キツネと龍と天神様

霧間愁

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結ぶ龍曰く

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 その男は、不思議な音をたてた。

 男は自分の音に気が付かないのか、こちらに笑顔を向ける。
「こんばんわ、お嬢さん」
 野太く優しい声。
「怖がらないで」
 こちらの後ずさりに気がついたのだろう、男が一言。

 休日出勤した私は、仕事を午前中で終え、早く帰りたいと近道をしようと人気のない路地を通った。それがいけなかった。

(コンビニでご飯飼ってお風呂入って、撮りためた推し出演ドラマを、み……て。……え?)
 路地の向こうは、見知った道なのに見知らぬ感覚にとらわれる。
 思わず振り返ると、私が来たはずの路地が消えていた。
 混乱して呆然となったが、携帯を取り出して場所を調べようとすると、不思議な音が聞こえてきた。

 男は私に断って何処かに連絡をする。
「……そうだよ、“向こう側”の一般人。は?いや、知らんがな。それはそっちで調べてよ。とりあえず、“向こう側”に帰すから、きりますよ。はいはい、小言は後で」
 男が喋る最中に、携帯をちらりと見たが圏外だ。
「ここ、ちょっと特殊で、出口案内しますね」

 男に案内されて、知った道に出る。
 礼を言おうと振り返ると、案内された道はなくなっていた。
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