クラスに馴染めない少年はいつまで経っても初恋に囚われ続ける

Onfreound

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EP3

#45.5~65-2-1

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 まとまりの無い議論と、唐突な手伝い命令。しかも、早く家に逃げようとした矢先に生じた腹痛により、バスに乗り遅れる。散々な金曜日となってしまった。

 気晴らしに、学校を歩き回る。久々に聞く生徒のかけ声や楽器の音は凄まじく、遠い。

   「ねぇ?お願いしますよぅ。君の美貌がどうしても必要なんだよぅ」

   「嫌だよ。私の身体目当てだなんて」

 すると、廊下で触れたくない会話をしている男女を見つける。女子の方は知り合いなのだが、知らないことにならないだろうか。

 とりあえず向きを変え、立ち去ろうとする。経験上、こういうときは堂々と帰るべきだ。コソコソ帰るとバレる。

   「伊折君?そんな足音を立てて、構ってほしいの?」
   
   「......」

   「逃がさないよ?」

 急に身体が浮いたかと思うと、何故か離れた筈の男女の側にいる。そして女に抱えられている。夢のお姫様抱っこである。

   「頼むよぅ。白渡さん、主演を引き受けてよぅ」

   「え、役者の異常性は気にしろよ」

   「そこまで勧誘するなら、こっちにも考えがあるよ。私が出る代わりに、主人公を憎たらしい伊折君にしてよ。演者にとって良い環境を作るのも仕事でしょ」

   「嫌だよぅ。こんな棒に出来る訳無いよぅ。主演は白渡さんしか有り得ないよぅ」

 男は僕の事を完全に無視するのかと思ったが、一応外見の評価はしていたようだ。僕は棒人間らしい。 

   「白渡、よく分からんけど僕は不適らしいぞ。交渉には別の奴を使え。それと、お前人を抱えるの上手いな」

   「このまま抱きしめようか。そうすれば劇に出てくれる?」

   「監督にやればいいじゃん」

   「それセクハラだよ?」

 暴れるわけにもいかず、どうにか足を着けようとすると、本当に抱きしめられる。男に見られてるのに、酷い。

   「止めて下さいな...大体、目立つの嫌いじゃないだろ。主役やれよ」

   「ただでさえ委員会で知らない人と絡むのに、どうして劇までやらなきゃいけないのさ」

 拘束から抜け出し、彼女に向き直る。なるほど、知人と一緒じゃないのが嫌なのか。白渡の癖に可愛い理由だ。

 なら、僕である必要はない。

   「じゃあクラスメートとか誘ってくれ。僕は...」

   「待ってくれよぅ!やはり君は必要だぁ!」
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