キツネと龍と天神様

霧間愁

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夏の終わりの龍曰く

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 少女はその壺に興味を持った。
 祖父の家にあった壺は、長期休暇の時期になるといつも少女の傍にあった。少女にとってその壺は夏の象徴だった。

 壺には蓋がしてあり、何故か壺と一体になっていた。
 少女はそう記憶していたが、昔一度だけ蓋が開いた様な記憶があった。幼児だったので記憶が曖昧糢糊としていて定かではなかったが、気になって父の実家に帰ると出来るだけその壺を傍に置いていたのだ。

 その日、ノルマ分の宿題も終わり、ソーダ味のアイスを口にくわえて縁側にいた。
 買い物に出かけてくると両親と祖父祖母は出かけてしまい留守番で、退屈だった。

 と、やはり壺は少女の横に鎮座している。
 陶磁器の擦れる音が聞こえたと思って横を見ると、壺から腕が生えていた。ぎょっとして少女は壺から離れる。
 壺は腕を生やしたまま、関西弁で「お砂糖あらへん?」と訊ねてきた。少女は台所に走って、砂糖の袋を手に取って腕に渡すと、「おおきに」と壺の中に去っていく。自分で蓋を閉めるという技を見せて。


 気が付くと汗だくで寝転んでいた。
 アイスの棒が庭に落ちている。
 壺は、少女の横にあった。
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