キツネと龍と天神様

霧間愁

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見上げる龍曰く

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 魔法使いと少女の旅の話。

 二人は立ち寄ったある町で、一人の泥棒に出会った。
 その泥棒は不思議な輩で、自分を泥棒と名乗るが何処にも盗みを働かず、堂々と家の扉をノックして住人から小銭を少しもらうだけだった。
 不思議に思った少女が、魔法使いの袖を引っ張って囁く。
「なぁ、聞きたいんだが、何で泥棒なんだ?」
「皆さんのお金を貰ってるんです、泥棒でしょう」
「いや、やってることが物乞いのそれなんだが」
 言われて、分からなくもないという顔をした泥棒だったが、「説明しましょう」と笑った。
「あっしは、ここの住人の皆さんの記憶を弄ったんでさ。あっしの顔を見れば、お金をあげるというように」
 泥棒は小さな手帳を取り出した。
「こいつに、誰それの記憶をあの誰さんに移し替え、というように、ね」
 「言わば、記憶の泥棒でさ」と泥棒は嗤う。
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