72 / 79
EP3
#63
しおりを挟む
「...好きになって欲しいとか、私から求めることはしない。そう思ってるよね。その通りだった」
彼女が近づく。その勢いに僕は、たじろぐことすらできない。
「...今、選択を迫られてるとか言わないでよ。彼氏を作れって言われて、初恋の相手に話をしてるだけだから」
「こんな所じゃなくてもいいだろ」
「ここじゃないと駄目でしょ。伊折君」
白渡が口を挟む。
僕の役割を考えれば、その通りだった。ずっと2人だったから、きっと選ばなかったのだ。
「...決め方は乱暴でいい。好みがどうか、役立つかどうかとか、価値基準は何でも」
言葉自体は投げやりに聞こえる。真剣なのが分かっているから、特に。
「...ここでだけで良いから、我儘言わせて。あの質問の答え、はっきり言葉にして欲しい。付き合うに値するか、そうじゃないか聞かせて欲しい。正面から嫌って言われて、折れない程には頑固じゃない」
外野の熱狂を遮る程に、彼女は堂々としていた。頼りないとか、心配だとか、そういう問題じゃなかった。確かに、僕は縋られていたかもしれない。でも、彼女は十分しっかりした少女だった。
大体、長い間こんな人間を掴み続けていた時点で、その強さは示されていたのだろう。容姿は綺麗で可愛いし、料理以外は基本的に何でも出来るし、性格に関しても文句は無い。慕われてたかはともかく、ずっと僕のことを考えてくれる幼馴染がいるなんて、幸運とかいう次元を超えていた。
「......」
黒瀬は間違いなく、共に頑張れる女の子だった。
「だそうですよ?新色さん」
だから、僕の答えは決まっていた。
「...魅力的過ぎて、僕には釣り合いませんよ」
「...釣り合わ、ない?」
全体を包む空白。はっきりとその感覚を感じ、体が固まる。
その直後、上半身が急に前に飛び出す。胸倉から強く引っ張られ、息が詰まる。
「釣り合わないからなんて...本当に、本当に、ふざけないでよ!」
目の前には黒瀬の顔がある。見慣れた顔の筈だった。でも、これは間違いなく、初めて見る顔だった。
「非があるって言えば良いじゃん!私の話聞いてた!?正面から言ってくれれば納得したのに!」
「...非なんてある訳無いだろ。お前、自己分析足りて...」
「じゃあ彼女にすればいいじゃん!何、蓮花さんの方が良いってこと!?」
「...比較なんてしてない。黒瀬への正直な気持ちを述べただけだ」
「何それ...私は、先輩じゃなきゃ駄目なのに!」
運営の人々が寄って来て、僕達を引き離そうとする。きっとこのまま引きずり出され、説教でも受けるのだろう。
それにも関わらず、白渡は動かない。こいつらはやはり別人だ、なんて、気晴らしに適当な結論を下す。
彼女が近づく。その勢いに僕は、たじろぐことすらできない。
「...今、選択を迫られてるとか言わないでよ。彼氏を作れって言われて、初恋の相手に話をしてるだけだから」
「こんな所じゃなくてもいいだろ」
「ここじゃないと駄目でしょ。伊折君」
白渡が口を挟む。
僕の役割を考えれば、その通りだった。ずっと2人だったから、きっと選ばなかったのだ。
「...決め方は乱暴でいい。好みがどうか、役立つかどうかとか、価値基準は何でも」
言葉自体は投げやりに聞こえる。真剣なのが分かっているから、特に。
「...ここでだけで良いから、我儘言わせて。あの質問の答え、はっきり言葉にして欲しい。付き合うに値するか、そうじゃないか聞かせて欲しい。正面から嫌って言われて、折れない程には頑固じゃない」
外野の熱狂を遮る程に、彼女は堂々としていた。頼りないとか、心配だとか、そういう問題じゃなかった。確かに、僕は縋られていたかもしれない。でも、彼女は十分しっかりした少女だった。
大体、長い間こんな人間を掴み続けていた時点で、その強さは示されていたのだろう。容姿は綺麗で可愛いし、料理以外は基本的に何でも出来るし、性格に関しても文句は無い。慕われてたかはともかく、ずっと僕のことを考えてくれる幼馴染がいるなんて、幸運とかいう次元を超えていた。
「......」
黒瀬は間違いなく、共に頑張れる女の子だった。
「だそうですよ?新色さん」
だから、僕の答えは決まっていた。
「...魅力的過ぎて、僕には釣り合いませんよ」
「...釣り合わ、ない?」
全体を包む空白。はっきりとその感覚を感じ、体が固まる。
その直後、上半身が急に前に飛び出す。胸倉から強く引っ張られ、息が詰まる。
「釣り合わないからなんて...本当に、本当に、ふざけないでよ!」
目の前には黒瀬の顔がある。見慣れた顔の筈だった。でも、これは間違いなく、初めて見る顔だった。
「非があるって言えば良いじゃん!私の話聞いてた!?正面から言ってくれれば納得したのに!」
「...非なんてある訳無いだろ。お前、自己分析足りて...」
「じゃあ彼女にすればいいじゃん!何、蓮花さんの方が良いってこと!?」
「...比較なんてしてない。黒瀬への正直な気持ちを述べただけだ」
「何それ...私は、先輩じゃなきゃ駄目なのに!」
運営の人々が寄って来て、僕達を引き離そうとする。きっとこのまま引きずり出され、説教でも受けるのだろう。
それにも関わらず、白渡は動かない。こいつらはやはり別人だ、なんて、気晴らしに適当な結論を下す。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。
ながしょー
青春
ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。
このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる