26 / 79
EP1
#25
しおりを挟む
新入生歓迎会は、全校生徒出席の前半と、代表者が部紹介をする後半に分けられる。僕は自然科学部の代表ではない為、前半が終わり次第そのまま帰る予定だ。
「1年生の皆さん、新しい生活にはもう慣れましたか?」
生徒会長の言葉を聞き流しつつ、頭では黒瀬の事を考える。彼女の気持ちには応えられないと、早く伝えるべきなのだ。
僕はしょうもない人間である。人付き合いは下手。家事も運動も出来ない。勉強は昔は成績良かったが、化けの皮が剥がれた今では平凡。サボり癖が酷く無礼で弱気で稚拙。他に特出した能力も無く、しかも告白した女の子への返事を保留し続けるクズ。無駄にプライドは高いのに、将来像は決められない面倒な人間。
そんな奴が幼馴染な黒瀬は本当に不幸だ。家族との不和からか、彼女は迷った時、まず僕を参考にした。自己紹介は良い例で、他に小学校時代のリーダー、中学校時代の部活や学習、下原高校理数科への進学等、学校における話だけでも色々ある。体験入部先や委員会が同じだったのも多分偶然ではなく、少し前に僕から聞いたものに合わせているのだろう。
慕われるのは嬉しい。しかし、このまま僕に着いて行けば、彼女は僕のしょうもない人生に巻き込まれてしまう。
だから、黒瀬とは付き合う気はない。高校を卒業するまでには、自立するか、僕以外の優秀な奴を頼りしていて欲しい。でも、ずっと隣にいた彼女を拒絶するのは、やはり苦しい。
「記念品授与。代表者は前に出てきて下さい」
どうやら、仕事の時間らしい。立ち上がり、所定の位置につく。
目の前には、黒瀬が立っている。
「こんにちは!あたしは監査委員長の、朱膳寺苺です!」
委員長の挨拶が始まる。相変わらず無表情な黒瀬の顔を、何故か直視できない。
「これから様々な経験をすることになるでしょうが、仲間たちと共に、苦難を乗り越えていって下さい!」
「ありがとうございました。それでは、代表者の方、どうぞ」
合図を受け、記念品を渡すことになっている。僕と黒瀬も前に出て、後はこのよく分からない物を押し付けるだけ。
「...彼氏でも作って楽しめよ」
「.........」
小声で話したが、大声で驚かされたかのように、黒瀬の目は見開いている。動きは固まり、彼女が明らかに動揺しているのを読み取れる。
「...誰と、付き合えば良いの」
僕より、今までの彼女よりか細い声で、黒瀬は尋ねる。こんな苦しそうな彼女を見たのは何時以来だろうか。
「1年生の皆さん、新しい生活にはもう慣れましたか?」
生徒会長の言葉を聞き流しつつ、頭では黒瀬の事を考える。彼女の気持ちには応えられないと、早く伝えるべきなのだ。
僕はしょうもない人間である。人付き合いは下手。家事も運動も出来ない。勉強は昔は成績良かったが、化けの皮が剥がれた今では平凡。サボり癖が酷く無礼で弱気で稚拙。他に特出した能力も無く、しかも告白した女の子への返事を保留し続けるクズ。無駄にプライドは高いのに、将来像は決められない面倒な人間。
そんな奴が幼馴染な黒瀬は本当に不幸だ。家族との不和からか、彼女は迷った時、まず僕を参考にした。自己紹介は良い例で、他に小学校時代のリーダー、中学校時代の部活や学習、下原高校理数科への進学等、学校における話だけでも色々ある。体験入部先や委員会が同じだったのも多分偶然ではなく、少し前に僕から聞いたものに合わせているのだろう。
慕われるのは嬉しい。しかし、このまま僕に着いて行けば、彼女は僕のしょうもない人生に巻き込まれてしまう。
だから、黒瀬とは付き合う気はない。高校を卒業するまでには、自立するか、僕以外の優秀な奴を頼りしていて欲しい。でも、ずっと隣にいた彼女を拒絶するのは、やはり苦しい。
「記念品授与。代表者は前に出てきて下さい」
どうやら、仕事の時間らしい。立ち上がり、所定の位置につく。
目の前には、黒瀬が立っている。
「こんにちは!あたしは監査委員長の、朱膳寺苺です!」
委員長の挨拶が始まる。相変わらず無表情な黒瀬の顔を、何故か直視できない。
「これから様々な経験をすることになるでしょうが、仲間たちと共に、苦難を乗り越えていって下さい!」
「ありがとうございました。それでは、代表者の方、どうぞ」
合図を受け、記念品を渡すことになっている。僕と黒瀬も前に出て、後はこのよく分からない物を押し付けるだけ。
「...彼氏でも作って楽しめよ」
「.........」
小声で話したが、大声で驚かされたかのように、黒瀬の目は見開いている。動きは固まり、彼女が明らかに動揺しているのを読み取れる。
「...誰と、付き合えば良いの」
僕より、今までの彼女よりか細い声で、黒瀬は尋ねる。こんな苦しそうな彼女を見たのは何時以来だろうか。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~
メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」
俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。
学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。
その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。
少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。
……どうやら彼は鈍感なようです。
――――――――――――――――――――――――――――――
【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】
全体的にどうしようもない高校生日記
天平 楓
青春
ある年の春、高校生になった僕、金沢籘華(かなざわとうか)は念願の玉津高校に入学することができた。そこで出会ったのは中学時代からの友人北見奏輝と喜多方楓の二人。喜多方のどうしようもない性格に奔放されつつも、北見の秘められた性格、そして自身では気づくことのなかった能力に気づいていき…。
ブラックジョーク要素が含まれていますが、決して特定の民族並びに集団を侮蔑、攻撃、または礼賛する意図はありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
黄昏は悲しき堕天使達のシュプール
Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・
黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に
儚くも露と消えていく』
ある朝、
目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。
小学校六年生に戻った俺を取り巻く
懐かしい顔ぶれ。
優しい先生。
いじめっ子のグループ。
クラスで一番美しい少女。
そして。
密かに想い続けていた初恋の少女。
この世界は嘘と欺瞞に満ちている。
愛を語るには幼過ぎる少女達と
愛を語るには汚れ過ぎた大人。
少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、
大人は平然と他人を騙す。
ある時、
俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。
そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。
夕日に少女の涙が落ちる時、
俺は彼女達の笑顔と
失われた真実を
取り戻すことができるのだろうか。
ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした
黒足袋
青春
インターネット上で†吸血鬼†を自称する最強ゲーマー・ヴァンピィ。
日向太陽はそんなヴァンピィとネット越しに交流する日々を楽しみながら、いつかリアルで会ってみたいと思っていた。
ある日彼はヴァンピィの正体が引きこもり不登校のクラスメイトの少女・月詠夜宵だと知ることになる。
人気コンシューマーゲームである魔法人形(マドール)の実力者として君臨し、ネットの世界で称賛されていた夜宵だが、リアルでは友達もおらず初対面の相手とまともに喋れない人見知りのコミュ障だった。
そんな夜宵はネット上で仲の良かった太陽にだけは心を開き、外の世界へ一緒に出かけようという彼の誘いを受け、不器用ながら交流を始めていく。
太陽も世間知らずで危なっかしい夜宵を守りながら二人の距離は徐々に近づいていく。
青春インターネットラブコメ! ここに開幕!
※表紙イラストは佐倉ツバメ様(@sakura_tsubame)に描いていただきました。
しゅうきゅうみっか!-女子サッカー部の高校生監督 片桐修人の苦難-
橋暮 梵人
青春
幼少の頃から日本サッカー界の至宝と言われ、各年代別日本代表のエースとして活躍し続けてきた片桐修人(かたぎり しゅうと)。
順風満帆だった彼の人生は高校一年の時、とある試合で大きく変わってしまう。
悪質なファウルでの大怪我によりピッチ上で輝くことが出来なくなった天才は、サッカー漬けだった日々と決別し人並みの青春を送ることに全力を注ぐようになる。
高校サッカーの強豪校から普通の私立高校に転入した片桐は、サッカーとは無縁の新しい高校生活に思いを馳せる。
しかしそんな片桐の前に、弱小女子サッカー部のキャプテン、鞍月光華(くらつき みつか)が現れる。
「どう、うちのサッカー部の監督、やってみない?」
これは高校生監督、片桐修人と弱小女子サッカー部の奮闘の記録である。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
独身男の会社員(32歳)が女子高生と家族になるに至る長い経緯
あさかん
ライト文芸
~以後不定期更新となります~
両親が他界して引き取られた先で受けた神海恭子の絶望的な半年間。
「……おじさん」
主人公、独身男の会社員(32歳)渡辺純一は、血の繋がりこそはないものの、家族同然に接してきた恭子の惨状をみて、無意識に言葉を発する。
「俺の所に来ないか?」
会社の同僚や学校の先生、親友とか友達などをみんな巻き込んで物語が大きく動く2人のハートフル・コメディ。
2人に訪れる結末は如何に!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる