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プロローグ
#S-1
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「伊折君はこう見えてとてもかっこいいんですよ。給食の時私が重い食器を運んでいたら代わりに持ってくれたり、修学旅行で迷子になった私を探し出してくれたり、カップル限定セールがやってた時に彼氏役を嫌がらずに引き受けてくれたこともありましたね」
「えー!?ヤバすぎー!」
「新色、白渡さんのこと大好きじゃねーか!」
どんどん盛り上がっていく教室の中、彼、伊折君だけは微動だにせず、少し見開いた目で私のことを眺めていた。
実際のところ、さっきの話には脚色や若干の嘘がある。食器は偶に私が押し付けていただけ。修学旅行は自分の班を離れ伊折君に絡んでいたら、班員が私の不在を先生に通報したらしく、捜索するよう生徒達に通達があり、伊折君が第一発見者になったというオチ。カップル限定セールには行ったが、伊折君はかなり抵抗していた。
伊折君からのラブレターは貰った。
私の靴箱にはしょっちゅうお手紙が入っていたが、卒業式の少し前は大変な数になっていた。どれも似たような内容で感心していたところ、1つ、匿名の手紙が目に留まる。
とにかく偏屈で卑屈で、回りくどい。謙遜や分かりづらい例え、世間体を重視した無駄な配慮、私に関わりのない話で溢れたラブレターだった。字は彼のものより汚く、「素敵」とか「容姿端麗」とか、彼が使いそうも無い言葉が強引に詰められているとはいえ、少なくとも中学校内でそんな手紙を書くのは彼しかいない。
伊折君のことだから、別れの前に手紙のかさ増しでもして控えめな抵抗でもしようとしたのだろう。それにしては力を入れすぎているが、その変なところも彼らしい。彼に代筆を頼むような友人は恐らくいないが、仮に代筆だったとしたら書き直しになるだろう程の怪文だ。
優等生なんかじゃ無い、卑怯で、意地悪で、面倒臭い女、白渡蓮花に向けたラブレターは、その1通だけだった。
まぁ、理由は何であれ、隙を晒したのは伊折君だ。
「もう1年も経っちゃったけど...実は私も伊折君の事が好きだったんだよね」
「キャー!!」
「.........」
唖然とした表情をしている伊折君。
それを見ているだけで満たされる。正直どんな伊折君でも良かったのだが、私に逆らえない様子なのはあの頃を思い出し、嬉しくなってしまう。
「伊折君のかっこよさにも、偶に見せる可愛らしさにも昔から惹かれていたんだよ?だから、私と付き合って!」
「嫌だ」
「ええーーーーっ!?」
完全に予想通りの返答の後、生徒達の驚愕と抗議の声が広まりかける。
「新色!?お前どういうつもりだよ!?」
「そうだよ!白渡さんが勇気を出して...」
「やめて!伊折君を責めないで!」
皆を制する。
完璧だ。後は仕上げをするだけだ。
「1年も離れていれば、もちろん伊折君だって心変わりはする筈だし...今の私のことなんて分かっていないから、そう答えてくれたと思うんだ」
「...なるほど、確かにね」
「.........?」
疑問符を浮かべている伊折君を除き、クラスメート達は落ち着き始める。
「だから、これから今の伊折君に振り向いてもらえるように、私は頑張るよ!もちろん、皆んなとも仲良くしたいな!こんな私ですが、これからよろしくお願いします!」
周りは一瞬にして拍手の嵐。先生も少し涙ぐんでいて、まるで冒険後の勇者を讃える時の様な、感動と一体感に包まれた。
1人を除いて。
「これからよろしくね?伊折君」
「......」
耳打ちする様に話すが、反応は無い。
でも、これで良い。これでいつでも伊折君に絡める環境、というか、伊折君が私と絡むのを断れない環境にする事ができた。
高校では、絶対に逃がさない。
だって彼は、私の未だに続く、初恋の相手なのだから。
「えー!?ヤバすぎー!」
「新色、白渡さんのこと大好きじゃねーか!」
どんどん盛り上がっていく教室の中、彼、伊折君だけは微動だにせず、少し見開いた目で私のことを眺めていた。
実際のところ、さっきの話には脚色や若干の嘘がある。食器は偶に私が押し付けていただけ。修学旅行は自分の班を離れ伊折君に絡んでいたら、班員が私の不在を先生に通報したらしく、捜索するよう生徒達に通達があり、伊折君が第一発見者になったというオチ。カップル限定セールには行ったが、伊折君はかなり抵抗していた。
伊折君からのラブレターは貰った。
私の靴箱にはしょっちゅうお手紙が入っていたが、卒業式の少し前は大変な数になっていた。どれも似たような内容で感心していたところ、1つ、匿名の手紙が目に留まる。
とにかく偏屈で卑屈で、回りくどい。謙遜や分かりづらい例え、世間体を重視した無駄な配慮、私に関わりのない話で溢れたラブレターだった。字は彼のものより汚く、「素敵」とか「容姿端麗」とか、彼が使いそうも無い言葉が強引に詰められているとはいえ、少なくとも中学校内でそんな手紙を書くのは彼しかいない。
伊折君のことだから、別れの前に手紙のかさ増しでもして控えめな抵抗でもしようとしたのだろう。それにしては力を入れすぎているが、その変なところも彼らしい。彼に代筆を頼むような友人は恐らくいないが、仮に代筆だったとしたら書き直しになるだろう程の怪文だ。
優等生なんかじゃ無い、卑怯で、意地悪で、面倒臭い女、白渡蓮花に向けたラブレターは、その1通だけだった。
まぁ、理由は何であれ、隙を晒したのは伊折君だ。
「もう1年も経っちゃったけど...実は私も伊折君の事が好きだったんだよね」
「キャー!!」
「.........」
唖然とした表情をしている伊折君。
それを見ているだけで満たされる。正直どんな伊折君でも良かったのだが、私に逆らえない様子なのはあの頃を思い出し、嬉しくなってしまう。
「伊折君のかっこよさにも、偶に見せる可愛らしさにも昔から惹かれていたんだよ?だから、私と付き合って!」
「嫌だ」
「ええーーーーっ!?」
完全に予想通りの返答の後、生徒達の驚愕と抗議の声が広まりかける。
「新色!?お前どういうつもりだよ!?」
「そうだよ!白渡さんが勇気を出して...」
「やめて!伊折君を責めないで!」
皆を制する。
完璧だ。後は仕上げをするだけだ。
「1年も離れていれば、もちろん伊折君だって心変わりはする筈だし...今の私のことなんて分かっていないから、そう答えてくれたと思うんだ」
「...なるほど、確かにね」
「.........?」
疑問符を浮かべている伊折君を除き、クラスメート達は落ち着き始める。
「だから、これから今の伊折君に振り向いてもらえるように、私は頑張るよ!もちろん、皆んなとも仲良くしたいな!こんな私ですが、これからよろしくお願いします!」
周りは一瞬にして拍手の嵐。先生も少し涙ぐんでいて、まるで冒険後の勇者を讃える時の様な、感動と一体感に包まれた。
1人を除いて。
「これからよろしくね?伊折君」
「......」
耳打ちする様に話すが、反応は無い。
でも、これで良い。これでいつでも伊折君に絡める環境、というか、伊折君が私と絡むのを断れない環境にする事ができた。
高校では、絶対に逃がさない。
だって彼は、私の未だに続く、初恋の相手なのだから。
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