キツネと龍と天神様

嵌められたキツネ曰く

　店内は少し騒がしかった。
　談笑する声とゆったりとした曲調の音楽が小さく流れ溢れている。

　僕、キツネは緊張していた。
　砂糖とミルクをたっぷりと入れた珈琲を飲んだが、味がしない。
　目の前の人は、ニコニコと笑顔のままだ。顔が暑い、真っ赤かもしれない。
「ごめんね、みんなでお茶するはずだったのに」
　謝らないでください、と僕は慌てる。
「そういう服が楽なの？」
　そそそ、その之は、違うんです、部屋着に近いと申しましょうか、はい、普段はもうちょっと小奇麗にしとるんっです。
　なんだよ、これ、この状況。友人たちとケーキと茶をしに来たら、友達はいなくて憧れの人がいた件について。

　いや違う、今はそんなラノベなタイトルを考えている場合ではないのですよ。

「へぇ。あぁ、ここのケーキ美味しいらしいよ。あ、それとそろそろ皆もこっちに着くらしい」
　猫と魔女さんとオオカミさんがやってくる。目の前の人は一時間ほどして、帰っていった。

　三人が僕を見ているが、僕は放心状態でしばらく真顔のままだったそうだ。