クラスに馴染めない少年はいつまで経っても初恋に囚われ続ける

Onfreound

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EP3

#63

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   「...好きになって欲しいとか、私から求めることはしない。そう思ってるよね。その通りだった」

 彼女が近づく。その勢いに僕は、たじろぐことすらできない。

   「...今、選択を迫られてるとか言わないでよ。彼氏を作れって言われて、初恋の相手に話をしてるだけだから」

   「こんな所じゃなくてもいいだろ」

   「ここじゃないと駄目でしょ。伊折君」 

 白渡が口を挟む。

 僕の役割を考えれば、その通りだった。ずっと2人だったから、きっと選ばなかったのだ。

   「...決め方は乱暴でいい。好みがどうか、役立つかどうかとか、価値基準は何でも」

 言葉自体は投げやりに聞こえる。真剣なのが分かっているから、特に。

   「...ここでだけで良いから、我儘言わせて。あの質問の答え、はっきり言葉にして欲しい。付き合うに値するか、そうじゃないか聞かせて欲しい。正面から嫌って言われて、折れない程には頑固じゃない」

 外野の熱狂を遮る程に、彼女は堂々としていた。頼りないとか、心配だとか、そういう問題じゃなかった。確かに、僕は縋られていたかもしれない。でも、彼女は十分しっかりした少女だった。

 大体、長い間こんな人間を掴み続けていた時点で、その強さは示されていたのだろう。容姿は綺麗で可愛いし、料理以外は基本的に何でも出来るし、性格に関しても文句は無い。慕われてたかはともかく、ずっと僕のことを考えてくれる幼馴染がいるなんて、幸運とかいう次元を超えていた。

   「......」

 黒瀬は間違いなく、共に頑張れる女の子だった。

   「だそうですよ?新色さん」

 だから、僕の答えは決まっていた。

   「...魅力的過ぎて、僕には釣り合いませんよ」

   「...釣り合わ、ない?」

 全体を包む空白。はっきりとその感覚を感じ、体が固まる。

 その直後、上半身が急に前に飛び出す。胸倉から強く引っ張られ、息が詰まる。

   「釣り合わないからなんて...本当に、本当に、ふざけないでよ!」

 目の前には黒瀬の顔がある。見慣れた顔の筈だった。でも、これは間違いなく、初めて見る顔だった。

   「非があるって言えば良いじゃん!私の話聞いてた!?正面から言ってくれれば納得したのに!」

   「...非なんてある訳無いだろ。お前、自己分析足りて...」

   「じゃあ彼女にすればいいじゃん!何、蓮花さんの方が良いってこと!?」

   「...比較なんてしてない。黒瀬への正直な気持ちを述べただけだ」

   「何それ...私は、先輩じゃなきゃ駄目なのに!」

 運営の人々が寄って来て、僕達を引き離そうとする。きっとこのまま引きずり出され、説教でも受けるのだろう。

 それにも関わらず、白渡は動かない。こいつらはやはり別人だ、なんて、気晴らしに適当な結論を下す。
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