キツネと龍と天神様

霧間愁

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誤想の龍曰く

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 綺麗な満月だった。

 男女が一組、夜道を歩きながら上を見上げていた。
「明るくて助かりますね?」
 女が言った。
「そうですね、明るいですね」
 男が言う。
「そうでしょうそうでしょう」
「気持ちが楽でいられて、ありがたいですね」
「それほどでもありません」
 男が女の口ぶりに首をひねった。
「お月様ですよね?」
「お月様ですよ」
 女が月に指をさした。
「あれが星に見えますか?」
「いいえ、あれは月ですね」
「そうでしょうそうでしょう」
「明るいでしょう?」
 女が問いなおす。
「明るくて助かっています」
「道の先々まで見えるでしょう?」


「ん?」
「え?」

「月が綺麗ですね」
「月も綺麗ですね」
 少し沈黙してから、二人は静かに嗤った。
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