キツネと龍と天神様

霧間愁

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賞賛する龍曰く

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 その女が一枚の絵を買った。水墨画だ。
 商人曰く、由来ある絵なのだそうだ。
 そこには女性が描かれていて、何処か寂しげだった。
 女は絵描きで、資料の一つとしてその絵を買った。

 その日から夜な夜な夢に男が出てきた。
「頼む、俺を描いてくれ」
 夢の中の男は夢の中、頼んでくる。
「た…む、…れを…いて……」
 ただ目覚めると、その男の容姿だけが女の中に残った。

 女は夢の中の男に少しづつだが惹かれていく。

 現実でもその姿を眺めていたいと思い立った女は、男を描くためその姿を描きとめ始めた。
 朝起きて、その男の体の一部を正確に思い出しながら描く。
 少しづつ少しづつ、その姿を絵にしていく。すると、その立ち姿は何処かでみた水墨画と同じものだった。

 絵描きの女は驚いて、あの日に買った女性の水墨画を取り出し、自分の描いた男の絵と並べる。

 女が描いた絵は、その水墨画に描き足すと見事に一致した。足りなかった欠片が収まる様に。

 絵描きの女は失恋したのだと自覚しながら、二人の幸せを祈り、筆を握った。
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