キツネと龍と天神様

霧間愁

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メルヘンな天神曰く

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 その令嬢は夢見がちだ。



 「何でも創り“出せる”」魔法使いから、その“箱”を譲り受けた研究者集団のうちの一人だった。
 調べれば調べるほどに、その箱はよく解らない。
 まだまだ、客観的かつ再現性ある分析をすることができる装置や手法がない時代だったのが、不味いのだ。
 その手法や器具を作り出していたら、今度は自分の寿命が尽きてしまう。
 もどかしさと知的好奇心が尽きることがない己の探求心の強欲さに驚きながらも、日々の研究に余念がなかった。

 自分の娘が気まぐれに箱に触ると、今までピクリとも反応しなかった箱が、音をたてた。

 初めてのことに、驚いて娘にどうやったかを訊ねても、娘も首をひねるばかり。
 自分がその箱を開けようとしても、びくともしなかったのにだ。

 娘がその箱を触る度に反応する。

 自分は娘を敬うようになっていた。
 箱を研究する仲間たちも娘を敬いはじめ、信者化していく。
 無用の箱マクガフィン教団と呼ばれるようになって、……。



 チャイムが鳴った。
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