キツネと龍と天神様

願望の天神曰く

　昔々、醜女がいた。
　人を羨む僻むことしかしない醜女だった。

　あるとき、醜女は美丈夫を助けた。その美しい顔を見ていたかったからだ。
　美丈夫はある場所から逃げ出してきたらしく、飲まず食わずの状態で疲れ果ていた。

　体力も回復して礼をいい立ち去ろうとする美丈夫を醜女は引きとめて、一緒に暮らさないかと言った。

　そうして美丈夫は醜女の家に転がり込み、暮らし始めた。
　暮らし始め、不思議なことがおこった。醜女から段々とその醜さがなくなっていった。

　街で男に声をかけられることが増えてきた。

　その代わりに美丈夫は段々と醜くなり始めた。
　ただ美丈夫のやさしさは変わることはなかった。

　醜女だった女は街一番の美女になった。色んな男に求婚されたが、それらを断って醜男になってしまった美丈夫と結婚した。
　すると醜女の容姿は美女ではなくなったが、醜女でもなくなった。
　醜男も美丈夫ではなくなったが、醜男でもなくなった。



　容姿は二人とも変わったが、一番変わったのは醜女の心だった。
　変わらなかったのは、美丈夫の優しさだった。