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覚えてない
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「手伝ってもらったおかげで早く終わったわ、ありがとう」
「何のための部下なんですか、こき使って下さいよ」
「何言ってんだか、そうだ! お昼のお金返すわね」
急いで鞄から財布を取り出しお金を出そうとしたが、急にグイッと腕を引き寄せられ体制を崩してしまい松田にドサっともたれかかってしまった。
松田は背も高く見た目はスラッとしているくせに意外ともたれかかってしまった胸はワイシャツの上からでも分かるほど程よくついた筋肉でガッチリした体型なのが分かった。
「なっ……松田君っ……」
「お金はいらないから抱きしめてもいいですか?」
「な、何言ってんのよ!」
「ってか抱きしめますわ」
「ひゃっ」
思わず変な声が出てしまい恥ずかしくなり顔を伏せる。
いつの間にか松田の両腕の中にスッポリ包み込まれてしまっている自分。
その状況も恥ずかしくて松田の顔が見れない。
「水野さんって小さくて可愛い、スッポリ俺の腕の中におさまっちゃいますね」
「……」
松田が私を抱きしめる力が少し強まった。
「俺が水野さんの事好きって言ったこと覚えてます?」
「お、覚えてない」
俯いていた顔を松田の手によって上げられた。
私はどうも松田の目が苦手だ。
いや、苦手というか眼鏡の奥にある真っ黒な瞳に吸い込まれそうになる。
下から見上げる松田は耳まで真っ赤にし照れているのか少しはにかんで私を優しい目で見ている。
「水野さん、好きです」
「……ありがとう」
「付き合ってくれますか?」
「……それは……無理」
年下の、しかも会社の後輩と付き合うなんてやっぱり考えられない。
確かに松田のこの表情にはドキッとした。
でもそれはドキッとしただけで、好きという感情とは別物だと思う。
と言うより好きと言う感情が思い出せない。
「返事早……でも俺まだまだ諦めませんよ?」
「お好きにどうぞ……もう離してっ、んんっ……」
まただ。
一瞬で松田に唇を奪われた。
告白を断ったばかりの女にすることなのか!?
けどそのキスはけして力尽くではなく優しくそして激しく求られるように矛盾したキス。
「んんっ……」
ゆっくりと松田の唇が離れていく。
頭がぼーっとしているが少し唇がジンジンと痺れているのは明確に分かった。
「諦めないからね?」
「っつ!! もう帰る!!!」
グイッと松田の腕から抜け出し、鞄を急いで手に取り会社を出ようと足早に歩く。
私のカツカツとヒールの音とコツコツともう一つの靴の音。
「なんで隣歩いてんのよ」
「だってこんな夜に女性一人とか危ないでしょ?」
「いつも一人で帰ってるから」
「これからは俺が送りますよ」
「結構です」
私の歩幅に合わせて横にピッタリついてくる松田。
しかもさりげなく車道側を歩いてくれている。
恋愛経験少ない私でも分かる。
松田は優しい。
それは女を落とす為なのか、素なのかは分からないが。
結局同じ電車に乗ってしまった。
満員とまではいかないが席は空いていなかったので自分の降りる駅の方のドアのそばで立つ。
松田もいるが特に話すこともないので最寄駅に着くまでの間お互い無言で電車に揺られていた。
「じゃあ着いたから、また明日」
一言別れの挨拶をし電車を降りる。
何故かまだ松田は私の隣にいた。
「え……ここの駅なの?」
「違いますよ、改札まで送ろうかなぁと」
「いや、いいから! 早く乗りなさい!」
「いいからいいからっ」
「ちょっと!!」
スタスタと改札口まで歩き始める松田の後を急いで追う。
なんだか終始松田のペースに巻き込まれている気がする。
「じゃあ水野さん、気をつけてくださいね」
「……ありがとう、じゃあまた明日」
「また明日」
そう言いながら松田は私の頭を優しく撫でた。
「んなっ!! 帰る!!!!」
ブンっと頭を振り松田の手を跳ね除け改札を出た。
でもなんとなく気になって振り返ると松田はまだ同じ場所で立って私を見送っていた。
それはそれはとても優しい顔で。
その笑顔を振り切るように私は早歩きでアパートまで帰った。
「何のための部下なんですか、こき使って下さいよ」
「何言ってんだか、そうだ! お昼のお金返すわね」
急いで鞄から財布を取り出しお金を出そうとしたが、急にグイッと腕を引き寄せられ体制を崩してしまい松田にドサっともたれかかってしまった。
松田は背も高く見た目はスラッとしているくせに意外ともたれかかってしまった胸はワイシャツの上からでも分かるほど程よくついた筋肉でガッチリした体型なのが分かった。
「なっ……松田君っ……」
「お金はいらないから抱きしめてもいいですか?」
「な、何言ってんのよ!」
「ってか抱きしめますわ」
「ひゃっ」
思わず変な声が出てしまい恥ずかしくなり顔を伏せる。
いつの間にか松田の両腕の中にスッポリ包み込まれてしまっている自分。
その状況も恥ずかしくて松田の顔が見れない。
「水野さんって小さくて可愛い、スッポリ俺の腕の中におさまっちゃいますね」
「……」
松田が私を抱きしめる力が少し強まった。
「俺が水野さんの事好きって言ったこと覚えてます?」
「お、覚えてない」
俯いていた顔を松田の手によって上げられた。
私はどうも松田の目が苦手だ。
いや、苦手というか眼鏡の奥にある真っ黒な瞳に吸い込まれそうになる。
下から見上げる松田は耳まで真っ赤にし照れているのか少しはにかんで私を優しい目で見ている。
「水野さん、好きです」
「……ありがとう」
「付き合ってくれますか?」
「……それは……無理」
年下の、しかも会社の後輩と付き合うなんてやっぱり考えられない。
確かに松田のこの表情にはドキッとした。
でもそれはドキッとしただけで、好きという感情とは別物だと思う。
と言うより好きと言う感情が思い出せない。
「返事早……でも俺まだまだ諦めませんよ?」
「お好きにどうぞ……もう離してっ、んんっ……」
まただ。
一瞬で松田に唇を奪われた。
告白を断ったばかりの女にすることなのか!?
けどそのキスはけして力尽くではなく優しくそして激しく求られるように矛盾したキス。
「んんっ……」
ゆっくりと松田の唇が離れていく。
頭がぼーっとしているが少し唇がジンジンと痺れているのは明確に分かった。
「諦めないからね?」
「っつ!! もう帰る!!!」
グイッと松田の腕から抜け出し、鞄を急いで手に取り会社を出ようと足早に歩く。
私のカツカツとヒールの音とコツコツともう一つの靴の音。
「なんで隣歩いてんのよ」
「だってこんな夜に女性一人とか危ないでしょ?」
「いつも一人で帰ってるから」
「これからは俺が送りますよ」
「結構です」
私の歩幅に合わせて横にピッタリついてくる松田。
しかもさりげなく車道側を歩いてくれている。
恋愛経験少ない私でも分かる。
松田は優しい。
それは女を落とす為なのか、素なのかは分からないが。
結局同じ電車に乗ってしまった。
満員とまではいかないが席は空いていなかったので自分の降りる駅の方のドアのそばで立つ。
松田もいるが特に話すこともないので最寄駅に着くまでの間お互い無言で電車に揺られていた。
「じゃあ着いたから、また明日」
一言別れの挨拶をし電車を降りる。
何故かまだ松田は私の隣にいた。
「え……ここの駅なの?」
「違いますよ、改札まで送ろうかなぁと」
「いや、いいから! 早く乗りなさい!」
「いいからいいからっ」
「ちょっと!!」
スタスタと改札口まで歩き始める松田の後を急いで追う。
なんだか終始松田のペースに巻き込まれている気がする。
「じゃあ水野さん、気をつけてくださいね」
「……ありがとう、じゃあまた明日」
「また明日」
そう言いながら松田は私の頭を優しく撫でた。
「んなっ!! 帰る!!!!」
ブンっと頭を振り松田の手を跳ね除け改札を出た。
でもなんとなく気になって振り返ると松田はまだ同じ場所で立って私を見送っていた。
それはそれはとても優しい顔で。
その笑顔を振り切るように私は早歩きでアパートまで帰った。
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