乳首をなくした王子様のおはなし

犬束だいず

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ニップル王国物語

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 むかしむかしあるところに、たいそう乳首の美しい王子がおりました。

 「乳首の美しさは魂の高貴さ」と言われるこのニップル王国では、誰もが王子を敬愛し、王子も国民の期待に応えようと、日々努力を重ねていました。

 しかし、そんな王子の美乳首に、王の弟は激しい嫉妬の炎を燃やしていました。彼の乳首は、あまり美しいとは言えなかったのです。

 そしてとうとう、王の弟は配下の魔法使いに命じて、王子の乳首にとある呪いをかけました。

 すると、王子が眠っている間に美しい乳首はぷるりと逃げ出し、どこかへ旅立ってしまったのです。

 旅に出た乳首は、野を越え山を越え、ニップル王国の端の端、とある谷深くの神殿にたどり着きました。

 そして、選ばれし者が迎えに来るまで、深い眠りについたのです。

 美しい乳首を失った王子はひどく落ち込みましたが、それでも王族としての務めを果たそうと、気丈に振舞いました。

 王様とお妃様はひどく悲しみ、王子の乳首を取り戻すために「美乳首 探しています」と、匿名で乳首の捜索依頼を出しました。

 多額の報奨金がかけられた不思議な依頼に、多くの人々が挑戦しますが、乳首はなかなか見つかりません。

 しかし、王様たちは諦めません。親衛隊から選りすぐった兵達を捜索にあたらせ、乳首の行方を探し続けます。



 一方そのころ、ニップル王国の端の端では、美乳首ハンターである一人の少女がくんくんと鼻をひくつかせ、とある匂いを追っていました。

 少女は、匂いで乳首の美しさが分かる能力を持っていました。

 三度の飯より美しい乳首が大好きな少女は、これまでに嗅いだことのないほどかぐわしい香りを追いかけて、野を越え、山を越え、ニップル王国の端の端、とある深い谷までたどりつきました。

 辛抱たまらん匂いに導かれ、少女は深い谷のさらに奥深くまで進みます。

 すると、そこには人々に忘れられた神殿の遺跡がありました。

 祭壇には、大きな胸板が彫られ、その乳首の部分には手形が彫り抜かれています。

 ぴんときた少女は、おもむろに石の胸板をわし掴むと、手形の部分を両手で押し込みました。

 すると、ズズっと重い岩が動く感触の後、手形の部分がぱかりと開き、中からわあっと乳首の妖精たちが現れました。種族も色も形もさまざまな大勢の乳首たちは、少女に向かって口々に祝福の言葉を送ります。

「おめでとう、えらばれしもの! さあ、これがあなたの愛でる乳首なり!」

 妖精たちが出てきた手形の穴から、最後に光り輝く乳首が現れました。

 追ってきた極上の香りに、これは究極で至高で運命の乳首であると、少女は大喜び。

 妖精たちは少女を乳首の持ち主の元まで案内しようと、歌いながら行進を始めます。

「ちくび、ちちくび、ちちちくび! ちくび、ちちくび、ちちちくび!」

 少女は妖精たちと共に、歌いながら行進します。

 手の中の美乳首をよしよしと撫でるたびに、お城で王子がどうしようもなく感じていることなど、少女は知る由もありません。

 すると、お城から来た捜索隊の一行と出会いました。

 捜索隊は乳首の妖精達を引き連れた少女に驚きながらも、少女が持つすばらしく美しい乳首は、まさしく探し求めていた乳首だと確信しました。

「おおっ、それはまさしく王子の乳首!」

 大喜びの捜索隊に連れられて、少女はニップル王国のお城へとやってきました。

 少女の持ってきた美しい乳首に、王様たちは大喜び。

 差し出された世にも美しい乳首を見て、何やら顔の赤い王子が叫びます。

「ああっ、それはまさしく私の乳首!」

 すると、美しい乳首はぴゅうっと王子の胸へ飛び込み、元いた場所にぷるりとおさまりました。

 王子は涙を流して喜びながら、美乳首ハンターの少女にお礼を言います。

「本当にありがとう。ぜひお礼をさせてほしい。欲しいものを何でも言ってくれ」

「はい。それでは、あなたの乳首を愛でる権利が欲しいです」

 王子が驚いていると、少女の周りにいる乳首の妖精たちがふたりを取り囲み、やんややんや、ちくびちくびと喝采を送ります。

 乳首の妖精たちの祝福を受けて、王子はにこりと笑いました。

「妖精たちは、運命の相手とのつながりを祝福すると言われている。それに、君の乳首の愛し方……嫌いじゃなかった。よし、私の乳首を愛でる権利を与えよう」

 少女は妖精たちと一緒に踊って大喜び。

 しかし、面白くないのが王の弟です。

 王の弟は、物陰で部下の魔法使いを問い詰めます。

「どういうことだ、呪いがとけてしまったぞ」

「しかたありません、予想外です。『乳首隠れの呪い』をとく方法は『運命の相手が隠れた乳首を見つけ出し、持ち主の元まで持ってくる』ことです。こんな呪い、とけるほうがどうかしています」

「なんという強運だ。おのれ、こうなったら……」

 王の弟は魔法使いに命じて、美しい乳首に噛みつく蛇を何匹も出し、王子たちへとけしかけます。

「なんだって! この蛇、私の乳首を狙っているのか!?」

 胸元を押さえて怯える王子を、少女と親衛隊が取り囲みます。

「王子様、ご安心ください。いでよ、メカちくび!」

 少女が銀色の妖精の乳首を、ぽちっと押しました。

「ちくび、ちちくび、メカちくびぃ!」

 高らかに叫んだ銀色の妖精は、あっという間に強そうな超合金メカ乳首に変身しました。

 巨大なメタリック乳首が、シャンデリアの光を受けてきらきらと輝きます。

 メタリック乳首の美しさに蛇たちは気を取られ、こんどはメカ乳首めがけてとびかかりました。

 疑似餌に群がる魚のように乳首に食らいついた蛇たちは、そのまま超合金メカ乳首にぱくりと食べられてしまいました。

 蛇たちを飲み込むと、超合金メカ乳首はもとの大きさに戻って、誇らしげにえっへんと胸を張ります。

 王子の乳首への危機が去り、みんな大喜びです。

 王様とお妃様が、少女に向かって言いました。

「よくぞ息子を守ってくれた。ふたりの結婚を祝福しよう」

 こうして、世にも美しい乳首を取り戻した王子と、美乳首ハンターの少女は結ばれたのでした。

 美しい乳首を取り戻し、妻から乳首を毎晩のように愛された王子は、これまで以上に政務へ熱心に取り組み、やがて名君と呼ばれるようになるのでした。



 ちなみに、王子へのたくらみがバレた王の弟は、お仕置きをされ、お尻の才能に目覚めることになるのですが……それはまた、別のお話。



 おしまい。
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