キツネと龍と天神様

男気なキツネ曰く

　男気、それは犠牲を払ってもやり遂げようとする心意気。
　侠気、それは正邪の分別と勧善懲悪に基づいた心意気。
　漢気、それは……そんな単語は辞書に載ってなかった。

　ならば僕、キツネが定義しよう。
　漢気とは、この場面はひいてはならぬと心が叫ぶならひかぬ心だ。そしてそれをヨシとする心意気だ。

　対峙するのは、いつもの三人。
　猫、魔女さん、そしてオオカミさん。
　彼女たちもまた引けぬ戦いなのだ。
　僕らに与えられたのは、三つの選択肢。
　グーチョキパー。

　悪夢のような緊張感の原因は、「たまには漢気じゃんけんで」という誰かの一言。

　ここまで五度のあいこ。何故かあいこになっていく度に異常な程に張りつめていく空気。
　四つ目の選択肢などない。
　ひけぬ揺るがぬ覆らぬ！
　四人が構えた。
　震えろハート、燃え上がるほどヒート、刻め血液のビート！
　負けるんだ、敗けねば今日の夕食を作ることになるが、心の中は勝ちにいく心意気。

　そう、それが漢気じゃんけん。
　不毛な戦い。