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どうしたらいいんだ
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「あぁぁ…どうしたらいいんだー…」
母屋の廊下を歩きながらクライスターは頭を抱える。ヤスミがなぜ魔族の性質について知っているのか。だが、疑問に思っていてもヤスミが告げたことは事実であった。
「そうだよチクショー…俺は…魔族は…」
だが、はっと気付くと頭を振る。今はそれどころではない。目的の部屋の前にくると、大きく深呼吸をする。そこはアキタケの部屋だった。
「邪魔するぞー…」
こそっと呟きながら障子を開ける。部屋の主のアキタケは先ほど出かけて行ったのだ。
「うわー…らしー…」
そこは、生活感はあるがキチンと整理されていた。カイルの部屋とは大違いだ。カイルの部屋は混沌と言う言葉がぴたりと当て嵌まる。そのくせ、必要なものはあっさりと出てくる。あそこも実は、異次元につながっているのではないかと密かに思うクライスターだった。
「…っと。感心している場合じゃねぇって」
慌ててクライスターは部屋に入ると、押し入れや引き出しなどを手当たり次第片っ端から開けていく。なぜこんなことをしているのかというと。
「…くっそー…絶対ここに結界の要があると思ったんだけどなー…」
そう呟きながら探す手は休めない。とっくにカイルの部屋やヤスミの部屋は探してみたのだが、全くといってそれらしいものが出てこなかった。アキタケはカイルやヤスミと違って、滅多に留守にしないので、今日まで捜索できなかったのだ。
「早く探そう」
ガサゴソと色んな所を探すが、なぜか和紙がたくさん出てくるのが妙なだけで、整理整頓された部屋ではすぐに捜索に行き詰まり、うーんと腕を組んで悩んでしまった。
「くっそう…早くこんなとこから出ていかねぇと…」
ところが。
「いかないとなんやねん」
「!」
誰も居ないはずの背後から聞こえてきた声に、クライスターは慌てて振り返った。
「アキタケ?!」
そこにはアキタケが立っていた。
「ななななんで?! なんでいるんだよっ?!」
すると、アキタケはキュッと眉を寄せた。
「なんでもくそも。ここは俺の部屋だが?」
「そうじゃなくて! お前仕事って…!」
怒鳴るクライスターにアキタケはあぁと言いつつ、さっさと作務衣に着替えている。
「キャンセルになったんや。ちょうどえぇわ思うて、せなあかんことをするために着替えにきたんや」
クライスターは忙しなく視線をあちこちに彷徨わせると、慌てて部屋を出ていこうとする。だが、アキタケが見逃すわけもなく、あっさりと首根っこをひっ捕まえられる。
「ぐへ!」
「洗濯は?」
「とっくに終わっているよ!」
自棄くそ気味に叫ぶクライスターと対照的に、アキタケは淡々としていた。
「さよか」
「ちくしょー! 離せー!」
「ちょうどえぇ。手伝え」
アキタケはそう言うとそのままクライスターの首根っこをムンズと捕まえたまま、暴れるクライスターをものともせずにズルズルと引きずりながら歩き出す。
「く…! 苦しいじゃねぇかっ…!」
「うるさい」
アキタケはクライスターの訴えをにべもなく退ける。
「ひ、人でなしー!」
「お前悪魔やろ。人やないからかまへんな」
「そう言う問題かっ?!」
「細かいことは気にするな」
「なんでだよー!」
クライスターの抗議も空しく、そのままクライスターはアキタケに首根っこを掴まれたまま連行されてしまった。
「で? …なにコレ?」
クライスターは、自分がさせられた格好を見下ろして呆然と呟く。アキタケはさらに頭にバンダナを巻き、軍手をはめて作業を始めている。
「作業着」
「いや、だから…」
クライスターは思わず、がっくりとする。
「べつにさっきの服を汚してもかまわんが、そないなると洗濯するんはお前やろうが。土汚れを落とすんは大変やぞ?」
アキタケはそれだけを言うとさっさと作業をはじめた。クライスターは多分無駄だろうなーと思いつつも、眉間を揉みながら疑問を呈する。
「や…だからさ…。どこの世界に魔族に農作業を手伝わせるやつが居るよ?」
「ここにいる」
クライスターの呆れたような疑問にもアキタケは淡々と答えると、たった今、収穫したばかりの大根を呆然と突っ立ったままのクライスターへヒョイと渡す。
作業着を着せられ連れて来られた先は神社の裏手で、その一面に家庭菜園というには立派すぎる畑が広がっていたのだ。クライスターは事態についていけず呆然としながらも、アキタケに渡される大根をただ受け取っていたがハッと気付く。
「…! 待てっ! まさか、今まで食卓に出ていた野菜は…!」
「俺の手作りや。漬けもんもな」
何か文句あるのか?と言いながらもアキタケは収穫の手を休めない。クライスターは驚きに口をパクパクとしている。
「な、なんで?」
「まぁ、下手なもん食いたないし。一々、下まで買いに行くのが面倒やしな。それやったら、経済的にも気分的にもこれが一番や」
買いに行くのが面倒なら、畑を作る方がもっと面倒だと思うが…とクライスターは考えてしまった。
「そんな理由でかよ…」
疲れた声で聞くクライスターを後目に、アキタケはテキパキと次に収穫すべき野菜を選別しはじめていた。
「まぁ、ヤスミのためでもあるんやけどな」
「ヤスミ?」
ヤスミの名前が出てきたことに驚く。
「まぁ、あいつの力に関することやがな」
「全視能力のことか?」
クライスターが口にした言葉に、アキタケはピタッと手を止め、片眉をあげてクライスターを見る。
「なんで知ってるんや」
「この間、そんな話をした…お前たちと兄弟じゃないってことも」
他にもエライこと宣言されたがなーと心の中で呟いていると、アキタケはフムと顎に手を当てた。
「ふーん…ヤスミも気に入ったか」
「なんだよ」
思わずクライスターは、不機嫌さを隠しきれずに質問を返した。
「ヤスミはな。肉や魚が食えへんのや」
「は?」
アキタケの唐突な切り出しに、クライスターは間抜けな返事をする。
「肉や魚を食うと、いらんことが混ざって『視えて』しまうらしいわ」
「あぁ…なるほどな。全てが『視えて』しまうもんな。意志を持っていたものが、体に取り込まれてしまうから視点が混乱してしまうのか…」
「そうや。せやから、俺やカイルは肉を食うてもかまわんが、ヤスミに合わせて精進料理にしとるんや。まぁ、精進料理の方がこういう仕事の場合えぇことはえぇねんけどな。せやけど、市販の野菜では美味くないことが多いさかい、こうやって手作りしとるんや」
「はぁ…お前も妹バカなんだな」
「妹?」
訝しげに首を傾げながら問うてくるなアキタケに、クライスターは、は?と返す。
「いや、今、妹って…」
「あぁ? だって、ヤスミはお前らの妹なんだろ? 親が違うからって言ったって、あれほどお前らの妹にふさわしいやつなんていないだろ?」
なんか俺、間違ってるか?と問いかけるクラスターをアキタケはジッと見つめてきた。あまりにジッと見つめられるので、その視線に居心地が悪くなってくるとふっとアキタケが笑う。
「…気に入るわけや」
「何だよ…って…そういや、お前ら兄弟二人と、ヤスミとナカニシは言葉遣いが微妙に違うよな」
ふと、日頃から疑問に思っていたことをクライスターは口にした。アキタケはあぁと肩を竦める。
「俺とカイルは大阪の大学に行ってたさかいにな」
ナカニシは仕事以外で京都から出たことないしなとアキタケに言われたが、クライスターにはさっぱり意味が判らない。首を捻っているとアキタケが苦笑していた。
「おんなじ関西弁や言うても土地によって微妙に違うんや」
「へえー。で、大学ではやっぱり宗教系に進んだのか?」
「いんや? おれはセイブツガク。カイルはキソブツリ」
………。
「え?」
クライスターは聞き慣れない単語に思わず聞き返す。
「せやから俺が生物学で、カイルは基礎物理学に進んだんや」
「はいっ?!」
白衣を着た陰陽師…実験をする陰陽師…はたまた…だが、クライスターの想像力はそこまでで限界だった。
「解剖をするたんびにお経を上げろ言われて閉口したわ」
世間一般では神社も寺もおんなじや思うてるんやなぁと、なんでもないようにアキタケは言っている。
「…ちょっと待て…なんでまた…」
クライスターが混乱している様子が読み取れたのか、アキタケは苦笑している。
「俺らは科学では証明でけへんものを知ってる。せやけど世の中はそれだけではできてへん。俺達がちぃこい頃から知っている世界は世の中では当たり前やないやろ?」
「や、まぁそうだけど…」
だからってなんでそっち?と疲れたように聞くクライスターにアキタケは笑う。
「知らない世界を見たかったんや」
「知らない…?」
「そう…俺達は、自分と言う人間のアイデンティティを知りたかったんや」
アキタケはそう言うと、ネギを選別していた手をとめて空を見上げる。
「世の中はおれたちの理屈で回ってるんやないってことをな。でも結局は根本は一緒や」
「根本?」
「そう、根本。科学の世界でもこっちの世界でも結局は自然の理は覆されへん」
「自然の理って?」
首をひねるカイルにアキタケは少し微笑んだ。
「つまりな、呪いなりなんなりを発動させようと思うたら、呪文を唱える手順がいるやろ? それもなすべきことに見合った組み合わせで。科学も一緒や。手順が一つでも狂うと思うた成果はあげられへん」
「そりゃあそうだけどよ」
「結局は、わからんけどそうなるいうのんは一緒なんや。相反するようで相反してへん。生きている限り自然の理は絶対やねん。お前ら魔の者かってできんことは、どうやったってできへんのやろう? こっちで何かを成すときに自身のキャパにあった契約しかでけんのやろ? ちゃうか?」
「アキタケ…」
言葉に詰まるクライスターをアキタケはじっと見つめる。
「…お前、カイルをどう思う?」
「は?」
「カイルと戦って、あいつをどう思た?」
急にカイルの名を出して真剣な面持ちをするアキタケの視線に、クライスターは考え込んだ。
「…正直、恐い。普通お前たち人間はなにかこちらに干渉しようとするならば、呪文なり道具なりの媒介を通さなきゃできねぇ。なのにあいつはいとも簡単に干渉してくる…それこそ息をするように…人間という器のキャパを超えている…と思う」
クライスターのその答えにアキタケは頷いた。
「そうや。せやけど俺にはカイルのような能力がない」
「え? そうなのかよ?」
「そうや…俺が、あいつの能力の半分でも持って生まれたったら良かったと、そう思うときもある」
アキタケのその言葉にクライスターは目を丸くした後、呆れたようなため息を吐く。
「たらればかよ。人間ってホントそういう自虐的なこと好きだね」
「仕方ないやろ。俺はあいつの兄やさかいにな。重荷の半分でも引き受けてやれるもんならやりたいんや。まぁ、言うてもしょうがないことなんやけどな」
「兄貴だからってなんだっつーの。バカじゃねーの?」
「そうやな。その通りや。せやけどそう割り切れへんのも人間やろ?」
そう切り返されて、クライスターは肩を竦める。
「それもそうだな」
「ま、一応俺も人にはでけへんことがちょっとできるけど、自慢できることやないし」
「…どんなこと?」
そういえば、クライスターはアキタケの能力を知らない。興味津々で聞き返したが、アキタケはまた肩を竦めるだけ。
「勿体つけんなよ」
「ホンマにたいしたことないさかいにな」
「嘘つけ」
うさん臭そうにクライスターが返すのを聞いて、アキタケは横目でチロリと見る。
「なんでや?」
「お前らみたいなので、そんな謙虚なやつに出会ったことないぞ」
いっつも尊大でごう慢で吐き気のする奴らばっかりだと、吐き捨てるようにいうクライスターにアキタケはうんうんと頷く。
「確かにそういうやつは多いな。自分が大したことがないとわかってへんのやろうな」
「大したことないって…」
「大したことないやろうが。俺は野菜ならこうやって作れるが、米までは作られへん。小麦かてや。せやかて、それらを食わんと生きてかれへんやろ」
そう言いながらアキタケは次にカボチャの重さを比較しはじめる。
「や、まぁそうだけどさ」
「生きて行くために自分で全てのことを全て自分でこなせるか? こなせれへんやろ。どんなに素晴らしい能力があろうとも、自分だけではできへん部分はたくさんあって、その部分を他人によって補ってもろとる事に違いはないやろ。反対に他人がでけへん部分で、俺らができることであればすればえぇ。他人と違う自分はえらい、すごいんやなんて思うてたら、自分で自分の首を絞めるだけや」
淡々と話すアキタケをクライスターは、信じられないものを見るようにまじまじと見つめ返す。アキタケはその視線に気付き眉を顰めた。
「なんやねんな」
「だって…」
「壊すのなんか簡単やろ。殺すのかてや」
「!」
なんでもないことのようにアキタケにクライスターはゾッとする。その感情が表情に表れていたのか、アキタケはクライスターを見ておかしそうに笑う。
「お前魔族のくせに何を怖がっとるねん。お前らは快楽のためだけに平気で殺すくせに」
「あぁ…そうさ。だけど…お前…」
「人間のくせにとでも? 人間やからこそ理不尽なことをたくさん知ってるんや」
クライスターは軽く混乱する。
「でも…」
「まぁ、多分人によって不幸と幸福の解釈がちゃうんやろうな」
「はい?」
突然出てきた不幸だの幸福だのの言葉にクライスターはさらに面食らう。
「人によって、理不尽やとかそんなことは解釈がちゃうって言うてんのや。別に俺ら兄弟は今の状態を不幸だとも、理不尽やとも思てないっつーこっちゃ」
「は…あ…あぁ、そう?」
「そう。まぁ、こういう生い立ちや状況やなんかはしゃーないし、それならそれで力技で持ち込んで幸せになればえぇだけやし。ぐだぐだ愚痴を言うてても仕方ないやろ? そんな暇があったら幸せを掴むために努力すればいいだけや」
………。
アキタケの話にクライスターはポカンと口を開ける。なんてポジティブシンキング。
「お前ら…本当に兄弟だよな」
クライスターは思わずそう呟くと、その場にヘナヘナと座り込んでしまった。
「そうか?」
「そうだよっ…! ヤスミも似たようなこと言いやがって」
「ヤスミが?」
「おうよっ! お前とカイルの幸せは自分の幸せ、せやから絶対に俺をカイルのものにさせるためには手段を選ばないんだってよっ! お前らマイペースにも程があるだろーが! 幸せになるためになんで力技とかって発想が出るよっ?!」
自棄くそ気味に叫ぶクライスターにアキタケはなるほどと呟く。
「何がなるほどだよっ!」
「それもそうかと思うてな」
「はい?!」
いやぁ、ヤスミはえぇこと言いよるなぁと感心している。クライスターは嫌な予感がしてきた。
「…何が? なぁ? 何が?」
「家族の幸せは、皆の幸せやろ? つーことはや、カイルの幸せのためには、カイルだけやなくって、俺も努力せないかんいうことやんな?」
「なんでやねん!」
思わずエセ関西弁が飛び出すクライスターだが、アキタケは全く意に介さず、うーんと腕を組んで悩んでいる。
「せやけど、俺ができることはあんまりないしなぁ…」
「そんなこと真剣に考えるなぁっ! つか、しなくってもいいんだよ!」
地面にのめり込みそうになりながらも、必死で抗議する。アキタケはそんなクラスターをチロリと横目で見て呟く。
「…俺の知っている限りの術でなんとかならんかな」
「?! やめろっつーの!」
「しかし、その首輪と結界と、他の術の組み合わせの相性がわからんしなぁ」
その物騒な内容にクライスターはざっと顔を青ざめさせる。
「なんだと?! どういう意味だっ?!」
「その首輪と結界の組み合わせは親父達が生み出したものやさかい、俺らには仕組みが判らへんのやって言うたやろ?」
「この首輪もかよっ!」
「そうや…ム…ちょうどえぇな」
そうやそうやと何か一人で納得しはじめるアキタケに、クライスターは警戒をする。
「…何がちょうどいいんだよ…?」
「俺も、この結界の仕組みが知りたかったさかいに、付き合ってんか」
「バカヤロウ! 誰が付き合うかよっ!」
「なんでや。みんなの幸せのためにちょっとぐらいえぇやないか」
いかにも心外そうに言うアキタケに、クライスターは勢い良く立ち上がり怒鳴った。
「それを実験して、俺に害がないと言えるのかっ?!」
怒鳴りつけた勢いで、ハァハァと肩で息をしているクライスターを見て、アキタケはちょっとだけ考えた。
「…言えないな」
「言えないんだったらするなーっ!」
「しかし、実験してみないことにはわからんしな」
研究室では失敗は成功の元がスローガンやったしと言うアキタケに、陰陽師と科学者が融合するとこんなやつになるのかとクライスターは頭を抱える。
「お前っ…! お前なっ! 俺はモルモットと違うんだぞ?!」
「そうか…そこまでいうんやったら仕方がないな…」
そう言うアキタケにクライスターがほっとしたのも束の間。
「黙ってやろう」
「! いい加減にしやがれー!」
クライスターは迷いなくその場から走り去った。
その後帰ってきたカイルに、憤慨しつつヤスミの話とアキタケの話をした。ヤスミが従姉妹だと話したことに驚いていたが直ぐさまパァァッと顔を輝かし『そらぁ好都合や! 兄弟に祝福されたうえに協力してくれるやなんて俺様大感激や!』とかなんとかぬかしたので、とりあえず拳骨を一発お見舞いしておいた。
母屋の廊下を歩きながらクライスターは頭を抱える。ヤスミがなぜ魔族の性質について知っているのか。だが、疑問に思っていてもヤスミが告げたことは事実であった。
「そうだよチクショー…俺は…魔族は…」
だが、はっと気付くと頭を振る。今はそれどころではない。目的の部屋の前にくると、大きく深呼吸をする。そこはアキタケの部屋だった。
「邪魔するぞー…」
こそっと呟きながら障子を開ける。部屋の主のアキタケは先ほど出かけて行ったのだ。
「うわー…らしー…」
そこは、生活感はあるがキチンと整理されていた。カイルの部屋とは大違いだ。カイルの部屋は混沌と言う言葉がぴたりと当て嵌まる。そのくせ、必要なものはあっさりと出てくる。あそこも実は、異次元につながっているのではないかと密かに思うクライスターだった。
「…っと。感心している場合じゃねぇって」
慌ててクライスターは部屋に入ると、押し入れや引き出しなどを手当たり次第片っ端から開けていく。なぜこんなことをしているのかというと。
「…くっそー…絶対ここに結界の要があると思ったんだけどなー…」
そう呟きながら探す手は休めない。とっくにカイルの部屋やヤスミの部屋は探してみたのだが、全くといってそれらしいものが出てこなかった。アキタケはカイルやヤスミと違って、滅多に留守にしないので、今日まで捜索できなかったのだ。
「早く探そう」
ガサゴソと色んな所を探すが、なぜか和紙がたくさん出てくるのが妙なだけで、整理整頓された部屋ではすぐに捜索に行き詰まり、うーんと腕を組んで悩んでしまった。
「くっそう…早くこんなとこから出ていかねぇと…」
ところが。
「いかないとなんやねん」
「!」
誰も居ないはずの背後から聞こえてきた声に、クライスターは慌てて振り返った。
「アキタケ?!」
そこにはアキタケが立っていた。
「ななななんで?! なんでいるんだよっ?!」
すると、アキタケはキュッと眉を寄せた。
「なんでもくそも。ここは俺の部屋だが?」
「そうじゃなくて! お前仕事って…!」
怒鳴るクライスターにアキタケはあぁと言いつつ、さっさと作務衣に着替えている。
「キャンセルになったんや。ちょうどえぇわ思うて、せなあかんことをするために着替えにきたんや」
クライスターは忙しなく視線をあちこちに彷徨わせると、慌てて部屋を出ていこうとする。だが、アキタケが見逃すわけもなく、あっさりと首根っこをひっ捕まえられる。
「ぐへ!」
「洗濯は?」
「とっくに終わっているよ!」
自棄くそ気味に叫ぶクライスターと対照的に、アキタケは淡々としていた。
「さよか」
「ちくしょー! 離せー!」
「ちょうどえぇ。手伝え」
アキタケはそう言うとそのままクライスターの首根っこをムンズと捕まえたまま、暴れるクライスターをものともせずにズルズルと引きずりながら歩き出す。
「く…! 苦しいじゃねぇかっ…!」
「うるさい」
アキタケはクライスターの訴えをにべもなく退ける。
「ひ、人でなしー!」
「お前悪魔やろ。人やないからかまへんな」
「そう言う問題かっ?!」
「細かいことは気にするな」
「なんでだよー!」
クライスターの抗議も空しく、そのままクライスターはアキタケに首根っこを掴まれたまま連行されてしまった。
「で? …なにコレ?」
クライスターは、自分がさせられた格好を見下ろして呆然と呟く。アキタケはさらに頭にバンダナを巻き、軍手をはめて作業を始めている。
「作業着」
「いや、だから…」
クライスターは思わず、がっくりとする。
「べつにさっきの服を汚してもかまわんが、そないなると洗濯するんはお前やろうが。土汚れを落とすんは大変やぞ?」
アキタケはそれだけを言うとさっさと作業をはじめた。クライスターは多分無駄だろうなーと思いつつも、眉間を揉みながら疑問を呈する。
「や…だからさ…。どこの世界に魔族に農作業を手伝わせるやつが居るよ?」
「ここにいる」
クライスターの呆れたような疑問にもアキタケは淡々と答えると、たった今、収穫したばかりの大根を呆然と突っ立ったままのクライスターへヒョイと渡す。
作業着を着せられ連れて来られた先は神社の裏手で、その一面に家庭菜園というには立派すぎる畑が広がっていたのだ。クライスターは事態についていけず呆然としながらも、アキタケに渡される大根をただ受け取っていたがハッと気付く。
「…! 待てっ! まさか、今まで食卓に出ていた野菜は…!」
「俺の手作りや。漬けもんもな」
何か文句あるのか?と言いながらもアキタケは収穫の手を休めない。クライスターは驚きに口をパクパクとしている。
「な、なんで?」
「まぁ、下手なもん食いたないし。一々、下まで買いに行くのが面倒やしな。それやったら、経済的にも気分的にもこれが一番や」
買いに行くのが面倒なら、畑を作る方がもっと面倒だと思うが…とクライスターは考えてしまった。
「そんな理由でかよ…」
疲れた声で聞くクライスターを後目に、アキタケはテキパキと次に収穫すべき野菜を選別しはじめていた。
「まぁ、ヤスミのためでもあるんやけどな」
「ヤスミ?」
ヤスミの名前が出てきたことに驚く。
「まぁ、あいつの力に関することやがな」
「全視能力のことか?」
クライスターが口にした言葉に、アキタケはピタッと手を止め、片眉をあげてクライスターを見る。
「なんで知ってるんや」
「この間、そんな話をした…お前たちと兄弟じゃないってことも」
他にもエライこと宣言されたがなーと心の中で呟いていると、アキタケはフムと顎に手を当てた。
「ふーん…ヤスミも気に入ったか」
「なんだよ」
思わずクライスターは、不機嫌さを隠しきれずに質問を返した。
「ヤスミはな。肉や魚が食えへんのや」
「は?」
アキタケの唐突な切り出しに、クライスターは間抜けな返事をする。
「肉や魚を食うと、いらんことが混ざって『視えて』しまうらしいわ」
「あぁ…なるほどな。全てが『視えて』しまうもんな。意志を持っていたものが、体に取り込まれてしまうから視点が混乱してしまうのか…」
「そうや。せやから、俺やカイルは肉を食うてもかまわんが、ヤスミに合わせて精進料理にしとるんや。まぁ、精進料理の方がこういう仕事の場合えぇことはえぇねんけどな。せやけど、市販の野菜では美味くないことが多いさかい、こうやって手作りしとるんや」
「はぁ…お前も妹バカなんだな」
「妹?」
訝しげに首を傾げながら問うてくるなアキタケに、クライスターは、は?と返す。
「いや、今、妹って…」
「あぁ? だって、ヤスミはお前らの妹なんだろ? 親が違うからって言ったって、あれほどお前らの妹にふさわしいやつなんていないだろ?」
なんか俺、間違ってるか?と問いかけるクラスターをアキタケはジッと見つめてきた。あまりにジッと見つめられるので、その視線に居心地が悪くなってくるとふっとアキタケが笑う。
「…気に入るわけや」
「何だよ…って…そういや、お前ら兄弟二人と、ヤスミとナカニシは言葉遣いが微妙に違うよな」
ふと、日頃から疑問に思っていたことをクライスターは口にした。アキタケはあぁと肩を竦める。
「俺とカイルは大阪の大学に行ってたさかいにな」
ナカニシは仕事以外で京都から出たことないしなとアキタケに言われたが、クライスターにはさっぱり意味が判らない。首を捻っているとアキタケが苦笑していた。
「おんなじ関西弁や言うても土地によって微妙に違うんや」
「へえー。で、大学ではやっぱり宗教系に進んだのか?」
「いんや? おれはセイブツガク。カイルはキソブツリ」
………。
「え?」
クライスターは聞き慣れない単語に思わず聞き返す。
「せやから俺が生物学で、カイルは基礎物理学に進んだんや」
「はいっ?!」
白衣を着た陰陽師…実験をする陰陽師…はたまた…だが、クライスターの想像力はそこまでで限界だった。
「解剖をするたんびにお経を上げろ言われて閉口したわ」
世間一般では神社も寺もおんなじや思うてるんやなぁと、なんでもないようにアキタケは言っている。
「…ちょっと待て…なんでまた…」
クライスターが混乱している様子が読み取れたのか、アキタケは苦笑している。
「俺らは科学では証明でけへんものを知ってる。せやけど世の中はそれだけではできてへん。俺達がちぃこい頃から知っている世界は世の中では当たり前やないやろ?」
「や、まぁそうだけど…」
だからってなんでそっち?と疲れたように聞くクライスターにアキタケは笑う。
「知らない世界を見たかったんや」
「知らない…?」
「そう…俺達は、自分と言う人間のアイデンティティを知りたかったんや」
アキタケはそう言うと、ネギを選別していた手をとめて空を見上げる。
「世の中はおれたちの理屈で回ってるんやないってことをな。でも結局は根本は一緒や」
「根本?」
「そう、根本。科学の世界でもこっちの世界でも結局は自然の理は覆されへん」
「自然の理って?」
首をひねるカイルにアキタケは少し微笑んだ。
「つまりな、呪いなりなんなりを発動させようと思うたら、呪文を唱える手順がいるやろ? それもなすべきことに見合った組み合わせで。科学も一緒や。手順が一つでも狂うと思うた成果はあげられへん」
「そりゃあそうだけどよ」
「結局は、わからんけどそうなるいうのんは一緒なんや。相反するようで相反してへん。生きている限り自然の理は絶対やねん。お前ら魔の者かってできんことは、どうやったってできへんのやろう? こっちで何かを成すときに自身のキャパにあった契約しかでけんのやろ? ちゃうか?」
「アキタケ…」
言葉に詰まるクライスターをアキタケはじっと見つめる。
「…お前、カイルをどう思う?」
「は?」
「カイルと戦って、あいつをどう思た?」
急にカイルの名を出して真剣な面持ちをするアキタケの視線に、クライスターは考え込んだ。
「…正直、恐い。普通お前たち人間はなにかこちらに干渉しようとするならば、呪文なり道具なりの媒介を通さなきゃできねぇ。なのにあいつはいとも簡単に干渉してくる…それこそ息をするように…人間という器のキャパを超えている…と思う」
クライスターのその答えにアキタケは頷いた。
「そうや。せやけど俺にはカイルのような能力がない」
「え? そうなのかよ?」
「そうや…俺が、あいつの能力の半分でも持って生まれたったら良かったと、そう思うときもある」
アキタケのその言葉にクライスターは目を丸くした後、呆れたようなため息を吐く。
「たらればかよ。人間ってホントそういう自虐的なこと好きだね」
「仕方ないやろ。俺はあいつの兄やさかいにな。重荷の半分でも引き受けてやれるもんならやりたいんや。まぁ、言うてもしょうがないことなんやけどな」
「兄貴だからってなんだっつーの。バカじゃねーの?」
「そうやな。その通りや。せやけどそう割り切れへんのも人間やろ?」
そう切り返されて、クライスターは肩を竦める。
「それもそうだな」
「ま、一応俺も人にはでけへんことがちょっとできるけど、自慢できることやないし」
「…どんなこと?」
そういえば、クライスターはアキタケの能力を知らない。興味津々で聞き返したが、アキタケはまた肩を竦めるだけ。
「勿体つけんなよ」
「ホンマにたいしたことないさかいにな」
「嘘つけ」
うさん臭そうにクライスターが返すのを聞いて、アキタケは横目でチロリと見る。
「なんでや?」
「お前らみたいなので、そんな謙虚なやつに出会ったことないぞ」
いっつも尊大でごう慢で吐き気のする奴らばっかりだと、吐き捨てるようにいうクライスターにアキタケはうんうんと頷く。
「確かにそういうやつは多いな。自分が大したことがないとわかってへんのやろうな」
「大したことないって…」
「大したことないやろうが。俺は野菜ならこうやって作れるが、米までは作られへん。小麦かてや。せやかて、それらを食わんと生きてかれへんやろ」
そう言いながらアキタケは次にカボチャの重さを比較しはじめる。
「や、まぁそうだけどさ」
「生きて行くために自分で全てのことを全て自分でこなせるか? こなせれへんやろ。どんなに素晴らしい能力があろうとも、自分だけではできへん部分はたくさんあって、その部分を他人によって補ってもろとる事に違いはないやろ。反対に他人がでけへん部分で、俺らができることであればすればえぇ。他人と違う自分はえらい、すごいんやなんて思うてたら、自分で自分の首を絞めるだけや」
淡々と話すアキタケをクライスターは、信じられないものを見るようにまじまじと見つめ返す。アキタケはその視線に気付き眉を顰めた。
「なんやねんな」
「だって…」
「壊すのなんか簡単やろ。殺すのかてや」
「!」
なんでもないことのようにアキタケにクライスターはゾッとする。その感情が表情に表れていたのか、アキタケはクライスターを見ておかしそうに笑う。
「お前魔族のくせに何を怖がっとるねん。お前らは快楽のためだけに平気で殺すくせに」
「あぁ…そうさ。だけど…お前…」
「人間のくせにとでも? 人間やからこそ理不尽なことをたくさん知ってるんや」
クライスターは軽く混乱する。
「でも…」
「まぁ、多分人によって不幸と幸福の解釈がちゃうんやろうな」
「はい?」
突然出てきた不幸だの幸福だのの言葉にクライスターはさらに面食らう。
「人によって、理不尽やとかそんなことは解釈がちゃうって言うてんのや。別に俺ら兄弟は今の状態を不幸だとも、理不尽やとも思てないっつーこっちゃ」
「は…あ…あぁ、そう?」
「そう。まぁ、こういう生い立ちや状況やなんかはしゃーないし、それならそれで力技で持ち込んで幸せになればえぇだけやし。ぐだぐだ愚痴を言うてても仕方ないやろ? そんな暇があったら幸せを掴むために努力すればいいだけや」
………。
アキタケの話にクライスターはポカンと口を開ける。なんてポジティブシンキング。
「お前ら…本当に兄弟だよな」
クライスターは思わずそう呟くと、その場にヘナヘナと座り込んでしまった。
「そうか?」
「そうだよっ…! ヤスミも似たようなこと言いやがって」
「ヤスミが?」
「おうよっ! お前とカイルの幸せは自分の幸せ、せやから絶対に俺をカイルのものにさせるためには手段を選ばないんだってよっ! お前らマイペースにも程があるだろーが! 幸せになるためになんで力技とかって発想が出るよっ?!」
自棄くそ気味に叫ぶクライスターにアキタケはなるほどと呟く。
「何がなるほどだよっ!」
「それもそうかと思うてな」
「はい?!」
いやぁ、ヤスミはえぇこと言いよるなぁと感心している。クライスターは嫌な予感がしてきた。
「…何が? なぁ? 何が?」
「家族の幸せは、皆の幸せやろ? つーことはや、カイルの幸せのためには、カイルだけやなくって、俺も努力せないかんいうことやんな?」
「なんでやねん!」
思わずエセ関西弁が飛び出すクライスターだが、アキタケは全く意に介さず、うーんと腕を組んで悩んでいる。
「せやけど、俺ができることはあんまりないしなぁ…」
「そんなこと真剣に考えるなぁっ! つか、しなくってもいいんだよ!」
地面にのめり込みそうになりながらも、必死で抗議する。アキタケはそんなクラスターをチロリと横目で見て呟く。
「…俺の知っている限りの術でなんとかならんかな」
「?! やめろっつーの!」
「しかし、その首輪と結界と、他の術の組み合わせの相性がわからんしなぁ」
その物騒な内容にクライスターはざっと顔を青ざめさせる。
「なんだと?! どういう意味だっ?!」
「その首輪と結界の組み合わせは親父達が生み出したものやさかい、俺らには仕組みが判らへんのやって言うたやろ?」
「この首輪もかよっ!」
「そうや…ム…ちょうどえぇな」
そうやそうやと何か一人で納得しはじめるアキタケに、クライスターは警戒をする。
「…何がちょうどいいんだよ…?」
「俺も、この結界の仕組みが知りたかったさかいに、付き合ってんか」
「バカヤロウ! 誰が付き合うかよっ!」
「なんでや。みんなの幸せのためにちょっとぐらいえぇやないか」
いかにも心外そうに言うアキタケに、クライスターは勢い良く立ち上がり怒鳴った。
「それを実験して、俺に害がないと言えるのかっ?!」
怒鳴りつけた勢いで、ハァハァと肩で息をしているクライスターを見て、アキタケはちょっとだけ考えた。
「…言えないな」
「言えないんだったらするなーっ!」
「しかし、実験してみないことにはわからんしな」
研究室では失敗は成功の元がスローガンやったしと言うアキタケに、陰陽師と科学者が融合するとこんなやつになるのかとクライスターは頭を抱える。
「お前っ…! お前なっ! 俺はモルモットと違うんだぞ?!」
「そうか…そこまでいうんやったら仕方がないな…」
そう言うアキタケにクライスターがほっとしたのも束の間。
「黙ってやろう」
「! いい加減にしやがれー!」
クライスターは迷いなくその場から走り去った。
その後帰ってきたカイルに、憤慨しつつヤスミの話とアキタケの話をした。ヤスミが従姉妹だと話したことに驚いていたが直ぐさまパァァッと顔を輝かし『そらぁ好都合や! 兄弟に祝福されたうえに協力してくれるやなんて俺様大感激や!』とかなんとかぬかしたので、とりあえず拳骨を一発お見舞いしておいた。
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