。 思っていることを口にするのが苦手 地味で大人しい司書 木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)      × 真面目で優しい千紗子の上司 知的で容姿端麗な課長 雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29) 胸を締め付ける切ない想いを 抱えているのはいったいどちらなのか——— 「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」 「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」 「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」 真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。 ********** ►Attention ※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです) ※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。 ※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~ その後

菱沼あゆ
恋愛
その後のみんなの日記です。

一夜限りのお相手は

栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月

処理中です...