キツネと龍と天神様

霧間愁

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序開の天神曰く

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 男にとって、その女は娘のような存在だ。

 手間のかかる存在。
 恐ろしい程の才能と集中力を持ち食事もせずも寝ることもせずにただ自分の才能に熱中する生き方は、見ていて危うくそして尊敬できた。

 数年前に出会た彼女――女は窮屈そうだった。
 出会ったとき、周りの大人たちは彼女を大切にしていた。
 誰かが飯を食わせねば、彼女は死ぬ。
 誰かが彼女に人間らしい生活をさせねば。
 誰かが寝床を用意しなければ、彼女は死ぬ。
 誰かが彼女の生活を管理せねば。

 男は「籠の中の安全」もそれもまた幸せだと思って、見て見ぬふりをした。


 ある時、女は男の許に転がり込んできた。
「逃げてきた」
 満面の笑みに、小銭をたっぷり入れた財布。なぜ自分の処だったのか、それは女は話そうとしない。

 男は思い返すと、女のことで頭痛が始まったのはこの時からだったと自覚する。

 今日も今日とて溜息をついた、
 部屋から三日間ほで出ず連絡もつかない彼女を叱りに行くため、男は自宅を出る。
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