キツネと龍と天神様

ため息をつく天神曰く

　いつでも笑う女がいたのだわ。
　女には夫がいて、これがどうしようもない男だったわ。

「呑み過ぎた、頭いてぇ」
　ニコニコとする女。
「薬あるか？」
　笑って男を見つめる女。
「をゐ、飲み過ぎの薬はあるか？」
　黙って笑う女。
「怒ってんのか。昨日は上役との付き合いで仕方なくって言っただろう、なぁ」
　笑いながら、男の上着から携帯と名刺入れを取り出す女。
「ちょ、ちょと待て。スタァアップ！！」
　名刺を並べ、携帯の内容と照らし合わせる。
「いや、如何わしい店には行ってないよ、マジで」
　笑う女は、新規に登録された番号を指さす。
「あ、えーっと、はい。っすねー、まだなにもしてないっすねー」
　握りを拳を作りながら笑う女。
「セーフっすよねー。違うッス、ます。誤解です」
　目だけが笑っていない女が、そこに坐れと指示した。
「あの、薬はいいんで、ちょとパチンコに行ってきます」
　笑う女は、夫の首根っこを掴んだ。

　男に謝られて、女は朝餉の支度をした。