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泣きながらバーで
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駅の階段を駆け上り、ギリギリ電車に乗れた。
なるべく人の目にうつりたくなくドアの方を向き俯きながら立つ。ガラス窓に反映して映る自分の涙でグシャグシャな顔。「はぁ……」と溜息が留めなく出る。
自分の目の前の扉が開いた。やばい、と思い急いで顔をさらに俯かせ人から見えないよう避ける。
「……真紀?」
「……橅木」
偶然橅木に遭遇してしまった。
橅木は驚いた顔をしている。多分私の顔を見て驚いたのだろう……いい歳した女が泣いてグシャグシャの顔で電車に乗ってるいるのだ、そりゃ驚くだろう。
「真紀、飲み行こう」
「え?」
扉が閉まりますとアナウンスが鳴るギリギリ、橅木に手を引かれ電車を降りる。
「ちょっと、行かないわよ」
「もう降りちゃったんだし、俺の奢りだからよ」
「……じゃあ行こうかな」
正直一人で家に帰ってもただただ松田の事を思い出して一人で泣いていたかもしれない。いい気分転換になると思い橅木の後を着いていく。
「お前なんかあったんだろ?」
「っつ……やっぱり顔やばいよね」
「やばいってもんじゃねーよ、ボロボロじゃねーか」
「店着いたらすぐ化粧直すわ」
「おう、もう着くぞ」
着いた場所はよく橅木と涼子の三人でよく来ていたバーだ。入社したばかりの頃は同期の三人で仕事終わりによくここに寄って一日の出来事や愚痴などを吐いて家に帰った。
「あ~久しぶりだね」
「だろ? もう二、三年来てないんじゃないか?」
「涼子が子供産まれてからだからその位になるかもね」
扉を開くとカランカランと音が鳴る。変わっていない雰囲気に心が落ち着く。バーなのにカウンター以外に個室もあるので集まるわ時は個室をよく利用した。今日もたまたま個室が空いていたので橅木と二人で入る。
「あ、私一回お手洗い行ってくる」
「おう、良く顔見た方がいいぞ~」
ニヤニヤと私に笑顔を向ける橅木。いつもそうだ、誰かが落ち込んでいると必ず笑顔で励ましてくれる。そんな橅木の明るさに何度も救われているのは事実だ。
女子トイレに入り鏡を見て分かりきってはいたが自分の顔を見て愕然とする。目は真っ赤に充血し、マスカラもアイラインも落ちて目の下が黒く滲んでいる。泣いたのがバレバレだ。
直すにも直しようがない化粧にとりあえず落ちたアイラインとマスカラを拭き取りアイシャドウだけを塗り直す。ファンデーションもほぼ落ちていたがもう気にしない事にした。幸い店内は薄暗い照明なのでそこまで見えないだろうし、一緒に来ているのは橅木と言う安心感もある。
橅木の元へ戻るとメニューを見ながら「ウーン」と顎に手を当て悩んでいた。
「お待たせ」
「お、真っ黒いのが無くなったな!」
「大変お見苦しい物をお見せしました」
「ははは、サクッとなんか食べようぜ、腹減ってんだよなぁ」
お腹が空いている橅木は焼きおにぎり、海鮮サラダ、唐揚げとポテトの盛り合わせ、飲み物はビールを注文した。私は食欲が無かったので食べ物は特に頼まずスッキリしたい気分だったので白ワインを頼んだ。
「ほら、一個くらい食べろよ」
橅木はお皿に乗っていた焼きおにぎりの一つを小皿に移し私の目の前に置いた。
「……ありがとう」
久しぶりに食べた焼きおにぎりの味は昔から変わらず外側のカリッと焼かれた部分が香ばしく美味しい。
「美味しい……」
「本当ここの焼きおにぎりは美味いよな~」
特に何も聞き出される事もなく橅木は黙々と注文した料理を平げていく。お互い黙り込みお酒を飲む。既に橅木のジョッキは空になっていたので注文を取るため呼び出しボタンに手を伸ばす。
「橅木はまたビールでいい?」
「ん、ああ、ありがとう」
ビールと白ワインを注文し、また沈黙。
先に沈黙を破ったのは橅木だった。
「真紀さ……なんかあったなら言えよ? お前がそんなに泣くなんて相当だろ」
「あ~橅木にはなんでもお見通しか~」
「そりゃ何年一緒に働いてると思ってんだよ、八年だぞ、八年」
「だよね……まぁ失恋しちゃったんだよね私」
「っつえ!? お前好きな人いたの!?」
「いたと言うか……気づいた時に失恋決定した的な?」
自分で言っていて情けなくなる。涙がみるみるうちに溜まり瞬きをしたら零れ落ちそうだ。
なるべく人の目にうつりたくなくドアの方を向き俯きながら立つ。ガラス窓に反映して映る自分の涙でグシャグシャな顔。「はぁ……」と溜息が留めなく出る。
自分の目の前の扉が開いた。やばい、と思い急いで顔をさらに俯かせ人から見えないよう避ける。
「……真紀?」
「……橅木」
偶然橅木に遭遇してしまった。
橅木は驚いた顔をしている。多分私の顔を見て驚いたのだろう……いい歳した女が泣いてグシャグシャの顔で電車に乗ってるいるのだ、そりゃ驚くだろう。
「真紀、飲み行こう」
「え?」
扉が閉まりますとアナウンスが鳴るギリギリ、橅木に手を引かれ電車を降りる。
「ちょっと、行かないわよ」
「もう降りちゃったんだし、俺の奢りだからよ」
「……じゃあ行こうかな」
正直一人で家に帰ってもただただ松田の事を思い出して一人で泣いていたかもしれない。いい気分転換になると思い橅木の後を着いていく。
「お前なんかあったんだろ?」
「っつ……やっぱり顔やばいよね」
「やばいってもんじゃねーよ、ボロボロじゃねーか」
「店着いたらすぐ化粧直すわ」
「おう、もう着くぞ」
着いた場所はよく橅木と涼子の三人でよく来ていたバーだ。入社したばかりの頃は同期の三人で仕事終わりによくここに寄って一日の出来事や愚痴などを吐いて家に帰った。
「あ~久しぶりだね」
「だろ? もう二、三年来てないんじゃないか?」
「涼子が子供産まれてからだからその位になるかもね」
扉を開くとカランカランと音が鳴る。変わっていない雰囲気に心が落ち着く。バーなのにカウンター以外に個室もあるので集まるわ時は個室をよく利用した。今日もたまたま個室が空いていたので橅木と二人で入る。
「あ、私一回お手洗い行ってくる」
「おう、良く顔見た方がいいぞ~」
ニヤニヤと私に笑顔を向ける橅木。いつもそうだ、誰かが落ち込んでいると必ず笑顔で励ましてくれる。そんな橅木の明るさに何度も救われているのは事実だ。
女子トイレに入り鏡を見て分かりきってはいたが自分の顔を見て愕然とする。目は真っ赤に充血し、マスカラもアイラインも落ちて目の下が黒く滲んでいる。泣いたのがバレバレだ。
直すにも直しようがない化粧にとりあえず落ちたアイラインとマスカラを拭き取りアイシャドウだけを塗り直す。ファンデーションもほぼ落ちていたがもう気にしない事にした。幸い店内は薄暗い照明なのでそこまで見えないだろうし、一緒に来ているのは橅木と言う安心感もある。
橅木の元へ戻るとメニューを見ながら「ウーン」と顎に手を当て悩んでいた。
「お待たせ」
「お、真っ黒いのが無くなったな!」
「大変お見苦しい物をお見せしました」
「ははは、サクッとなんか食べようぜ、腹減ってんだよなぁ」
お腹が空いている橅木は焼きおにぎり、海鮮サラダ、唐揚げとポテトの盛り合わせ、飲み物はビールを注文した。私は食欲が無かったので食べ物は特に頼まずスッキリしたい気分だったので白ワインを頼んだ。
「ほら、一個くらい食べろよ」
橅木はお皿に乗っていた焼きおにぎりの一つを小皿に移し私の目の前に置いた。
「……ありがとう」
久しぶりに食べた焼きおにぎりの味は昔から変わらず外側のカリッと焼かれた部分が香ばしく美味しい。
「美味しい……」
「本当ここの焼きおにぎりは美味いよな~」
特に何も聞き出される事もなく橅木は黙々と注文した料理を平げていく。お互い黙り込みお酒を飲む。既に橅木のジョッキは空になっていたので注文を取るため呼び出しボタンに手を伸ばす。
「橅木はまたビールでいい?」
「ん、ああ、ありがとう」
ビールと白ワインを注文し、また沈黙。
先に沈黙を破ったのは橅木だった。
「真紀さ……なんかあったなら言えよ? お前がそんなに泣くなんて相当だろ」
「あ~橅木にはなんでもお見通しか~」
「そりゃ何年一緒に働いてると思ってんだよ、八年だぞ、八年」
「だよね……まぁ失恋しちゃったんだよね私」
「っつえ!? お前好きな人いたの!?」
「いたと言うか……気づいた時に失恋決定した的な?」
自分で言っていて情けなくなる。涙がみるみるうちに溜まり瞬きをしたら零れ落ちそうだ。
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