キツネと龍と天神様

霧間愁

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口元が緩む龍曰く

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 時間を止めれる時計。
 友人の鬼がそんな物を持っておった。
 結局、人間に押し付けられたらしい。

 ある時、鬼が儂に言ってきた。
「なぁ、お前さんよ。この時計買わんか?」
 高くつきそうだから、要らぬよ。
「安くする、安くすると約束する」
 なら構わんが。
「そうか」
 それでお代はなんだ?
「人化の術でどうだね」
 お前さん、使えんかったか?
「角を隠す程度の我流だからな、ちゃんとしたものを知りたい」
 構わんよ、まぁとりあえず酒でも呑むか。
「おぉ、そうしようそうしよう」
 それで人になってどうする?
「何も変わらぬよ、着の身着のまま風吹くまま、旅を続けるよ」
 なら、酒は並々注がんとな。暫らくは会えんだろう。
「酒の種類は……、まぁ、ありものか。さぁ盃を」
 花よりも葉が散る季節になったな。
「実りが多いのはいい事だ」
 さよならだけが、と儂が言って鬼が続けた。

「なんとやら」
 二人して大笑いした。
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