キツネと龍と天神様

霧間愁

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切り取る天神曰く

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 少女の隣で、少年は嗤った。

 朝焼けが、世界をゆっくりと照らしはじめ、優しくない日常が幕を開けそうな一場面。
 泣きそうな少女は少年の横顔を見る。

「朝焼けを観に行こう」

 少年が少女の手をひいて歩き出した。
 薄暗い商店街、小さな路地、仄暗いアスファルト。月も星もなく、街路灯がぼんやりとある。
 目指すのは、屋上に忍び込める雑居ビルの屋上。

 少女は小さくうなずいて少年の手をとった。
 怒鳴る親、息苦しい日常、嘲笑する級友。信頼もなく、焦燥感と不安がぼんやりとある。
 逃げ出しても変わらない日常。

「それでも、嬉しいと思えるのは、君だからだ」

 朝焼けがゆっくりと少年と少女を照らしていく。朝が夜を殺していく。
 笑顔の少年の顔がゆっくりと照らされて、少女はそれを見れず。

 少年の横で少女も、嗤う。
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