クラスに馴染めない少年はいつまで経っても初恋に囚われ続ける

Onfreound

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EP3

#57

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 こんな、サプライズみたいな呼ばれ方をしていいのだろうか。こういうのって担任の先生とか、引退する部長とか、それなりの立場がある人が対象なのではないか。

 というか、今の僕の評価ではほとんど晒上げみたいなものだ。もしかしたら、発表時間全て使って罵られるかもしれない。今から磔にします、とか言われるかもしれない。

   「......」

 まぁ、もうあの時の様に逃げはしない。

 黒瀬直々のご指名を蹴れるほど、僕はクズでも、誠実な奴でも無かった。


   「...あの、新色ですが」

 緊急ゲストの登場で困惑している実行委員達を、白渡が諌めている。そんな中に、BMI値が17ぐらいの男が上がってくる。

   「伊折君、どうしてすぐに駆けつけなかったの?私を面倒事に巻き込まないでよ」

   「いや、巻き込まれてるのは僕の方だろ。というか、お前が面倒事とか言う?」

 何で人前でしょうもない喧嘩をしなければならないのか。恥ずかしくないのか。

 いや、こいつとの関わり方はこんな感じだわ。さっきは何か変な感じだったけど、やはり自分達には馬鹿な議論してるぐらいが丁度良い。
 
   「...って、話す相手は私じゃないでしょ?ほらほら」

 そう言うと、白渡に背を向かせられる。

 そこには当然、しっかりと僕を見つめる、黒瀬の姿があって。

 彼女の手には、1冊の冊子があった。
 
   「...あのな、晒し者にするにしてもだな...」

   「...先輩、ここ、座って」

   「............え、これってお前...」
 
 用意された椅子を指さされる。しかし、僕の目線はもう片方へ向く。

 色の褪せ具合からして、もう15年ぐらい前の品だろう。安価そうで、ボロボロの本。

   「......何で、持ってるんだよ」

 だが、僕にとっては少し違った。それはあの祭りの日、彼女に届けようとして、届かなかった楽譜だった。
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