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覘きこむ龍曰く
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妖刀が一振りあった。
無銘のものとされ、持ち主は転々し、一つの場所に留まることはなかった。
ある持ち主は、酒の席でこの剣は妖刀で抜くと人を斬らないと震えはじめると言った。「嘘だ」と刀は思った。
その酒の席で、無銘だった刀は三人斬ることになった。持ち主は人を斬ったことがあるらしく、運よく刃こぼれすらしなかった。
ある持ち主は、この妖刀は血を啜るのだと言った。何十人と斬っていた刀は、「そんなことはしない」と思った。
その場は言い争いで、相手が先に刀を抜いたが、持ち主は居合で後の線をとれる達人だった。数人斬ることになった。
もう合計で何人斬ったか、刀は覚えていなかった。
ある持ち主は、化物と呼ばれる少女だった。少女は必要な時以外刀を抜くことはなかった。
ただその時には、本当に人の恨み辛み、妬みが纏わりついて、本当に妖刀になっていた。
刃こぼれもせず、錆もしない。
今の持ち主は、龍だ。本当の化物。たまに抜き放ってくれる。
そして誰も斬らない。
斬らなくて済む平和な日々だ。
無銘のものとされ、持ち主は転々し、一つの場所に留まることはなかった。
ある持ち主は、酒の席でこの剣は妖刀で抜くと人を斬らないと震えはじめると言った。「嘘だ」と刀は思った。
その酒の席で、無銘だった刀は三人斬ることになった。持ち主は人を斬ったことがあるらしく、運よく刃こぼれすらしなかった。
ある持ち主は、この妖刀は血を啜るのだと言った。何十人と斬っていた刀は、「そんなことはしない」と思った。
その場は言い争いで、相手が先に刀を抜いたが、持ち主は居合で後の線をとれる達人だった。数人斬ることになった。
もう合計で何人斬ったか、刀は覚えていなかった。
ある持ち主は、化物と呼ばれる少女だった。少女は必要な時以外刀を抜くことはなかった。
ただその時には、本当に人の恨み辛み、妬みが纏わりついて、本当に妖刀になっていた。
刃こぼれもせず、錆もしない。
今の持ち主は、龍だ。本当の化物。たまに抜き放ってくれる。
そして誰も斬らない。
斬らなくて済む平和な日々だ。
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