キツネと龍と天神様

尊ぶ天神曰く

　彼はヒモと自称していた。
　自分は飼われるだけの存在と自身を卑下している。

「ただいま」
　彼女が帰宅すると玄関まで出迎える。彼女の気配には敏感だ。
「出迎えありがと。うへぇ、疲れた」
　どうやら彼女の仕事は体力勝負なようで、いつもふらふらになって帰ってくる。
「お風呂入って来るね。ご飯待っててね」
　彼女は申し訳なさそうに自分のことを優先する。彼は勿論それを優先してほしいと思っていた。
「あぁさっぱりした」
　そう言いながら、ご飯を用意してくれる。彼女自身のご飯は、いつも後だ。
「明日は半休だから、一杯一緒にいれるね」
　彼女が彼に抱きしめる。
　時より体を撫でまわされた。しかし、いつも彼はなされるままにされる。されることは嫌いじゃないし、彼女がそうしたいなら、と思っていた。
「さぁ、今日はもう寝よう。おやすみ」
　電気が消され彼女がベッドに入ると、彼は彼女の布団の近くで、伏せた。

　彼は、「わん」と小さく鳴いて、彼女をすぐに守れるように眠りについた。