17 / 70
ブラックコーヒー
しおりを挟む
昨日の日曜は一人部屋に篭り土曜の事を思い出してはベットの上でジタバタ、思い出しては床でゴロゴロを繰り返しいつの間にか月曜の朝を迎えていた。長年の週間とは恐ろしく、いつもより遅く行こうと思っていても体は勝手に動き、いつも通りの時間に会社に着いてしまった。やはり松田は一番に出社して社内の整理整頓をしてくれていた。
「あ、水野さんおはようございます」
「お、おはようございます」
「昨日は何してたんですか?」
「へ、部屋でゴロゴロしてたわ」
「なーんだ、じゃあまたデートに誘えばよかったな」
「んな!! お詫びデートはもう終わったでしょ!」
段々近づいてくる松田のせいで息をするのも苦しい、酸素濃度がどんどん薄くなっているのだろうか、心臓がドキドキする。
(お、落ち着け……落ち着け私)
「……へ?」
コツンと私のおでこと松田のおでこがぶつかり合ってるのは気のせい? 目の前に松田の眼鏡が近距離で映し出される。
「ん~熱はないみたいですね、水野さん顔真っ赤ですよ?」
「ひゃっ……ね、熱なんて無いわよ! 暑いだけだからっ!!」
ドンっと松田を突き放し急いで自分の椅子に座る。
顔が赤くなってたなんて……あり得ない。ちょっと意識してしまっただけだ。そう、ちょっとだけ……
「ねえ、水野さん」
「な、何」
「こっち向いてください」
「嫌だ」
「照れてます?」
「照れてない!!!」
「んにゃっ」
両頬を捉えられグイッと松田の方に顔が向く。
この両手の犯人はもちろん松田だ。
「にゃ、にゃにふんのよ」
確実にタコみたいな不細工な顔になっているし、上手く喋れない。
「水野さん、好きだよ」
「……」
途端に足の爪先から頭のてっぺんまで電撃が走ったような感覚になる。
身体が、頭がビリビリする。
「はい、お終い」
松田がパッと両手を離した途端ドアが開き他の社員たちも出勤し始めた。
松田が触っていた両頬が燃えるように熱い。
好き……か……
私なんかのどこがいいのか理解しかねない。
松田の前で醜態だって晒してるのに……
そんなことを考えながら仕事をしていたからか小さなミス。パソコンが固まってしまった。
「あ~やっちゃったぁ」
「水野さんどうかしました?」
「ん、なんかどっか変なところ触ったのかパソコン固まっちゃって」
松田はスッと立ち上がり私の背中の真後ろに立つ。「ちょっと見ますよ」と言うとパソコンを弄り始めた。
(せ、背中……顔も近すぎるっ、これって漫画とかでよくある光景じゃない……)
まさか自分にもこんな漫画みたいな出来事が起きるとは思いもしていなかった。過剰に反応すると松田と思うツボだと思い、背中に感じる松田の熱や、喋るたびに耳や頬に当たる吐息を必死で堪え平然を装う。
「ん、これでエンター押せば大丈夫」
「あ、ありがとう」
「俺パソコンは強いんですよ、また何かあったら言ってくださいね」
「頼もしいわね」
「後でお礼下さいね」
「は!? あげないわよ!」
「可愛い」
「も、もう!!!」
ボソッと耳元で囁かれゾクゾクと背筋が震える。
ニヤニヤ笑いながら「残念」と松田は自分のデスクに戻った。
でもまあ、コーヒーくらいはご馳走しようか……
休憩時間に自動販売機に向かいブラックコーヒーを一本購入し、部署に戻る。
自分はブラックコーヒーは飲めない。苦すぎる。
松田のためにブラックコーヒーを買った。確かいつも飲んでいるのはブラックだったような気がする、曖昧な記憶だが……
「松田君、さっきのお礼にどうぞ」
スッと松田の目の前に缶コーヒーを置く。
「俺がブラック飲んでるの知っててくれたんですね、嬉しいな」
「なっ、たまたまよ! さぁ残りの仕事もさっさと終わらしちゃいましょう!」
「はい」
松田の喜んだ顔が頭から離れない。
コーヒーをあげただけなのに、あのクシャッとした笑顔がとても可愛い……そう思ってしまった。
「あ、水野さんおはようございます」
「お、おはようございます」
「昨日は何してたんですか?」
「へ、部屋でゴロゴロしてたわ」
「なーんだ、じゃあまたデートに誘えばよかったな」
「んな!! お詫びデートはもう終わったでしょ!」
段々近づいてくる松田のせいで息をするのも苦しい、酸素濃度がどんどん薄くなっているのだろうか、心臓がドキドキする。
(お、落ち着け……落ち着け私)
「……へ?」
コツンと私のおでこと松田のおでこがぶつかり合ってるのは気のせい? 目の前に松田の眼鏡が近距離で映し出される。
「ん~熱はないみたいですね、水野さん顔真っ赤ですよ?」
「ひゃっ……ね、熱なんて無いわよ! 暑いだけだからっ!!」
ドンっと松田を突き放し急いで自分の椅子に座る。
顔が赤くなってたなんて……あり得ない。ちょっと意識してしまっただけだ。そう、ちょっとだけ……
「ねえ、水野さん」
「な、何」
「こっち向いてください」
「嫌だ」
「照れてます?」
「照れてない!!!」
「んにゃっ」
両頬を捉えられグイッと松田の方に顔が向く。
この両手の犯人はもちろん松田だ。
「にゃ、にゃにふんのよ」
確実にタコみたいな不細工な顔になっているし、上手く喋れない。
「水野さん、好きだよ」
「……」
途端に足の爪先から頭のてっぺんまで電撃が走ったような感覚になる。
身体が、頭がビリビリする。
「はい、お終い」
松田がパッと両手を離した途端ドアが開き他の社員たちも出勤し始めた。
松田が触っていた両頬が燃えるように熱い。
好き……か……
私なんかのどこがいいのか理解しかねない。
松田の前で醜態だって晒してるのに……
そんなことを考えながら仕事をしていたからか小さなミス。パソコンが固まってしまった。
「あ~やっちゃったぁ」
「水野さんどうかしました?」
「ん、なんかどっか変なところ触ったのかパソコン固まっちゃって」
松田はスッと立ち上がり私の背中の真後ろに立つ。「ちょっと見ますよ」と言うとパソコンを弄り始めた。
(せ、背中……顔も近すぎるっ、これって漫画とかでよくある光景じゃない……)
まさか自分にもこんな漫画みたいな出来事が起きるとは思いもしていなかった。過剰に反応すると松田と思うツボだと思い、背中に感じる松田の熱や、喋るたびに耳や頬に当たる吐息を必死で堪え平然を装う。
「ん、これでエンター押せば大丈夫」
「あ、ありがとう」
「俺パソコンは強いんですよ、また何かあったら言ってくださいね」
「頼もしいわね」
「後でお礼下さいね」
「は!? あげないわよ!」
「可愛い」
「も、もう!!!」
ボソッと耳元で囁かれゾクゾクと背筋が震える。
ニヤニヤ笑いながら「残念」と松田は自分のデスクに戻った。
でもまあ、コーヒーくらいはご馳走しようか……
休憩時間に自動販売機に向かいブラックコーヒーを一本購入し、部署に戻る。
自分はブラックコーヒーは飲めない。苦すぎる。
松田のためにブラックコーヒーを買った。確かいつも飲んでいるのはブラックだったような気がする、曖昧な記憶だが……
「松田君、さっきのお礼にどうぞ」
スッと松田の目の前に缶コーヒーを置く。
「俺がブラック飲んでるの知っててくれたんですね、嬉しいな」
「なっ、たまたまよ! さぁ残りの仕事もさっさと終わらしちゃいましょう!」
「はい」
松田の喜んだ顔が頭から離れない。
コーヒーをあげただけなのに、あのクシャッとした笑顔がとても可愛い……そう思ってしまった。
0
お気に入りに追加
103
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
なし崩しの夜
春密まつり
恋愛
朝起きると栞は見知らぬベッドの上にいた。
さらに、隣には嫌いな男、悠介が眠っていた。
彼は昨晩、栞と抱き合ったと告げる。
信じられない、嘘だと責める栞に彼は不敵に微笑み、オフィスにも関わらず身体を求めてくる。
つい流されそうになるが、栞は覚悟を決めて彼を試すことにした。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ
慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。
その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは
仕事上でしか接点のない上司だった。
思っていることを口にするのが苦手
地味で大人しい司書
木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)
×
真面目で優しい千紗子の上司
知的で容姿端麗な課長
雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29)
胸を締め付ける切ない想いを
抱えているのはいったいどちらなのか———
「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」
「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」
「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」
真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。
**********
►Attention
※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです)
※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。
※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
一夜限りのお相手は
栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる